世界文学全集のためのメモ 6 『青い鳥』 モーリス・メーテルリンク
フランス語編 4
Maurice Maeterlinck
モーリス・メーテルリンク
1862-1949
L’Oiseau bleu
『青い鳥』
1908
日本語訳
①若月紫蘭訳『青い鳥』1913/1961年(岩波少年文庫、1970年 📗 )*1
②楠山正雄訳『青い鳥』1928/1956年(角川文庫 📗 )
③堀口大學訳『青い鳥』1960年(新潮文庫、2006年 📗 )
④川口篤訳『青い鳥』1971年(主婦の友社『ノーベル賞文学全集 18』 📗 pp. 197-262)
⑤鈴木豊訳『青い鳥』1975年(角川文庫、1994年 📗 )
⑥末松氷海子訳『青い鳥』2004年(岩波少年文庫 📗 )
フランス語原文からの(おおよそ)忠実な訳から、入手しやすいものを中心に6つ選んだ。最新の⑥末松氷海子訳は、さすがに語句レベルで引っかかるところは少ないが、読み通すとどうもすらすら読めなかった。やり取りがちぐはぐに感じるところがあるし、関係詞節のある文をしばしば原文のままの語順で訳しているのも個人的には読みにくいと感じる。総合的に一番気に入ったのは③堀口大學訳。古さを感じさせるところもあるが、簡明で読みやすい日本語だ。このほか、④川口篤訳も、「女言葉」が鼻につくところのを別にすれば悪くない。他の訳とは一味違う、大人のための翻訳といった感じがする。
LA CHATTE. – Écoutez-moi… Nous tous ici à présent, animaux, choses et éléments, nous possédons une âme que l’homme ne connaît pas encore. C’est pourquoi nous gardons un reste d’indépendance ; mais, s’il trouve l’Oiseau Bleu, il saura tout, et nous serons complètement à sa merci… C’est ce que vient de m’apprendre ma vieille amie la Nuit, qui est en même temps la gardienne des mystères de la Vie… Il est donc de notre intérêt d’empêcher à tout prix qu’on ne trouve cet oiseau, fallût-il aller jusqu’à mettre en péril la vie même des enfants…
LE CHIEN (indigné). – Que dit-elle, celle-là ?… Répète un peu que j’entende bien ce que c’est ?
LE PAIN. – Silence !… Vous n’avez pas la parole !… Je préside l’assemblée…
LE FEU. – Qui vous a nommé président ?…
L’EAU (au Feu). – Silence !… De quoi vous mêlez-vous ?…
LE FEU. – Je me mêle de ce qu’il faut… Je n’ai pas d’observations à recevoir de vous…
LE SUCRE (conciliant). – Permettez… Ne nous querellons point… L’heure est grave… Il s’agit avant tout de s’entendre sur les mesures à prendre…
LE PAIN. – Je partage entièrement l’avis du Sucre et de la Chatte…
LE CHIEN. – C’est idiot !… Il y a l’Homme, voilà tout !… Il faut lui obéir et faire tout ce qu’il veut !… Il n’y a que ça de vrai… Je ne connais que lui !… Vive l’Homme !… À la vie, à la mort, tout pour l’Homme !… l’Homme est dieu !…
LE PAIN. – Je partage entièrement l’avis du chien.
LA CHATTE (au Chien). – Mais on donne ses raisons…
LE CHIEN. – Il n’y a pas de raisons !… J’aime l’Homme, ça suffit !… Si vous faites quelque chose contre lui, je vous étranglerai d’abord et j’irai tout lui révéler…
LE SUCRE (intervenant avec douceur). – Permettez… N’aigrissons pas la discussion… D’un certain point de vue, vous avez raison, l’un et l’autre… Il y a le pour et le contre…
LE PAIN. – Je partage entièrement l’avis du Sucre !…
LA CHATTE. – Est-ce que tous ici, l’Eau, le Feu, et vous-mêmes, le Pain et le Chien, nous ne sommes pas victimes d’une tyrannie sans nom ?… Rappelez-vous le temps où, avant la venue du despote, nous errions librement sur la face de la Terre… L’Eau et le Feu étaient les seuls maîtres du monde ; et voyez ce qu’ils sont devenus !… Quant à nous, les chétifs descendants des grands fauves… Attention !… N’ayons l’air de rien… Je vois s’avancer la Fée et la Lumière… La Lumière s’est mise du parti de l’Homme ; c’est notre pire ennemie… Les voici… *2
①若月紫蘭訳
ネコ まあ、きいてください。あたしたちここにいるものは、動物だって、物だって、元素だって、みんな、まだ人間の知らない魂というものをもっているのです。だからこそ、あたしたちは、どうやら独立していられるのです。けれども、もし人間が、青い鳥を見つけたら、すべてを知り、すべてを見ることができるでしょう。そうなると、あたしたちは、まるっきり、人間の命ずるままに従わなきゃなりません。このことを、生命の神秘の守り手である、あたしの古い友だちの「夜」からきいて知ったのです。ですから、どんなことがあっても、たとえ、あの子どもたちの命を、危険にさらすようなことになったとしても、あの青い鳥を見つけられないようにしなきゃなりません。それが、あたしたちのためなのです。
犬 (ひどくおこって)こいつ、なにをいってやがるんだ? さ、もう一度いってみろ、ききちがいかどうか……
パン 静粛に! しずかに! きみのしゃべる番じゃない、ぼくは議長だぞ……
火 だれが議長にしたんだい?……
水 (火に)おだまりなさいよ! なんであなたが口を出すんです?
火 おれは、口を出したいとき出すんだ、よけいなせわをやいてもらいたくないね。
砂糖 (仲裁するように)失礼だが……ちょっと一言……けんかはやめましょうや、いまはだいじな時なんですぜ……なにはさておいても、われわれは、とるべき手段をきめなくちゃならないんですからね……
パン まったく、砂糖とネコに同感だ。
犬 ばかばかしい……世の中には人間がいる。それだけのことだ。われわれは人間に服従し、人間のいうとおりにしなけりゃならない。それがたった一つの事実だ。ぼくは人間いがいには何もみとめない。人間ばんざい、ばんばんざいだ! 死んでも生きても、みな人間のためだ。人間は神だ!……
パン まったく、犬に賛成だ。
ネコ (犬に)でも、理由がなくてはね……
犬 理由もなにもないさ……ぼくは人間がすきなんだ、それで十分だ……きみがもし、人間に対して、なにかむほんでもたくらんだら、ぼくはまず、きみを絞め殺して、人間のところへいって、すっかりいいつけてやるんだ。
砂糖 (あまったるい声で、仲裁にはいって)ああ、もしもし、議論はやめましょうよ。……ある点からいうと、きみたちどちらも、もっともですよ。どちらにも、理くつはあるんですよ……
パン まったく、砂糖に同感だ……
ネコ あたしたちみんな……水さんも、火さんも、あなたご自身も、パンさんも、それからあの犬も、みんな、なんといっていいかわからない暴政の犠牲者ではないでしょうか!……まだ、あの暴君のやってこない前に、あたしたちが、自由に地球上を歩きまわっていた時代をおぼえていますか? 火さんと水さんだけが、この世界の主人公でした。そして、それがいま、どうなったのです?……偉大なる野獣の、あわれな子孫である、あたしたちは、どうでしょう……あっ、気をつけてください、なにもしてなかったふりをしてね。妖婆と光がやってきますよ……光は、人間のみかたになったんです、あいつはいちばん悪い敵です。そら、きました。(pp. 52-54)
②楠山正雄訳
猫 まあきいておいでなさい。ここに御列席の皆さんは、動物でも、品物でも、元素でも、皆それぞれ霊魂を持っておいでですが、人間はまだそれを知らないのです。おかげでまだしもわれわれは、昔ながらの自由の名残だけも保っているわけです。ここでもし人間が一旦青い鳥を探し出したならば、もはや何もかも知ってしまう、何もかも見てしまう、われわれは、何もかも人間の自由にされなければならなくなるのであります。これはわたしが、昔からの友達である「夜」から聞いたことで、あの女は世の中の秘密の監視をもしているのでございます。それゆえ、どうしても人間のじゃまをして、青い鳥の見つからないようにするのが、われわれの利益でありまして、そのためにはあの子供二人の命ぐらい、どうなってもかまってはいられないと考えます。
犬 (おこって)とんでもない、何をいやがる。もう一度いって見ろ。
パン 静粛に。君はまだ発言をゆるされておりません。我輩は本会議の議長である。
火 だれが議長にしたんだ。
水 (火に)おだまり。お前の出る幕ではないよ。
火 おれは出るべき幕にはいつでも出る。貴様などの世話にはならん。
砂糖 (中に入って)失礼ですが、まあ喧嘩は止そうじゃありませんか。きょうは大切な場合です。何をおいても、われわれの今後とるべき手段を定めるのが急務であります。
パン 我輩は全然「砂糖」と「猫」に同意見である。
犬 ばかばかしいや。人間はすべてだ。われわれは人間に服従し、人間のいいつけ通りにする義務がある。真実はそれだけだ。そのほかに何にもない。人間万歳だ。生きるも死ぬも、人間のためだ。人間は神様だ。
パン 我輩は全然「犬」と同意見である。
猫 (犬に)だが、その理由だけはのべて貰いたいね。
犬 理由なんかない。おれは人間が好きだ。それだけのことだ。お前たちがもし少しでも人間に反抗すれば、おれは第一にそいつの喉首をしめ上げて、それから行って、人間に話をするつもりだ。
砂糖 (甘ったるい声で仲裁する)ええ、ごめん下さいよ。むずかしい議論はまあ止めようじゃありませんか。ある点から見れば、あなたがたはお互にどちらも正しい。双方に理窟はあるのですからな。
パン 我輩は全然砂糖と同意見である。
猫 われわれはすべて、「水」でも、「火」でも、そんなことをいう「パン」や「犬」でも、すべて言語道断な暴政の犠牲ではありませんか。人間という暴君のまだ来ない前、われわれの、自由に愉快に、地の上で遊びまわっていた時代のことを、あなた方はおぼえていますか。「火」と「水」とだけが世界の主人でありました。それが、今日の有様はどうです。まして我々、むかし強かった野の獣の子孫のあわれさ。――いや、お気をつけなさい。何でもないふうをして下さい。妖女が「光」と一しょにやって来ました。「光」は人間のみかたをしています。あの女がわれわれの一番悪い敵ですよ。そら、来ました。(pp. 56-58)
③堀口大學訳
ネコ まあお聞きください。ここに御列席のみなさんは、動物でも、物でも、元素でも、すべて人間のまだ知らない魂を持っているのです。だからこそ、われわれはこうしてどうやらひとり立ちしていられるのです。だがもし、人間が青い鳥を見つけ出したら、人間はすべてを知り、すべてを見るでしょう。そうなったらわれわれは完全に人間の支配下に置かれることになります。そのことは、あたし、この世の秘密の監視人をかねている、古いお友達の「夜」からおそわったばかりなんです。それですから、あらゆる手だてをつくして青い鳥を見つけられないようにすることが、われわれの利益なのです。そのためには、あの子供たちの命ぐらい、危険にさらしてもやむを得ないと思うんです。
イヌ (ひどくおこって)やい、なにをいう。こいつ、もう一ぺんいってみろ。
パン 静粛に。まだ発言を許しておりませんぞ。わしはこの会議の議長である。
火 だれがお前を議長にしたんだい?
水 (火に)お黙り。お前の出る幕じゃないよ。
火 出るべきときには、おれはいつでも出るんだ。余計なお世話だよ。
砂糖 (とりなすように)失礼ですが、まあ喧嘩はやめにしましょう。今は大事なときですからね。なんといってもわれわれのとるべき手段を決めることが先決問題ですよ。
パン 「砂糖」と「ネコ」の意見に同感です。
イヌ ばかばかしい。人間はすべてだ。われわれは人間に従い、人間のいいつけ通りにしなけりゃいけないんだ。それがただ一つの真実なんだ。おれは人間以外になにも認めない。人間万歳。生きるも死ぬもすべて人間のためだ。人間は神だ。
パン 「イヌ」の意見に同感だね。
ネコ (「イヌ」に)でも理由がなければいけませんわ。
イヌ 理由なんかないさ。おれは人間が好きだ。それだけで十分じゃないか。お前がもし人間に対抗してなにかをやろうというなら、おれはまずお前を絞め殺して、それから人間のところへ行って全部いいつけてやるつもりだ。
砂糖 (あまったるい声で仲裁にはいって)ちょっと、ごめんなさいよ。議論はもうやめにしましょうよ。ある点から見れば、あなた方はお互にどちらも正しい。どちらにも理屈はあるんですからね。
パン 「砂糖」の意見に全く同感です。
ネコ 「水」でも、「火」でも、それからあなたがたも「パン」も「イヌ」も、ここにいるものはすべて、いいようもない暴政の犠牲者なのではありますまいか。人間という暴君がやってこない前、われわれがまだこの地上を自由に歩き回っていたころのことを思い出してごらんなさい。「水」と「火」だけが世界の主人公でした。それが今どうなりましたか。また、かつて偉大であった野獣の、あわれな子孫であるわれわれはどうでしょうか。あ、気をつけなさい。なにもなかったふりをなさい。妖女と「光」がやってくるところです。「光」は人間の味方ですからね。あいつはわれわれにとって一番有害な敵ですよ。ほら、きました。(pp. 50-52)
④川口篤訳
猫 聞いて頂戴……ここにおいでの皆さんは、動物にせよ、物にせよ、元素にせよ、みんな、魂を持っているのよ。人間はまだそれを知らないけれども。だからこそ、わたしたちは、どうやら独立を保っていられるのよ。もし人間が青い鳥を見つけたら、人間はすべてを知り、すべてを見ることになるのよ。わたしたちは、完全に人間の思いのままになるのよ。それは、この間、わたしの古い友だちで、「生」の神秘の番人でもある夜から聞いたことなの……だから、どんなことをしてでも、青い鳥を見つける邪魔をするのがわたしたちの利益になるわけ。たとえ、子供たちの命を危険にさらさなければならなくなっても……
犬 (憤慨して)あいつ、何を言ってやがる?……おれによくわかるように、もう一ぺん言ってみろ。
パン 静粛に!……君に発言を許してないぞ!……おれは、この会議の議長だ……
火 誰がお前を議長に任命したんだ?……
水 (火に)お黙り!……なにに文句をつけようというの?
火 おれは、文句をつけるべき時には、文句をつけるんだ……お前につべこべ言われる義理はねえよ……
砂糖 (両者をとりなして)失礼だが……お互いに喧嘩はやめましょう……大事な場合ですから……何よりもまず、取るべき手段について意見の一致を見なければなりますまい……
パン おれは、砂糖と猫の意見に、まったく同感だな……
犬 馬鹿もいいかげんにしろ!……人間がいる。それがすべてだ!……人間に従い、その思いどおりにしなければならないんだ! それだけが真実なんだ……おれは、人間しか認めない!……人間万歳!……死ぬも生きるも、すべて人間のためだ!……人間は神だ!……
パン おれは、犬の意見にまったく賛成だ。
猫 (犬に)でも、わけを言わなければ……
犬 わけなんかない!……おれは人間が好きだ、それだけのことさ!……もしお前が、何か人間に刃向かうようなことをたくらんだら、おれは、まずお前を絞め殺して、一切を人間にぶちまけてやる……
砂糖 (猫撫で声で間にはいり)失礼ですが……話をそう荒立てないで……見方によっては、お二人とも、それぞれごもっともです……物には両面がありますからね……
パン おれは、砂糖の意見にまったく賛成だ!……
猫 水も火も、それから、あなたたち、パンも犬も、ここにいる者はみんな、言語に絶する圧制の犠牲者ではありますまいか?……人間という専制君主が現われる前は、わたしたちは自由に地球の上を歩き廻っていたことを思い出して下さい……水と火だけが、この世の主でした。それがどうなったと思し召す!……昔の偉大な野獣のみすぼらしい子孫であるわれわれに至っては……。気をつけて!……知らないふりをするのよ……仙女と光がやって来るわ……光は人間の側についたのよ。わたしたちの最悪の敵よ……そら、やって来た……(pp. 209-210)
⑤鈴木豊訳
猫 あたしの言うことを聞いてちょうだい……あたしたち一同ここに集っているでしょう、動物も、物も、元素も。あたしたちはね、人間がまだ知らない魂を持っているのよ。だからあたしたち、いくらかでも独立を保っていられるわけなのよ。ところが、もし人間が青い鳥を見付けたら、人間はなんでも知り、あらゆるものを見ることができるようになり、それこそすっかり、あたしたちは人間の思いのままになってしまうわ……これはね、あたしの古いお友だちの「夜」が教えてくれたことなの、「夜」はね、同時に人生の秘密の番人もしているのよ……だから、あたしたちとしてはどんなことをしても、人間がその鳥を見付ける邪魔をするのが望ましいと思うわけよ、たとえ子供たちの生命が危険にさらされてもしかたがないわ……
犬 (腹をたてて)なにを言うんだ、この女は?……いま言ったことを、もういっぺん繰り返してみろ!……
パン お黙りなさい!……あなたには発言権はありませんぞ!……わしはこの会議の議長じゃからね……
火 だれがお前さんを議長に任命したんだい?……
水 (「火」に)静粛になさって!……よけいなことをおっしゃらないで!……
火 必要なことを言ってるだけだよ。お前さんにとやこう言われる筋合いはないね……
砂糖 (とりなすように)失礼ですけれど……とにかく喧嘩はやめましょうよ……とにかく大事なときですから……なにより、いまの問題は、みんながどういう態度をとるかということですからね……
パン わしは「砂糖」と「猫」の意見に全面的に賛成だね……
犬 バカバカしい!……はじめに人間あり、それだけのことさ!……人間には従わなければならんし、人間の望むことはしなければいけない!……真実はただそれだけさ!……ぼくは人間しか認めない!……人間ばんざいだ!……生きるのも死ぬのも、すべてこれ人間のためだよ!……人間さまは神さまでございだ!……
パン わしは犬の意見に全面的に賛成だね。
猫 (「犬」に)でも、それなりの理由がいるわよ……
犬 理由なんてあるもんか!……ぼくは人間が好きだ、それで充分さ!……もしきみが人間に対してなにか企てたら、ぼくはまず第一にきみの首ねっこを締めて、それから人間に一部始終を打ち明けにゆくよ……
砂糖 (穏やかに仲に入って)失礼ですけれど……マア、そんなに感情的な議論はやめようじゃありませんか……見方によれば、お二人ともそれぞれもっともなことで……とにかくどちらにもそれぞれ理屈がありますから……
パン わしは全面的に「砂糖」の意見に賛成だね!……
猫 ここにいる皆さん、「水」に「火」に、それにあなた方、「パン」も「犬」も、みんな途方もない暴君の犠牲者じゃあないの?……横暴な人間がやってくる以前、あたしたちが地球の上を自由に歩き回っていた時分のことを思い出してごらんなさい……ただ「水」と「火」だけが世界の主人だったのよ。それが、「水」や「火」がいまどうなったか見てごらんなさい! あたしたち、偉大な野獣のかよわい子孫はといえば……気をつけて!……なにもなかったようなふりをするのよ……仙女と「光」がこちらへ来るのが見えるわ……「光」は人間の味方についたのよ。あたしたちのいちばん悪い敵なのよ……ホラ、きたわよ……(pp. 42-44)
⑥末松氷海子訳
猫 みなさん、聞いてください。ここにいるわたしたちみんな、動物でも物でも元素でも、人間がまだ知らない、魂というものを持っています。それで、わたしたちはなんとか自立しているんです。でも、もし人間が青い鳥を見つけたら、すべてを知り、すべてを見るようになるでしょう。そうなると、わたしたちはまったく人間の思いどおりにされてしまいます。このことは、わたしの昔からの友だちの「夜」が教えてくれたんですよ。夜は、生命の神秘を守っています。
だから、どんなことがあっても、青い鳥が見つからないようにしなくては……たとえあの子たちの命が危険にさらされようとも、わたしたち自身のためを考えなくては……
犬 (憤慨して)猫のやつ、なにをいってるんだ! 今いったことを、もう一度いってみろ!
パン 静かにしろ! きみのしゃべる番じゃないぞ! わたしは議長だからな!
火 だれが議長にしたのさ。
水 (火に)しーっ! なんだって、口を出すの?
火 おれは必要なときには口を出すんだ。世話をやくのはやめてくれ!
砂糖 (仲を取りもって)失礼ですが、けんかはやめましょうや。いまは大事なときです。まず、わたしたちがどうしたらいいか、決めなくちゃならないんですから……
パン わたしはまったく、砂糖と猫に賛成だ。
犬 ばかばかしい! この世に人間がいる。それだけのことじゃないか! ぼくたちは人間のいうとおりにしたり、従ったりしなきゃいけないんだ。それだけがほんとうのことさ。ぼくは人間のほかには、なにも認めない。人間、ばんざい! 生きるも死ぬも、ぜんぶ人間のためだ。人間は神さまだ!
パン まったく犬に賛成だ。
猫 (犬に)それなら、わけをいいなさいよ。
犬 わけなんかないさ。ぼくは人間が好きだ。それでじゅうぶんだろ! きみが人間になにか悪いことをたくらんだら、ぼくは、きみの首を絞めて、人間にぜんぶあばいてやる。
砂糖 (あまったるい声で仲裁に入り)失礼ながら、むずかしい議論はやめましょうや。ある点では、二人とも正しいですよ。それに賛成する人と反対する人がいるんです。
パン まったく砂糖に賛成だ!
猫 ここにいるみんな、水も火も、あなたご自身も、パンも犬も、名目のない暴虐の犠牲になってはいないでしょうか。あの独裁者がやってくる前、わたしたちが地球の上を自由に歩きまわっていた時代を覚えていますか? 水と火だけが、世界の支配者でした。それがいま、どうなったでしょう! 偉大な野生動物の子孫であるわたしたちにしたって……あっ! 用心して! なにもしてないふりをするんです。魔法使いと光がこちらへきますから。光は、人間の味方になりました。わたしたちのいちばん悪い敵です。ほら、きましたよ。(pp. 49-51)
TYLTYL. – […] Avec quoi tu joues, ces grandes ailes bleues ?…
L’ENFANT. – Ça ?… C’est pour l’invention que je ferai sur Terre…
TYLTYL. – Quelle invention ?… Tu as donc inventé quelque chose ?…
L’ENFANT. – Mais oui, tu ne sais pas ?… Quand je serai sur Terre, il faudra que j’invente la Chose qui rend Heureux…
TYLTYL. – Est-elle bonne à manger ?… Est-ce qu’elle fait du bruit ?…
L’ENFANT. – Mais non, on n’entend rien…
TYLTYL. – C’est dommage…
L’ENFANT. – J’y travaille chaque jour… Elle est presque achevée… Veux-tu voir ?…
TYLTYL. – Bien sûr… Où donc est-elle ?…
L’ENFANT. – Là, on la voit d’ici, entre ces deux colonnes…
UN AUTRE ENFANT BLEU (s’approchant de Tyltyl et le tirant par la manche). – Veux-tu voir la mienne, dis ?…
TYLTYL. – Mais oui, qu’est-ce que c’est ?…
DEUXIÈME ENFANT. – Les trente-trois remèdes pour prolonger la vie… Là, dans ces flacons bleus…
TROISIÈME ENFANT (sortant de la foule). – Moi j’apporte une lumière que personne ne connaît !… (Il s’illumine tout entier d’une flamme extraordinaire.) C’est assez curieux, pas ?…
QUATRIÈME ENFANT (tirant Tyltyl par le bras). – Viens donc voir ma machine qui vole dans les airs comme un oiseau sans ailes !…
CINQUIÈME ENFANT. – Non, non ; d’abord la mienne qui trouve les trésors qui se cachent dans la lune !…
Les Enfants Bleus s’empressent autour de Tyltyl et de Mytyl en criant tous ensemble : “ Non, non, viens voir la mienne !… Non, la mienne est plus belle !… La mienne est étonnante !… La mienne est tout en sucre !… La sienne n’est pas curieuse… Il m’en a pris l’idée !…, etc. ” Parmi ces exclamations désordonnées, on entraîne les petits Vivants du côté des ateliers bleus ; et là, chacun des inventeurs met en mouvement sa machine idéale. C’est un tournoiement céruléen de roues, de disques, de volants, d’engrenages, de poulies, de courroies, d’objets étranges et encore innommés qu’enveloppent les bleuâtres vapeurs de l’irréel. Une foule d’appareils bizarres et mystérieux s’élancent et planent sous les voûtes, ou rampent au pied des colonnes, tandis que les enfants déroulent des cartes et des plans, ouvrent des livres, découvrent des statues azurées, apportent d’énormes fleurs, de gigantesques fruits qui semblent formés de saphirs et de turquoises.
UN PETIT ENFANT BLEU (courbé sous le poids de colossales pâquerettes d’azur). – Regardez donc mes fleurs !…
TYLTYL. – Qu’est-ce que c’est ?… Je ne les connais pas…
LE PETIT ENFANT BLEU. – Ce sont des pâquerettes !…
TYLTYL. – Pas possible !… Elles sont grandes comme des roues…
LE PETIT ENFANT BLEU. – Et ce qu’elles sentent bon !…
TYLTYL (les humant). – Prodigieux !…
LE PETIT ENFANT BLEU. – Elles seront comme ça quand je serai sur Terre…
TYLTYL. – Quand donc ?…
LE PETIT ENFANT BLEU. – Dans cinquante-trois ans, quatre mois et neuf jours…
Arrivent deux Enfants Bleus qui portent comme un lustre, pendue à une perche, une invraisemblable grappe de raisins dont les baies sont plus grosses que des poires.
L’UN DES ENFANTS QUI PORTENT LA GRAPPE. – Que dis-tu de mes fruits ?…
TYLTYL. – une grappe de poires !…
L’ENFANT. – Mais non, c’est des raisins !… Ils seront tous ainsi, lorsque j’aurai trente ans… J’ai trouvé le moyen de…
UN AUTRE ENFANT (écrasé sous une corbeille de pommes bleues, grosses comme des melons). – Et moi !… Voyez mes pommes !…
TYLTYL. – Mais ce sont des melons !…
L’ENFANT. – Mais non !… Ce sont mes pommes, et les moins belles encore !… Toutes seront de même quand je serai vivant… J’ai trouvé le système !…
UN AUTRE ENFANT (apportant sur une brouette bleue des melons bleus plus gros que des citrouilles). – Et mes petits melons ?…
TYLTYL. – Mais ce sont des citrouilles !…
L’ENFANT AUX MELONS. – Quand je viendrai sur Terre, les melons seront fiers !… Je serai le jardinier du Roi des neufs Planètes…
TYLTYL. – Le Roi des neufs Planètes ?… Où est-il ?…
LE ROI DES NEUFS PLANÈTES (s’avançant fièrement. Il semble avoir quatre ans et peut à grand-peine se tenir debout sur ses petites jambes torses). – Le voici !
TYLTYL. – Eh bien ! tu n’es pas grand…
LE ROI DES NEUFS PLANÈTES (grave et sentencieux). – Ce que je ferai sera grand.
TYLTYL. – Qu’est-ce que tu feras ?
LE ROI DES NEUFS PLANÈTES. – Je fonderai la Confédération générale des Planètes solaires.
TYLTYL (interloqué). – Ah, vraiment ?
LE ROI DES NEUFS PLANÈTES. – Toutes en feront partie, excepté Saturne, Uranus et Neptune qui sont à des distances exagérées et incommensurables.
Il se retire avec dignité.
TYLTYL. – Il est intéressant…
UN ENFANT BLEU. – Et vois-tu celui-là ?
TYLTYL. – Lequel ?
L’ENFANT. – Là, le petit qui dort au pied de la colonne…
TYLTYL. – Eh bien ?
L’ENFANT. – Il apportera la joie pure sur le Globe…
TYLTYL. – Comment ?…
L’ENFANT. – Par des idées qu’on n’a pas encore eues…
TYLTYL. – Et l’autre, le petit gros qui a les doigts dans le nez, qu’est-ce qu’il fera, lui ?…
L’ENFANT. – Il doit trouver le feu pour réchauffer la Terre quand le Soleil sera plus pâle…
TYLTYL. – Et les deux qui se tiennent par la main et s’embrassent tout le temps ; est-ce qu’ils sont frère et sœur ?…
L’ENFANT. – Mais non, ils sont très drôles… Ce sont les Amoureux…
TYLTYL. – Qu’est-ce que c’est ?…
L’ENFANT. – Je ne sais pas… C’est le Temps qui les appelle ainsi pour s’en moquer… Ils se regardent tout le jour dans les yeux, ils s’embrassent et se disent adieu…
TYLTYL. – Pourquoi ?
L’ENFANT. – Il paraît qu’ils ne pourront pas partir ensemble…
TYLTYL. – Et le petit tout rose, qui semble si sérieux et qui suce son pouce, qu’est-ce que c’est ?…
L’ENFANT. – Il paraît qu’il doit effacer l’Injustice sur la Terre…
TYLTYL. – Ah ?…
L’ENFANT. – On dit que c’est un travail effrayant…
TYLTYL. – Et le petit rousseau qui marche comme s’il ne voyait pas. Est-ce qu’il est aveugle ?…
L’ENFANT. – Pas encore ; mais il le deviendra… Regarde le bien ; il paraît qu’il doit vaincre la Mort…
TYLTYL. – Qu’est-ce que ça veut dire ?…
L’ENFANT. – Je ne sais pas au juste ; mais on dit que c’est grand…
TYLTYL (montrant une foule d’enfants endormis au pied des colonnes, sur les marches, les bancs, etc.). – Et tous ceux-là qui dorment – comme il y en a qui dorment ! – est-ce qu’ils ne font rien ?…
L’ENFANT. – Ils pensent à quelque chose…
TYLTYL. – À quoi ?
L’ENFANT. – Ils ne le savent pas encore ; mais ils doivent apporter quelque chose sur la Terre ; il est défendu de sortir les mains vides…
TYLTYL. – Qui est-ce qui le défend ?…
L’ENFANT. – C’est le Temps qui se tient à la porte… Tu verras quand il ouvrira… Il est embêtant…
①若月紫蘭訳
チルチル 〔……〕きみのいじってる、その大きな青いはね、なんなの?
子ども これぼくが地球へいったら発明するものだよ。
チルチル なんの発明? きみ、何か発明したことがあるの?
子ども うん、あるよ、きみ、まだきいてないの?……ぼく下へおりたときね、世の中を幸福にするもの発明するんだ……
チルチル おいしいもの?……音がするもの?……
子ども ううん、音はしないよ……
チルチル じゃあ、つまんないね……
子ども ぼく、まいにち、それにかかってるんだよ。もう、たいていできてるよ。見せてあげようか?……
チルチル うん、見せて……どこにあるの?
子ども ほら、ここから見えるでしょう? この柱のあいだに……
第一の青い子ども (チルチルのところへやってきて、袖をひいて)ねえ、ぼくのも見せようか?……
チルチル うん、なんなの?
第二の子ども 三十三種類の長生きの、くすりだよ。ほら、この青いびんの中にあるよ……
第三の子ども (みんなの中から出てきて)ぼくね、だれも知らない光を見せてあげよう! (すばらしいほのおでじぶんのからだを、てらす)ねえ、ちょっと、ふしぎでしょう?
第四の子ども (チルチルの腕をひっぱって)ぼくの機械を見にきてよ。はねがなくって、鳥のように飛ぶんだよ。
第五の子ども だめだめ、ぼくがいちばんさきだ! これは月の中にかくしてある宝を見つけるものだよ……
青い子どもたち (チルチルとミチルをとりまいて、みんないっしょにさけぶ)だめだ、だめだ。ぼくのを見にきてよ!……ぼくの方がずっとりっぱだ……ぼくのすばらしい発明だぜ!……ぼくのはお砂糖でこさえてあるよ!……あれはだめだ、あれはぼくの思いつきをとったんだ。
この大さわぎの中に、生きてる子どもたちは、青い工場の方へひっぱっていかれる。工場にはいると、発明家たちは、めいめい理想の機械を動かしてみせる。空色の車輪、平円板、はずみ車、起動輪、滑車、帯索、そのほか奇妙な、まだ名のついていないものなどが、まぼろしのような、青っぽい霧の中でうごいている。めずらしい、ふしぎな機械が、たくさんとびだして、天井うらをはねまわったり、柱のねもとを這いまわったりする。そのあいだに子どもたちは図面や設計図をひろげたり、本をあけたり、サファイヤやトルコ玉でできているらしい、すばらしい花や、大きなくだものをもってきたりする。
小さい青い子ども (大きなヒナギクをもって、その重さで腰をまげながら)ぼくの花、見てごらん……
チルチル なんだろう……わかんないや……
小さい青い子ども ヒナギクだよ!
チルチル ちがうよ。馬車の車輪くらい大きいもの……
小さい青い子ども とってもいいにおいがするよ。
チルチル (かいでみて)すばらしいね!
小さい青い子ども ぼくが地球へいったら、ヒナギクはみんなこんなになるよ。
チルチル いついくの?
小さい青い子ども 五十三年と四か月九日たったら。
ふたりの青い子どもがやってくる。ふとい棒からたれたラスターのような形をして、ナシよりも大きな、ほんとうとは思われないほどのブドウのふさをもってくる。
ブドウを持った子ども このくだものどう?
チルチル ナシのふさ?
子ども ううん、ブドウだよ、……ブドウがみんなこんなになるよ、ぼくが三十になると。ぼく、いい方法を見つけたんだ。
ほかの子ども (メロンくらいの大きさの、青いリンゴをかごにいれて、よちよちとやってきて)それからぼくのも! ぼくのリンゴ見てよ!
チルチル でも、そりゃメロンじゃないか!
子ども ううん。リンゴだよ……それも、いちばんいいのじゃないよ……ぼくが生まれると、みんなあんなになるんだぜ。ぼく、いいやりかた見つけたからね。
ほかの子ども (カボチャより大きな青いメロンをつんだ、青い手押車をおしてきて)このちっちゃいメロンどう?
チルチル だって、そりゃカボチャじゃないか!
子ども ぼくが地球へいくと、メロンがこんなに大きくなるよ……ぼく、九遊星の王さまの庭つくりになるんだ。
チルチル 九遊星の王さま? その人どこにいるの?
九遊星の王 (えらそうなふうをしてでてくる。四歳くらいに見え、まがった足で、やっとのことで立っている)ここにいるよ。
チルチル あんまり大きくないね。
九遊星の王 (おもおもしく、いかめしそうに)ぼくは大きくなったら、たいしたものをつくるんだぞ!
チルチル なにするの?
九遊星の王 太陽系の星みんなの同盟をつくるんだ。
チルチル (とてもおどろいて)ええ、ほんとに?
九遊星の王 星という星はみんなその同盟にはいるんだ。だけど、土星と、天王星と、海王星だけはべつさ。とんでもない遠くにあるからね。(えらそうなふうで退場)
チルチル おもしろいな。
青い子ども それからきみ、あれ見た?
チルチル どれ?
子ども ほら、あの柱のねもとのところに眠ってる、ちっちゃい子どもさ。
チルチル あの子、どうしたの?
子ども あの子はね、地球へほんとうのよろこびをもっていくのさ。
チルチル どういうふうにして?
子ども まだ人間たちの知らないようなことを考えさせるのさ。
チルチル それから、あのちっちゃい、ふとった子ね、指を鼻のところにあててる、あの子はなにをするの?
子ども あれはね、太陽がいまよりあかるくなくなったときに、地球をあっためる火をみつけるんだよ。
チルチル それから、ふたりで手をにぎりあって、キスばっかりしてるのね、あれ、きょうだい?
子ども ううん。あの子たちとってもおかしいんだ。恋人どうしなんだ。
チルチル なんのこと、それ?
子ども ぼくわかんない。「時のおじいさん」が、そういって、からかってるんだ。あのふたりね、まいにち、顔見合って、キスしたり、さよならしたりしてくらしてるんだよ。
チルチル なぜなの?
子ども あの子たちね、いっしょにここを出てくことできないらしいんだ。
チルチル それからあのちっちゃい桃色のね、まじめくさって、親指しゃぶってる、あの子は?
子ども 世の中から、ただしくないことをなくそうというのらしいよ。
チルチル ふーん。
子ども たいへんな仕事なんだってさ。
チルチル それから、あのちっちゃい、赤毛の子、じぶんでもどこへいくんだかわからないみたいに歩いてるけど、あれ、めくら?
子ども ううん、まだそうじゃないんだ。でもいまにめくらになるんだよ。ね、あの子ようく見てごらん。死ぬってことをなくそうとしてるらしいんだ。
チルチル それ、どういうことなの?
子ども ぼくよくわかんないけど、えらいことだってね。
チルチル (柱のねもとや、階段や、腰かけなどに眠っている一群れをさして)あの眠ってる子どもたち、ずいぶんたくさんいるんだね。みんな、なんにもしないの?
子ども なにか考えてるのさ。
チルチル なにを?
子ども じぶんでもまだわからないんだろ。でもね、みんな地球へいくときには、なにかもっていかなくちゃいけないんだ。空手じゃいけないことになってるんだからね。
チルチル だれがそういったの?
子ども 「時のおじいさん」さ。入り口のところに立ってるんだ……入り口をあけるときに見られるよ。あの人、とてもうるさいんだ。(pp. 193-200)
②楠山正雄訳
チルチル 〔……〕君、何をおもちゃにしているの。その大きな青い羽なんなの。
子供 これ。これ、今に地の上に行ったとき、発明をするためなんだよ。
チルチル 何の発明なの。君、何か発明をしたの。
子供 そうさ。まだ聞いたことなかったの。ぼく、地の上へ行ったら、みんなを幸福にするものを発明するんだよ。
チルチル おいしいものなの。音のするものなの。
子供 だめだ。君、何にも知らないんだもの。
チルチル 困ったなあ。
子供 ぼく、毎日それにかかっているの。もう大抵出来上がったのだよ。見せて上げようか。
チルチル ああ、どうぞ。どこにあるの。
子供 ここから、そら、この柱と柱との間から見えるよ。
もう一人の青い子供 (チルチルのそばへ駈けて来て、袖をひっぱって)君、ぼくのも見てくれるかい。
チルチル ああ、それは何なの。
第二の子供 人間の寿命をのばすためにつかう三十三通りの薬だよ。ほら、この青い壜の中に入っているんだよ。
第三の子供 (群衆の中から進んで出て)ぼくは、誰も知らない光を見せて上げよう。(自分の全身を、すごい光の炎で光らす)随分不思議だろう。ええ。
第四の子供 (チルチルの腕を引っぱって)来て、ぼくの器械を見てごらん。羽がなくっても、鳥のように空を飛んで歩ける器械だよ。
第五の子供 ううん、ううん、ぼくの方が先だよ。月の中にかくれた宝を見つけるのだよ。
青い子供たちはチルチルとミチルのまわりにかたまって来て、一しょに叫びたてます。ううん、ううん、ぼくの方へ来て頂戴よ。……だめだ、ぼくの方がずっといいんだよ。……ぼくの方がたいしたものなんだよ。……ぼくのはすっかりお砂糖なんだよ。……あの子のなんかちっともめずらしかないよ。あの子はぼくの考えをとったのだよ……。その他。
この大騒ぎの中に、生きている子供二人は、青い工場の方へひっぱって行かれます。そこで小さな発明家達が、一人一人理想の器械を動かして見せました。車輪、円板、制動機、歯車、滑車、調革およびその他の奇妙な、まだ名のついていない品物が、青色に廻りながら、幻のような霧の中で動いています。めずらしい不思議な器械がたくさんかたまって飛び出して、天井の上へとび上がったり、柱の下をはいまわったりします。子供達は地図や設計図を展げて見せたり、本を開いて見せたり、青色の像の被いをとって見せたり、青いサファイヤやトルコ玉でこしらえたかと思われるような、おそろしく、大きな花やめずらしい果実を持って来たりします。
小さい青い子供 (青い大雛菊の下に、おしつぶされたようになりながら)まあぼくの花を御覧よ。
チルチル 何だろう。わからないなあ。
小さい青い子供 雛菊だよ。
チルチル おどろいた。車の輪ぐらいあるんだなあ。
小さい青い子供 匂いもいいだろう。
チルルチ (匂いを嗅ぎながら)すてきだなあ。
小さい青い子供 ぼぼくが地の上に行けば、雛菊の花があんなに大きくなるんだよ。
チルチル それは、いつなの。
小さい青い子供 五十三年四箇月と九日あと。
二人の青い子供が、一本の柱にぶらさげた枝燭台のような形をして、とてもそれらしくない大きな葡萄の房をはこんで来ます。その実は梨よりも大きいのです。
子供の一人 (葡萄の身を運びながら)ぼくのこしらえた果物はどうです。
チルチル 梨の房だね。
子供 うそだよ。葡萄だよ。ぼくが三十になる時分には、葡萄がそうなるんだよ。ぼくはその方法を考えたのだから。
もう一人の子供 (瓜の大きさほどのある青林檎を籠に入れてひょろひょろかつぎながら)それからぼくのも。ぼくの林檎を見てくれたまえ。
チルチル だってこれ、甜瓜じゃないか。
子供 ううん。ううん。これは林檎だよ。しかも一番いいんじゃないんだ。ぼくが生れると、林檎がああなるんだよ。ぼく、その方式を考えたんだから。
もう一人の子供 (西瓜よりも大きい青甜瓜を入れた青い手押車を押しながら)そこでぼくの小さな甜瓜はどうあぢ。
チルチル だってこれ、西瓜じゃあないか。
甜瓜を持った子供 ぼくが地へ下りて行くと、甜瓜がこんなにすばらしくなるのだよ。ぼくは九つの遊星の王様の園丁になるんだ。
チルチル 九つの遊星の王様だって。それはどこにいるの。
九つの遊星の王 (いばって前へ出て来ます。まだやっと四歳ぐらいで、曲った足でこわごわ立っているように見えます)ここにいるぞ。
チルチル へえ。君、大きかないんだな。
九つの遊星の王 (勿体らしく、いいきかせるように)ぼくのこしらえるものが大きいのだ。
チルチル それは何をこしらえるの。
九つの遊星の王 ぼくは太陽系の遊星の総聯盟をこしらえるのだ。
チルチル (おどろいて)へえ。ほんとうに。
九つの遊星の王 法外な、はかりしられない遠方にある土星と、天王星と、海王星だけは別として、あとはのこらずなかまに入れるのだ。
こういって、威厳を見せて退きます。
チルチル おもしろいなあ。
青い子供 (始めてチルチルと話した子供)それから、君、あれを見たの。
チルチル どれさ。
子供 ほら、あそこに柱の下で眠っている子供があるだろう。
チルチル ああ、あれか。
子供 あの子はね、地球の上に純粋の喜を持って行くのだよ。
チルチル どういう風にして。
子供 まだ誰も持っていない考えでね。
チルチル それからもう一人、指を鼻の穴につっこんでいる肥った子供は、あれは何をするの。
子供 あの子は今に太陽の光が薄くなったときに、地球を暖める火を発明する人だよ。
チルチル それから男の子と女の子と二人手をとり合って、しょっちゅう抱き合っているのは。あの人達、兄妹ではないの。
子供 ううん、あれはへんなやつらだよ。「仲好し」というんだとさ。
チルチル なに、それは。
子供 ぼく、知らないよ。「時」がそういって、からかっているんだよ。あいつらは一日中お互に顔を見合って、抱き合ったり、さよならをいいあったりしているんだよ。
チルチル なぜなの。
子供 お互に離れることができないらしいんだよ。
チルチル それからむずかしい顔をして、指をしゃぶってる薔薇色の顔の子供がいるね。あれは誰なの。
子供 あの子は地の上から不正をなくす役をいいつけられてるらしい。
チルチル へえ。
子供 それはずいぶん大変な仕事なんだって。
チルチル それから、あの小さな髪の毛の紅い子供が、どこへ行くのか自分でもわからないような風をして、歩きまわっているのは何。あの子めくらなの。
子供 まだめくらじゃないよ。でも今にそうなるんだよ。よくあの子をごらん。あれは「死」を征服する役らしいのだよ。
チルチル それはどういうこと。
子供 ぼく、よくは知らないよ。けれどそれは大変なことなんだって。
チルチル (円柱の下や階段や腰掛などに眠っている子供達の群をさしながら)それから、あの子供たちみんな眠っているんだね。ずいぶんたくさん眠っているんだなあ。みんな何にもしないの
子供 何か考えごとをしているんだよ。
チルチル 何を考えているの。
子供 まだ自分でもわからないんだよ。でも地の上へは何か持って行かなければならないんだからね。ぼくたちは空手でここから出ることをとめられてるんだからね。
チルチル 誰がとめるの。
子供 扉󠄁のところに立っている「時」がさ。今に扉󠄁を開けると姿が見えるだろうが、それはずいぶん退屈しているんだよ。(pp. 175-180)
③堀口大學訳
チルチル 〔……〕きみ、なにをおもちゃにしてるの? その青い大きな羽なんなの?
子供 これ? これは地上へ行ってからぼくがやる発明のためのものなんだよ。
チルチル なんの発明なの? じゃ、きみなにか発明したの?
子供 ええ、きみ知らないの? ぼくは地上へ行ってからみんなの幸福のために役立つものを発明することになってるんだよ。
チルチル それはおいしいものなの? なにか音がする?
子供 ううん、食べられもしないし、なんの音もしないよ。
チルチル 残念だね。
子供 ぼく、そのために毎日働いてるんだよ。もう大体できあがってるんだ。見せてあげようか?
チルチル うん、ぜひ、どこにあるの?
子供 ほら、ここから見えるでしょう。柱と柱の間に。
ほかの青い子供 (チルチルに近づいてきて、そでを引っ張りながら)ねえ、ぼくのも見せてあげようか?
チルチル ええ、なんなの君の発明は?
第二の子供 人間の寿命をのばす三十三種類の薬だよ。ほら、この青いびんの中にはいってる。
第三の子供 (子供たちの群れから進み出て)ぼくはだれも知らない光を持ってるんだよ。(すばらしい炎で自分の全身を照らす)ねえ、とてもふしぎなものでしょう?
第四の子供 (チルチルの腕を引っ張って)ねえ、こっちへきてぼくの機械を見てよ。翼もなしに鳥みたいに空中を飛ぶんだよ。
第五の子供 いや、いや、ぼくのを先に見てもらうんだよ。月の中に隠れた宝を見つけるためのものなんだ。
(青い子供たちはチルチルとミチルのまわりにひしめき合って叫びたてる。「いや、いや、ぼくのを見にきてよ。ぼくの方がずっときれいなんだよ‥‥。ぼくの方がふしぎなんだよ‥‥。ぼくのは全部お砂糖なんだよ‥‥。あの子のなんかふしぎでもなんでもありやしない‥‥。あれはぼくの考えをとったんだよ‥‥」など。このうるさい叫び声の中に、生きてる子供たちは青い仕事部屋の方へ引っ張って行かれる。そこでは発明家たちが、それぞれ自分の理想の機械を動かして見せる。車輪や円板やはずみ車や歯車や滑車や革帯など、ふしぎな、まだ名前もないさまざまの物体が青みをおびたもやに包まれて旋回する。空色をしたふしぎな装置が飛び上って、丸天井の下を飛び回ったり、かと思うと円柱の足元をはい回ったりする。その間に子どもたちは、地図や設計図をひろげたり、本を開いたり、空色の彫像のおおいを取ったり、サファイアやトルコ玉でできているかと思われるすばらしく大きな花やくだものを持ってきたりする)
小さい青い子供 (空色の大きなヒナギクを持ち、その重みでからだをまげながら)そら、ぼくの花をごらんよ。
チルチル これはなに? ぼく知らないや。
小さい青い子供 ヒナギクだよ。
チルチル 本当かい? 車輪みたいに大きいんだなあ。
小さい青い子供 それにいいにおいがするよ。
チルチル (においをかぎながら)すばらしいね。
小さい青い子供 ぼくが地の上へ行ったらヒナギクはみんなこんなになるんだよ。
チルチル それはいつなの?
小さい青い子供 五十三年四ヵ月と九日たったら。
(ふたりの青い子供がやってくる。ふたりは、枝つき燭台のような形をして、その一粒一粒がナシよりも大きく、本当とは思われないようなブドウの一ふさを、太い棒につるして持っている)
ブドウを持ってきた子供のひとり ぼくのくだもの、どう?
チルチル ナシのふさだ。
子供 違うよ。ブドウだよ。ぼくが三十になるころには、ブドウはみんなこんなになるんだよ。ぼくはその方法を見つけたんだ。
もうひとりの子供 (メロンほどもある青い大きなリンゴの入ったかごに押しつぶされそうになりながら)ぼくのはどうだい。ぼくのリンゴをみてよ。
チルチル だって、それメロンだろう。
子供 ううん、ぼくの考えたリンゴだよ。それにまだ一番いいものじゃないんだ。ぼくが生まれるとリンゴはこうなるんだよ。ぼくはそのやり方を見つけたんだ。
もうひとりの子供 (カボチャよりも大きい、青いメロンを積んだ青い手押し車を押しながら)ぼくの小さなメロンはどうだい?
チルチル だって、これカボチャじゃないか。
メロンを持ってきた子供 ぼくが地上へ行くと、メロンはこんなにすばらしくなるんだよ。ぼくは九遊星の王に仕える庭師になるんだ。
チルチル 九遊星の王だって? その人どこにいるの?
九遊星の王 (得意そうに進み出る。まだやっと四歳ぐらいに見え、まがった足でやっとのこと立っている)ここだよ。
チルチル やあ、大きくないんだね。
九遊星の王 (おもおもしく、もったいぶって)ぼくのやる仕事は大きいんだぞ。
チルチル どんな仕事をするの?
九遊星の王 太陽系の遊星の総同盟をつくるんだ。
チルチル (驚いて)本当?
九遊星 おそろしく遠くにある土星と天王星と海王星だけは別だけれど、あとの星は残らず加盟するんだ。
(いばった風で退く)
チルチル おもしろいなあ。
青い子供 それから、きみあれを見た?
チルチル どれさ?
子供 ほら、あそこの柱の下に眠っている小さな子供。
チルチル あの子どうしたの?
子供 あの子は地球に純粋な喜びを持って行くんだよ。
チルチル どんな風にして?
子供 これまでだれも知らなかったような考えでさ。
チルチル それからもうひとり、指を鼻の中につっ込んでるあのふとった子はなにをするの?
子供 あの子は太陽の光が弱くなったとき、地球を暖める火を見つけることになってるんだよ。
チルチル それから手を取り合って、いつでも抱き合ってるようなあのふたりは? あの子たちきょうだいなの?
子供 ううん、あれはへんなやつらなんだ。「恋人どうし」なんだよ。
チルチル それなあに?
子供 知らないよ。「時」がそういってからかうんだよ。あの子たち、一日中じっと顔を見合ったり、抱き合ったり、さよならをいい合ったりしてるんだよ。
チルチル どうして?
子供 いっしょにここから出て行けないらしいんだ。
チルチル それから、まじめくさって親指をしゃぶってる、あのバラ色をした小さな子はだれなの?
子供 あの子は地上から不正をなくすんだって。
チルチル ふうん。
子供 とてもむずかしい仕事なんだってね。
チルチル それから、自分でもどこへ行くのかわからない風で歩いてくる、髪の赤い小さな子、あの子盲なの?
子供 ううん、だけどいまにそうなるんだよ。よくごらんなさい。あの子、「死」を征服することになるらしいんだよ。
チルチル それ、どういうことなの?
子供 よく知らないけどね。とても大変なことなんだって。
チルチル (円柱の下や、階段や、ベンチの上に眠っている子どもたちの一群を指さして)それから、あの眠っている子供たち、随分たくさんいるんだねえ。あの子たちなにもしないの?
子供 みんななにかを考えてるんだよ。
チルチル どんなことを?
子供 まだわからないけど。でも、みんななにかを地上に持って行かなければいけないんだよ。手ぶらで出て行くことは止められているんだ。
チルチル それはだれが止めるの?
子供 扉のところに立っている「時」だよ。きみ、いまに扉をあけるときに見られるよ。とてもうるさい人なんだ。(pp. 188-195)
④川口篤訳
チルチル 〔……〕なにをいじってるの? その青い大きな翼は、なんなの?……
子供 これ?……これは、僕が地上でする発明の準備なんだよ……
チルチル どんな発明?……もう何か発明したの?……
子供 ああ、君、知らないの?……僕は、地上に生まれたら、人を幸福にする物を発明しなければならないんだもの……
チルチル それは、おいしいものなの?……それとも、音を出すものなの?……
子供 いや、音は出さないよ……
チルチル それは残念だな……
子供 毎日、その仕事にかかっているんだよ……もう、あらかたでき上ってるけど……見せてあげようか?……
チルチル ぜひ見たいなあ……どこにあるの?……
子供 ここから見えるよ……あすこの、二本の柱の間に……
青い着物を着たほかの子供 (チルチルに近づいて、袖を引きながら)僕のも見たくない?……
チルチル 見せてもらうよ。どんな発明?……
第二の子供寿命をのばす三十三種類の薬だよ……そこの青い”壜の中にはいっている……
第三の子供 (大勢の子供たちの中から出て来て)僕は、誰も知らない光を持って来たよ!……(異様な焰で、自分の全身を照らし出す)変わってるだろう?……
第四の子供 (チルチルの腕を引っぱって)僕の機械を見てよ。翼のない鳥のように、空中を飛ぶんだよ!……
第五の子供 だめ、だめ、まず僕のを見てよ。月の中にかくされている宝を発見する機械だよ!……
(青い着物の子供達は、口々に次のようなことを叫びながら、チルチルとミチルの周囲にひしめく。「だめ、だめ、僕のを見に来て!……」「僕の方がもっときれいだよ!……」「僕のは、びっくりするよ!……」「僕のは、全部砂糖でできてるんだよ!……」「あいつのは、面白くもおかしくもないよ!……」「あいつは、僕のアイデアを盗んだんだよ!……」など。この騒然たる叫喚の中に、生きた子供たちは、青いアトリエに案内される。そこでは、発明家たちがそれぞれ、理想の機械を動かしている。車輪や、円板や、はずみ車や、歯車や、滑車や、革帯や、まだ名前もついていない見慣れない道具などが、この世のものとも思われない青味を帯びた靄に包まれて、回転している。風変わりな神秘的な器械が、円天井の下を滑走したり、円柱の裾を匍いまわったりする。一方、子供たちは、地図や設計図をひろげたり、書物を開いたり、青い彫像の覆いをはいだり、サファイヤやトルコ玉でできているかと思われる巨大な花や果物を運んだりする。)
青い着物の小さい子供 (青い巨大なひなぎくの花束の重みに腰をまげながら)僕の花を見て下さい!……
チルチル それはなんの花?……見たことないなあ……
青い着物の小さい子供 ひなぎくだよ!……
チルチル そんな筈ないよ!……車輪みたいに大きいもの……
青い着物の小さい子供 とてもいい匂いだろう!……
チルチル (匂いをかぎながら)すてきだ!……
青い着物の小さい子供 僕が地上に生まれたら、ひなぎくはこんなにいい匂いがするようになるんだよ……
チルチル それは、いつのこと?
青い着物の小さい子供 五十三年四カ月と九日だよ……
(青い着物の子供が、二人やって来る。竿の先につるして、シャンデリヤのような葡萄の房を持っているが、大きいことと言ったら、信じられないほどで、一粒が梨よりも大きい。)
葡萄の房を持っている子供の一人 この果物、どう思います?……
チルチル 梨の房だろう!……
子供 とんでもない。葡萄だよ!……僕が三十になる頃には、葡萄はみんなこれくらいになるんだよ……僕がその方法を発見したんだ……
別の子供 (メロンほどの大きな青りんごの一ぱい入った籠に、押しつぶされそうになって)僕のは!……ぼくのりんごを見てごらん!……
チルチル それは、メロンじゃないか!……
子供 とんでもない!……僕の作ったりんごだよ。これなんか、一番できの悪い方だ!……僕が生まれると、りんごはみんなこうなるんだよ……僕がその作り方を発見したんだ!……
別の子供 (青い手押し車に積んで、南瓜よりも大きい青いメロンを運んできて)僕の小さなメロンをどう思う?……
チルチル それは南瓜じゃないか!……
メロンを運んで来た子供 僕が地上に生まれたら、メロンは大威張りだよ!……僕は、九つの惑星を支配する王様の庭師になるんだよ……
チルチル 九つの惑星を支配する王様?……それはどこにいるの?……
九つの惑星を支配する王様 (誇らしげに進み出る。まだ四歳くらいで、よじれた小さな足で、立っているのがやっとといった有り様。)ここにいるよ!
チルチル へえ! あんまり大きくないんだな……
九つの惑星を支配する王様 (重々しく、物静かに)することは大きいぞ。
チルチル 何をするんですか?
九つの惑星を支配する王様 太陽系惑星連盟を作るのだ。
チルチル (まごついて)ほんと?
九つの惑星を支配する王様 全部加盟することになろう。土星と天王星と海王星は、遠すぎて、つきあいにくいから除くけれども。
チルチル 面白そうだなあ……
青い着物の子供 あすこにいる子が見えますか?
チルチル どの子?
子供 あすこの円柱の下で眠っている子……
チルチル それがどうしたというの?
子供 あの子は、地球に純粋な喜びを持って行くことになっているんです……
チルチル どうやって?
子供 誰も考えつかなかったアイデアで……
チルチル それから、鼻をほじくっているあの太った子は、何をするの?……
子供 太陽の熱がさめた時、地球を温める火を見つけることになっているんです……
チルチル それから、手を取り合って、しょっちゅうキスばかりしている、あの二人は? 兄妹なの?……
子供 とんでもない。とても変わったやつらだよ……恋人同士なんだって……
チルチル それは、どういう意味?……
子供 知らないよ……「時間」がそう呼んで、馬鹿にするんだよ……一日中、目を見合って、抱き合い、さよならを言い合っているんだよ……
チルチル どうして?
子供 一緒にここから出て行けないらしいんだ……
チルチル それから、まじめくさって、親指をしゃぶっている、バラ色の着物を着た子供は、誰なの?……
子供 あの子は、地上から不正をなくさなければならないらしいの……
チルチル へえ!……
子供 どえらい仕事なんだって……
チルチル それから、目が見えないような歩き方でやって来る、あの赤毛の子は盲目なの?……
子供 まだだけど、いずれそうなる筈なんだ……よく見てごらん。あの子は、死を征服しなければならないらしいんだ……
チルチル それは、どういうこと?……
子供 よくは知らないけど、大変なことらしいよ……
チルチル (円柱の裾や、階段やベンチなどの上で眠っている子供の群れを指さして)それから、あの眠っている子供たちは?――ずいぶんたくさんいるなあ!――あの子たち、なんにもしないの?……
子供 なんかを考えているんだよ……
チルチル どんなこと?
子供 自分でもまだわからないのだけど、何かを地上に持って行かなければならないんだって。手ぶらで出て行くことは禁じられているものだから……
チルチル 誰が禁じてるの?……
子供 扉󠄁のところに立っている「時間」だよ……扉󠄁がひらくと、見えるよ……とてもうるさいんだ……(pp. 248-25 0)
⑤鈴木豊訳
チルチル なんで遊んでるんだい? この青い大きな羽はなんなの?……
子供 これかい?……こいつは発明用さ、ぼくが地上へ行ってから発明するんだ……
チルチル なんの発明なの?……じゃあ、きみはなにか考え出したのかい?……
子供 そうとも、わからないの?……ぼくが地上へ行ったらね、なにか幸福にするものを作り出さなけりゃあいけないんだ……
チルチル 食べてみて、おいしいかい?……音はするのかい?……
子供 しないよ、なんにも聞えないよ……
チルチル つまらないな……
子供 ぼくね、ここで毎日仕事をしてるんだ……ほとんどでき上がったけれどね……見てみたいかい?……
チルチル 見たいとも……それ、どこにあるの?……
子供 ホラ、ここから見えるだろ、あの二本の柱のあいださ……
べつの青い子供 (チルチルに近寄って、袖を引っぱりながら)ネエ、ぼくのを見てくれない?……
チルチル 見るとも、それなんだい?……
二番目の子供 人間の生命をのばす、三十三種類の薬さ……ホラ、この青い瓶の中に見えるだろ……
三番目の子供 (仲間のところから出て)ぼくはね、だれも知らない光を持ってるんだぜ!……(ふしぎな炎で自分の体全体を照らし出して)とてもふしぎだろ、どう?……
四番目の子供 (チルチルの腕を引っぱりながら)ぼくの空を飛ぶ機械を見ておくれよ、まるで羽のない鳥みたいだよ!……
五番目の子供 だめだよ、だめだよ。はじめに月に隠されている宝物を見つけるぼくの機械を見てくれよ!……
(「青い子供」たちはチルチルとミチルのまわりに押しかけて、みんないっしょにこんなことを叫ぶ。「いやだよ、いやだよ、ぼくのを見にきてくれよ!……ちがうぞ、ぼくのがいちばんすごいんだぞ!……ぼくのやつはびっくりするようなやつだよ!……ぼくのはすっかり砂糖でできているんだ!……あの子のなんかふしぎじゃないよ……ぼくの考えを盗んだんだぜ……」。とりとめのないこんな叫び声が聞えるうちに、生きている子供たちが青い仕事部屋のほうへ引っぱってゆかれる。そこではなにかを作り出している子供たちのひとりひとりが、自分の理想の機械を動かしている。タイヤや、輪や、ハンドルや、歯車や、滑車や、ベルトや、現実とも思われない青みがかった蒸気に包まれた奇妙な、まだなんとも名前のつけようもないものが、青い色を発しながらグルグル回っている。たくさんの奇妙な、ふしぎな機械が群をなしてとび出し、円天井の下を飛び、柱の下を這い回り、そのあいだに子供たちは、地図や設計図を拡げ、本を開き、空色の彫像にかぶせたカバーをとり、大きな花や、サファイヤかトルコ石で作られたように見える、ものすごく大きな果物をもってくる)
小さい青い子供 (空色の巨大なひなぎくの花の重みに圧しつぶされて)サア、ぼくの花を見てくれよ!……
チルチル それなあに?……そんなの初めて見たよ……
小さい青い子供 ひなぎくさ……
チルチル 冗談言うなよ……タイヤみたいに大きいぜ……
小さい青い子供 それにいい匂いがするよ!……
チルチル (匂いを嗅いで)ふしぎだなあ!……
小さい青い子供 ぼくが地上へ行く頃には、こんなふうになるんだ……
チルチル いつ行くんだい?……
小さい青い子供 あと五十三年四か月と九日たってからだよ……
(二人の青い子供が、シャンデリヤのように棒にブラ下がったものすごいブドウの房を持ってやってくる。その実は、ひとつひとつが梨よりもずっと大きい)
ブドウの房を持ってきたひとりの子供 ぼくの果物をどう思う?……
チルチル 梨の房だろ!……
子供 ところがちがうんだ、ブドウなんだよ! ぼくが三十歳になるころはブドウはみんなこうなるんだぜ……ぼくはね、その方法を発見したのさ……
べつの子供 (メロンみたいに青い大きなリンゴの入った籠に、圧しつぶされるようにして)ぼくのほうはどうだい!……ぼくのリンゴを見てくれよ!……
チルチル でも、そいつはメロンじゃないか!……
子供 ちがうよ!……リンゴなんだ。これでもいちばんよくないやつなんだぜ!……ぼくが生れる頃にはみんな同じようになるんだ!……ぼくが作り方を発見したんだよ!……
ほかの子供 (かぼちゃよりも大きい、青いメロンを青い手押し車にのせてくる)ぼくの小さいメロンはどう?……
チルチル だって、こいつはかぼちゃだろ!……
メロンを持ってきた子供 ぼくが地上へ行くころには、メロンはこんなにみごとになるんだよ!……ぼくはね、九つの惑星の王さまの庭師になるんだ……
チルチル 九つの惑星の王さまって?……だれなの、そのひと?……
九つの惑星の王 (堂々と進み出る。見たところ四歳ぐらいで、小さい曲った脚でやっと立っているように見える)ぼくはここにいるよ!
チルチル フーン! あんまり大きくないね……
九つの惑星の王 (威厳をこめて、しかつめらしく)ぼくがやることは大きいぞ。
チルチル きみはなにをするの?
九つの惑星の王 ぼくはだね、太陽系惑星の総連合組織を作るんだよ。
チルチル (まごついて)フーン、ほんとうかい?
九つの惑星の王 みんなこの組織に入るんだよ。ただ土星と天王星と海王星はべつだけれどね、なにしろバカバカしく距離が離れていて遠いんだね。
(「九つの惑星の王」はもったいぶって退場する)
チルチル 面白いな……
青い子供 あそこの、あの子が見えるかい?
チルチル どの子だい?
子供 ホラ、柱の下で眠っている子供さ……
チルチル あの子がどうしたの?
子供 あの子はね、地球にまじりっ気のない喜びを持ってゆくんだよ……
チルチル なんだって?……
子供 まだだれも考えたこともないような思いつきでだぜ……
チルチル もうひとりの子供は、鼻へ指を突っ込んでいる肥った子、あの子はいったいなにをするの?……
子供 あの子はね、太陽の光が薄くなったら、地球を暖める火を発見するはずになっているんだ……
チルチル ひっきりなしに手を取り合ったり、キスをし合ったりしているあの二人、あの二人は兄さんと妹なの?……
子供 ちがうんだよ、あの二人、とてもへんなんだな……恋人同士なんだよ……
チルチル なんだい、恋人って?……
子供 わからないんだけれどもね。二人をからかうときに、「時」が二人をそんなふうに呼んでるんだ……一日中相手の目をのぞき込んだり、キスしたり、さよならを言ったりしているんだよ……
チルチル どうしてだい?
子供 どうやら二人はいっしょに出かけることはできないらしいよ……
チルチル ヘエ、どういうことだい、それ?……
子供 なんだか恐ろしい仕事だっていうはなしだよ……
チルチル 自分がどこに行くのかわからないみたいに歩いている、あの赤毛の子供は? あの子は目が見えないの?……
子供 まだいまは見えるんだ。でもいまに見えなくなるんだよ……よく見てごらん、あの子は「死」をやっつけるはずになっているらしいよ……
チルチル それどういう意味だい?……
子供 はっきりはわからないんだ。聞いたところでは、とてもたいへんなことだっていうけれど……
チルチル (柱の下や、階段のベンチの上で眠っている子供たちの群れを指さして)それにあの眠っている子供たちは? 眠っている子がなんてたくさんいるんだろう! あの子たちみんな、なんにもしていないの?……
子供 なにかを考えてるんだよ……
チルチル なにを?……
子供 自分でもまだよくわかっていないんだな。けれど、あの子たち地上へなにかを持って行かなけりゃあいけないんだよ。手ぶらでここを出てゆくのはいけないって言われているんでね……
チルチル いったいだれがいけないって言うの?
子供 ドアのところにいる「時」だよ……ドアを開けば姿が見えるよ……ひどくうるさいやつさ……(pp. 161-167)
⑥末松氷海子訳
チルチル きみが遊んでる、その青い大きな翼はなんなの?
子ども これ? これはね、ぼくが地上へ行ったら、発明するものだよ。
チルチル どんな発明? きみはもう、なんか発明したの?
子ども もちろんさ。きみ、知らないの? 地上に行ったら、みんなを幸福にするものを発明しなきゃならないんだ。
チルチル それはおいしいの? 音がする?
子ども ううん、なんにも。
チルチル それは残念だな。
子ども ぼくは毎日、それにとりかかってるんだ。もうほとんどできてるから、見せてあげようか?
チルチル うん、ぜひ見たいな。どこにあるの?
子ども あっちだよ。ここから見えるよ。あの二本の柱のあいだに……
ほかの青い子ども (チルチルのそばへきて、袖をひっぱる。)ねえ、ぼくのも見たい?
チルチル 見たいさ。どんなもの?
二番目の子 三十三種類の長生きの薬だよ。ほら、あそこの青いびんの中に……
三番目の子 (群れの中から出てきて)わたしはね、だれも知らない光を持ってきたの!(とくべつの炎ほのお〕で体じゅうを”照らす。)とってもめずらしいでしょ、ね?
四番目の子 (チルチルの腕をひっぱり)ぼくの機械を見にきてよ! 羽はないけど、鳥みたいに空中を飛ぶんだから!
五番目の子 だめ、だめ! ぼくのが先だよ。お月さまの中にかくされてる宝を見つける機械なんだ。
青い子どもたち、チルチルとミチルを取りまいて、いっせいにさけぶ。「だめ、だめ! わたしのを見にきて! ぼくのほうがりっぱだよ! ぼくのはすばらしい! わたしのはぜんぶお砂糖でできてる! あの子のなんかめずらしくない! あれはぼくの思いつきをとったんだ!」などなど。
この大さわぎのさなかに、チルチルとミチルは青い工房のほうへ連れていかれる。そこで、発明家たちはそれぞれ、自分の理想の機械を動かしてみせる。車輪、円盤、はずみ車、歯車、滑車、ベルト、そのほか奇妙な、まだ名前のついていないものなどが旋回し、夢のような青みがかったもやにつつまれる。奇妙でふしぎな機械のかずかずがとびはね、丸天井の下を滑空し、柱のもとをはいまわる。一方、青い子どもたちは、図面や設計図を広げたり、本を開いたり、空色の彫像の序幕をしたり、サファイアやトルコ石でできているらしい、大きな花や巨大な果物を持ってきたりする。
小さな青い子 (大きな空色のヒナギクの重みで、からだをかがめながら)ねえ、わたしの花、見て、見て!
チルチル それ、なんの花? ぼく、知らないけど……
小さな青い子 ヒナギクじゃない!
チルチル まさか! タイヤぐらいの大きさだもの。
小さな青い子 いいにおいがするんだよ。
チルチル (かいでみて)ほんとにいいにおい!
小さな青い子 ぼくが地上に行くと、ヒナギクはこんなになるんだ。
チルチル それはいつ?
小さな青い子 五十三年と四カ月と九日たったら……
青い子供が二人、棒にゆわえつけた、シャンデリアのような、信じられないくらい大きなブドウの房をかついで持ってくる。その実はナシより大きい。
子どもの一人 ぼくの果物、どう思う?
チルチル ナシの房かな!
その子 ちがうよ。ブドウだよ。ぼくが三十歳になったら、ブドウはみんな、こうなるんだ。ぼくがそのやり方を見つけたからね。
ほかの子 (メロンみたいに大きな青いリンゴの入ったかごを背負って、くたくたになって)ぼくのは? ぼくのリンゴ見てよ!
チルチル だけど、それ、メロンじゃないか!
その子 ちがうよ。ぼくのリンゴだよ。まだおいしそうじゃないけどね。ぼくが生まれたら、リンゴはみんなこうなるんだ。ぼくがいい方法を見つけたから……
べつの子 (青い手押し車に、カボチャより大きな青いメロンを積んで押してきて)ぼくの小さなメロンはどう?
チルチル だって、それ、カボチャだろ?
その子 ぼくが地上に行くとね、メロンはこんなにりっぱになるんだ。ぼく、九つの惑星の王さまの庭師になるよ。
チルチル 九つの惑星の王さまだって? そんな人、どこにいるの?
九つの惑星の王 (得意そうにやってくる。四歳くらいに見え、曲がった足で立っているのがやっとである。)ここにいるよ!
チルチル なあんだ! きみ、大きくないんだね。
九つの惑星の王 (重々しく、もったいぶって)ぼくがこれから作るものは大きいぞ。
チルチル なにを作るの?
九つの惑星の王 太陽系の星の総同盟を作るんだ。
チルチル (おどろいて)えーっ、ほんとに?
九つの惑星の王 星はぜんぶ、その同盟に入るのさ。土星と天王星と海王星のほかは……あの星たちはとてつもなく遠いところにあるからね。
九つの惑星の王、堂々と退場。
チルチル おもしろいなあ。
青い子ども きみ、あの子見た?
チルチル どの子?
子ども あそこの、柱のもとで眠っている小さい子だよ。
チルチル あの子がどうしたの?
子ども あの子はね、地球にほんとうのよろこびを持っていくんだ。
チルチル どうやって?
子ども まだだれも知らなかった考えを広めるのさ。
チルチル じゃあ、鼻の中に指をつっこんでる、あの太った子は? あの子はなにするの?
子ども あの子は、太陽の光がいまより弱くなったとき、地球を暖める火を見つけるはずだ。
チルチル あの二人は? 手をにぎって、ずっと抱きあってる……あの子たち、兄妹なの?
子ども ちがう、ちがう。とってもおかしいんだ。恋人どうしなんだよ。
チルチル それ、なんのこと?
子ども ぼく、知らないや。「時のおじいさん」がそういって、からかってるから……あの二人は一日じゅう見つめあって、キスして、それからさよならするんだ。
チルチル どうして?
子ども いっしょにここから出ていくことはできないらしいからね。
チルチル じゃあ、あのバラ色のほっぺたの子は? とてもまじめそうな顔して、親指をしゃぶってる。あの子はなにするの?
子ども 地上の不正をなくさなければ、って思ってるらしい。
チルチル ふーん。
子ども りっぱな仕事なんだってね。
チルチル あの赤毛の子、目が見えないみたいに歩いてるけど、目が悪いの?
子ども いまはまだ悪くない。でも、あとで悪くなるんだ。あの子をよく見てごらん。死ぬことをなくそう、って考えてるらしい。
チルチル それ、どういう意味?
子ども ぼくもはっきりとはわからない。でも、たいへんなことなんだってさ。
チルチル (柱のもと、階段の上、いすなどで眠っている子どもの一団をさして)あの眠っている子どもたち、なんておおぜいいるんだろう! あの子たち、なんにもしないの?
子ども なんか考えてるんだよ。
チルチル なにを?
子ども まだ自分たちにもわからないんだ。でも地上へ行くときには、なんか持っていかなきゃいけないからね。なにも持たないで行くことはできないんだ。
チルチル だれが決めたの?
子ども 戸口に立ってる「時のおじいさん」だよ。とびらを開けるとき、きみも会えるよ。なにしろ、ひどくうるさい人なんだ。(pp. 195-202)
*1:括弧内がこのブログでの引用元。それと(ほぼ)同じと見られる訳の初版の出版年を括弧の前で、また同じ訳者による最初の翻訳の出版年をスラッシュの前に示している。
*2:引用は Ebooks libres et gratuits による。