ひよこのるるの自由研究

日本語で読める世界の文学作品と、外国語に翻訳されている日本語の文学作品を、対訳で引用しています。日本語訳が複数あるものは、読みやすさ重視で比較しておすすめを紹介しています。世界中の言語で書かれたもの・訳されたもののコレクションを目指しています。

世界文学全集のためのメモ 28 『三文オペラ』 ベルトルト・ブレヒト

ドイツ語編 3

Bertolt Brecht
ベルトルト・ブレヒト
1898-1956

Die Dreigroschenoper
三文オペラ
1928

日本語訳
①杉山誠訳『三文オペラ』1956年(『河出 世界文学大系92 ブレヒト/アイヒ』河出書房新社、1980年 📗
千田是也訳『三文オペラ』1961年(岩波文庫 📗
③内垣啓一訳『三文オペラ』1969年(『新集 世界の文学 38』中央公論社 📗
④岩淵達治訳『三文オペラ』1998/2006年(岩波文庫 📗
⑤酒寄進一訳『三文オペラ』2007年(長崎出版 📗
⑥谷川道子訳『三文オペラ』2014年(光文社古典新訳文庫 📗
⑦大岡淳訳『三文オペラ』2018年(共和国 📗

⑤酒寄進一訳が群を抜いて素晴らしい。一部大胆な省略もあり、原文に忠実な訳とはいえないが、日本語として読みやすいシンタックスが非常に意識された訳文だ。ところどころ若者言葉が安易に使われている印象を受ける(例えば「あたし的には」と「あたしは」の違いを十分に理解した上で使っているのだろうか?)が、それを勘案しても、他のどの訳よりも断然明瞭に頭に入ってくる。⑥谷川道子訳も悪くないが、男性であるウォルターとイードの台詞を「女言葉風に訳してみた」というのは余計だったと思う。

Polly: Meine Herren, wenn keiner etwas vortragen will, dann will ich selber eine Kleinigkeit zum besten geben, und zwar werde ich ein Mädchen nachmachen, das ich einmal in einer dieser kleinen Vier-Penny-Kneipen in Soho gesehen habe. Es war das Abwaschmädchen, und Sie müssen wissen, daß alles über sie lachte und daß sie dann die Gäste ansprach und zu ihnen solche Dinge sagte, wie ich sie Ihnen gleich vorsingen werde. So, das ist die kleine Theke, Sie müssen sie sich verdammt schmutzig vorstellen, hinter der sie stand morgens und abends. Das ist der Spüleimer und das ist der Lappen, mit dem sie die Gläser abwusch. Wo Sie sitzen, saßen die Herren, die über sie lachten. Sie können auch lachen, daß es genau so ist; aber wenn Sie nicht können, dann brauchen Sie es nicht. Sie fängt an, scheinbar die Gläser abzuwaschen und vor sich hin zubrabbeln. Jetzt sagt zum Beispiel einer von Ihnen – auf Walter deutend –, Sie: Na, wann kommt denn dein Schiff, Jenny?

Walter: Na, wann kommt denn dein Schiff, Jenny?

Polly: Und ein anderer sagt, zum Beispiel Sie: Wäschst du immer noch die Gläser auf, du Jenny, die Seeräuberbraut?

Matthias: Wäschst du immer noch die Gläser auf, du Jenny, die Seeräuberbraut?

Polly: So, und jetzt fange ich an.

Songbeleuchtung: goldenes Licht. Die Orgel wird illuminiert. An einer Stange kommen von oben drei Lampen herunter, und auf den Tafeln steht:

DIE SEERÄUBER-JENNY

 

Meine Herren, heute sehen Sie mich Gläser abwaschen

Und ich mache das Bett für jeden.

Und Sie geben mir einen Penny und ich bedanke mich schnell

Und Sie sehen meine Lumpen und dies lumpige Hotel

Und Sie wissen nicht, mit wem Sie reden.

Aber eines Abends wird ein Geschrei sein am Hafen

Und man fragt: Was ist das für ein Geschrei?

Und man wird mich lächeln sehn bei meinen Gläsern

Und man sagt: Was lächelt die dabei?

Und ein Schiff mit acht Segeln

Und mit fünfzig Kanonen

Wird liegen am Kai.

 

Man sagt: Geh, wisch deine Gläser, mein Kind

Und man reicht mir den Penny hin.

Und der Penny wird genommen, und das Bett wird gemacht!

(Es wird keiner mehr drin schlafen in dieser Nacht.)

Und sie wissen immer noch nicht, wer ich bin.

Aber eines Abends wird ein Getös sein am Hafen

Und man fragt: Was ist das für ein Getös?

Und man wird mich stehen sehen hinterm Fenster

Und man sagt: Was lächelt die so bös?

Und das Schiff mit acht Segeln

Und mit fünfzig Kanonen

Wird beschießen die Stadt.

 

Meine Herren, da wird ihr Lachen aufhören

Denn die Mauern werden fallen hin

Und die Stadt wird gemacht dem Erdboden gleich.

Nur ein lumpiges Hotel wird verschont von dem Streich

Und man fragt: Wer wohnt Besonderer darin?

Und in dieser Nacht wird ein Geschrei um das Hotel sein

Und man fragt: Warum wird das Hotel verschont?

Und man wird mich sehen treten aus der Tür am Morgen

Und man sagt: Die hat darin gewohnt?

Und das Schiff mit acht Segeln

Und mit fünfzig Kanonen

Wird beflaggen den Mast.

 

Und es werden kommen hundert gen Mittag an Land

Und werden in den Schatten treten

Und fangen einen jeglichen aus jeglicher Tür

Und legen ihn in Ketten und bringen vor mir

Und fragen: Welchen sollen wir töten?

Und an diesem Mittag wird es still sein am Hafen

Wenn man fragt, wer wohl sterben muss.

Und dann werden Sie mich sagen hören: Alle!

Und wenn dann der Kopf fällt, sag ich: Hoppla!

Und das Schiff mit acht Segeln

Und mit fünfzig Kanonen

Wird entschwinden mit mir.

 

Matthias: Sehr nett, ulkig, was? Wie die das so hinlegt, die gnädige Frau!

Mac: Was heißt das, nett? Das ist doch nicht nett, du Idiot! Das ist doch Kunst und nicht nett. Das hast du großartig gemacht, Polly. Aber vor solchen Dreckhaufen, entschuldigen Sie, Hochwürden, hat das ja gar keinen Zweck. Leise zu Polly: Übrigens, ich mag das gar nicht bei dir, diese Verstellerei, laß das gefälligst in Zukunft.

①杉山誠訳

 

ポリイ ねえ、みなさん、誰もなんにもおやりんならないなら、わたしがちょっと歌うわ。その歌んなかで、いつかッホーの四文酒場で見たことのある、娘さんの真似をしようと思うの。その娘さん、皿洗いの女中さんなの。あんたたちに知って置いて貰いたいのは、みんながその娘さんを笑いものにしてたことや、ある日その娘さんがお客さんたちに話をしたことなの、その話をわたしがいまから歌うわ。そう、これは小さなカウンター――とても汚いものを想像してちょうだい――、そのうしろにその娘さんは朝から晩まで立っているの。そこには洗い水の入った補と、コップを拭くきれとが置いてある。あんたたちが腰かけてるところは、彼女を笑いものにするお客さんのいるところ。あんたたちも笑えれば、そうしたらすべてがそっくりそのままってわけ、でも笑えなきゃ、無理にそうする必要はないのよ。(彼女は始める、皿を洗う真似をし、ぶつぶつ独り言を言う)さあ、あんたたちのうち誰か――そう(ウォルターを指し)、あんたが、「ところで、お前の船はいつ帰って来るんだい、ジェニイ?」って言うの。

ウォルター ところでお前の船はいつ帰って来るんだい、ジェニイ?

ポリイ そうすると、もう一人の人が、そう、あんたがいいわ、「相変らずお前は皿を洗ってるのか、ジェニイ、海賊の花嫁さん?」って、言うの。

マサイアス 相変らずお前は皿を洗ってるのか、ジェニイ、海賊の花嫁さん?

ポリイ そう、そこでいよいよ始まるのよ。

(歌の照明、金色の光。オルガンに明りが当てられる。上から三つのランプがついたパーが下がって来、ぶらさがっている板に次のように書かれている。)

 海賊の花嫁ジェニイ

 

  1

みなさん、きょうはわたしは皿を洗ってる、ごらんのとおり

そして誰のためにも寝床をつくる

一ペニイをもらって、わたしは素早く礼を言う!

そして、みなさん、わたしはぼろ着を着て、ぼろ宿にとまってる

だけど話し相手のわたしを知らない。

ところがある晩、港に叫びが聞こえる

みんなは訊ねる、一体何の叫びだろう?

するとわたしがコップを洗いながらにっこり笑う

みんなは訊ねる、お前は何だってにっこり笑うんだ?

 八つの帆布と

 五十の大筒持った船

 やがて波止場に着くだろう。

  2

みんなが言うには、さあお前、さっさとコップを洗いなよ

そしてわたしに一ペニイ呉れる。

そこでペニイ銅貨をかくしに入れて寝床がつくられる。

(だけど、その晩、誰も寝床に寝はしないだろう。)

そしてわたしが誰だかまだ知らない。

ところがある晩、港に騒ぎが起こる

みんなは訊ねる、一体なんの騒ぎだろう?

窓のうしろに立ってるわたしを見つけて

みんなは訊ねる、お前はなんだって意地悪そうに笑うんだ?

 八つの帆布と

 五十の大筒持った船

 やがて町を砲撃しよう。

  3

みなさん、そのときぴたりと笑いをとめる

それもその筈、城壁が崩れる

たちまち町は廃墟となる

ただ一軒のぼろ宿だけが、難をのがれて生き残る

するとみんなは訊ねる、誰さまのお住居すまいなんだ?

その晩、宿の近くに叫びが聞こえる

みんなは訊れる、なぜこの宿だけが無事なんだ?

そして明け方、戸口から出てゆくわたしを見つけ

みんなは訊ねる、なんだあいつが住んでたのか?

 八つの帆布と

 五十の大筒持った船

 マストに旗がひるがえる。

  4

そしてひる頃、百人の人間が上陸し

物陰に身をかくし

戸ロから出て来る人を片っぱしから引っ捕え

鎖につないで、わたしのところに連れて来て

こう訊くわ、どいつを殺せばいいんだい?

そしてそのひる、どいつを殺せばいいと訊かれれば

港はひっそりかんとなるだろう。

そのとき、わたしの言葉を聞くだろう、どいつもこいつも殺してよ。

ばっさり首が落ちるたび、わたしはどっこいしょ!と叫ぶだろう。

 八つの帆布と

 五十の大筒持った船

 わたしと共に消えるだろう。

 

マサイアス とても愉快で、滑稽じゃないか、え? 奥さん、とてもうまくやりましたね!

マックヒース なんだって、愉快だって? こんなもの、愉快じゃねえ、ばか野郎! そんなもの、つくりごとで、ちっとも愉快じゃねえ。ポリイ、お前は素晴しかったよ。でも、こんなやつらの前じゃ、ごめんなさい、牧師さん、まさに豚に真珠ってやつだ。(ポリイに低い声で)それに、おれはお前がこんな芝居をするのは賛成じゃないね、あとになって気に入るようなことになるかも知れないがね。(pp. 83-85)

千田是也

ポリー みなさん、もうどなたもおやりにならないんなら、ちょっとしたお慰みをさせていただきます。これはソホーの四ペニー酒場で会った娘さんの真似なの。そのは皿洗いだったんです。それから、みなさんに知っといていただきたいのはね、これから歌うのは、そのをみんなが笑いものにしたとき、そのが言った言葉なの。そら、これがちいさな洗い台よ。そりゃあもう、うんと汚ないんだと想ってちょうだいね。その後にその娘は、朝晩も立っていたの。これがゆすぎバケツで、これがコップをふく雑布。あなた方の座ってるところに、お客たちが座って、そのを笑ってるの。あなた方もその通り笑っていいのよ。でも、できなければ、笑わなくてもいいわ。(彼女はコップを洗うまねをして、身体を何度も前にかがめる。)その時、あなた方の一人が、たとえばあなたが(と、ウォルターを指し)「おい、いってえお前の船は、いつ来るんだ、ジェニー」って言うの。

ウォルター おい、いってえお前の船は、いつ来るんだい、ジェニー?

ポリー するともう一人が、たとえば、あんたが、「まだコップなんか洗ってるのかよ、ジェニー、海賊の花嫁がよォ!」

マティヤス まだコップなんか洗ってるのかよ、ジェニー、海賊の花嫁がよォ?

ポリー そう。それから私が始めるの。

ソングの照明――金色の光線。オルガンのイルミネーションがつく。棒に吊った三つのランプが降りてくる、スクリーンにつぎのタイトル――

 

海賊ジェニー

 

    1

皆さん、御覧の通り今のあたしは皿洗い

どなたのベットもつくるわよ。

一ペニー貰ってヘイコラするわ

ぼろを着て、ぼろホテルにいるわ

でも知らないのよ、あんた方はあたしを。

でもある晩、港の方で叫び声がするの

みんな聞くの、何だあの叫びは、って

そして見るの、コップの傍であたしが笑ってるのを

そして言うの、なぜこんなとき笑うんだって。

  そのとき、八枚の帆と

  五十門の大砲を積んだ船が

  港の岸壁につくのよ。

 

    2

みんな言うの、行って皿でも洗ってろって

そして、ペニー銅貨を投げてよこすの。

ペニーはいただいとくわよ

ベットもつくってやるわよ。

(でもその晩そこに寝る人はもういないわ。)

まだ知らないのよ、あんた方は、あたしを。

でもある晩、港に大きなどよめきが起る

みんな聞くの、何だあのどよめきはって

そして見るの、あたしが窓ぎわにいるのを

そして言うの、なぜ意地悪そうに笑うんだって。

  そのとき、八枚の帆と

  五十門の大砲を積んだ船が

  町を砲撃しはじめるのよ。

 

    3

皆さん、そこであんた達の笑いもとまるわね

だって、城壁がみんな崩れて

町中が地面と同じになるんだもの

ただぼろホテルが一つ、難を逃れるの

みんな聞くわ、どんなえらい人が住んでるのかって。

そしてその晩、ホテルのまわりは大騒ぎ

そして聞くの、なぜここだけ助かったんだって

そして見るの、朝あたしが戸口から出てくるのを

そして言うの、あの娘かい、ここに住んでたのはって。

  そのとき、八枚の帆と

  五十門の大砲を積んだ船が

  マストに旗をかかげるのよ。

 

    4

そして昼ごろ、百人の海賊が上陸して

町をのこらず占領するの、どの家からも

人間を根こそぎ、ひっつかまえて

鎖でしばって、あたしの前につれて来て

こう言うの、どいつを殺しやしょうって。

そのお昼は、港はどこもヒッソリとして

聞いてるの、殺されるのは誰だろうって

聞こえるわ、あたしが言うのが、みんなお殺しって

そして首が落ちる度に、ヨッコラショッて。

  それから、八枚の帆と

  五十門の大砲を積んだ船が

  あたしをのせて消え去るのよ。

 

マティヤス こいつはいけるぜ。おもしれえよ、ねえ? 全くうめえもんだ、奥さん。

マクヒィス いけるぜとはなんだ。こりゃいけるぜなんてもんじゃねえ、間抜け。これは芸術ってもんで、いけるぜなんてもんじゃねえ、すてきだったよ、ポリー。しかし、こんな糞ったれどもに――いや失礼、牧師さん――きかせたって無駄だね。(ポリに小声で)だがおれはあんまり好かないな、あんな役者の真似みたいなことするのは。これからはやめてもらいたいね。(pp. 41-46)

③内垣啓一訳

 

ポリイ みなさん、だれも何か歌わないんだったら、あたしがちょっとした余興をいたします、それもね、皆あたしがソホーによくある小さなペニー酒場の一目で見た、娘の真似をするわ。その娘はコップ先いだったの、だからこう思ってちょうだい、みんなが娘を笑いものにしていた、すると娘がお客たちに話しかけた、そしてあたしがいまからあなた方に歌って聞かせるようなことを言った。じゃ、これが小さなカウンターよ、おそろしく汚れてるって考えてちょうだい、その後ろに娘は毎朝毎晩立っていたの。これがすすぎ用のバケツで、これがコップを拭くふきんよ。あなた方のすわってるところに、お客たちがすわって、娘を笑いものにしていたの。あなた方も、そのとおりに笑っていいのよ。だけど笑えないんだったら、むりしなくてもいいわ。(彼女はコップを洗うふりをしながら、軽く口ずさみ始める)ここでたとえば、あなた方のだれか――(ウォルターを指さして)――あなたが言うのよ、「おい、いったい、いつおえの船は来るんだ、ジェニイ?」

ウォルター おい、いったい、いつおまえの船は来るんだ、ジェニイ?

ポリイ すると別なだれか、たとえばあなたが言うのよ、「おまえはあいかわらずコップを洗ってるのか、えっ、ジェニイ、海賊の花嫁のくせに?」

マサイアス おまえはあいかわらずコップを洗ってるのか、えっ、ジェニイ、海賊の花嫁のくせに?

ポリイ そう、そこであたしが始めるのよ。

 

ソングのための照明――金色の光線。オルガンにイルミネーションがともる。一本のハイフにつるしたランプが二つ降りてくると、スクリーンには次の文字――

 

《海賊ジェニイ》

 

    1

みなさん、ごらんのとおり私はコップを洗い

だれのためにもベッドの用意。

一ペニーいただくとすぐにお礼を言うわ

このぼろな着物にこのぼろなホテル

だがみんな知らないわ、私の正体を。

しかしある晩、叫び声が港ですると

みんな聞くわ、なんだあの叫び声は?

そして私がコップのそばで笑うと

みんな言うわ、なぜこんなとき笑うのだ?

 そのとき八枚の帆と

 五十門の大砲の

 船が岸に着く。

 

    2

みんな言うわ、さっさとコップを洗えよ、娘

そして銅貨を私にくれる。

ペニーいただくとすぐにベッドの用意!

(もうだれひとりその晩そこに寝ないのに)

まだみんな知らないわ、私の正体を。

しかしある晩、どよめきが港ですると

みんな聞くわ、なんだあのどよめきは?

そして私が窓ぎわに立ってると

みんな言うわ、なぜ意地わるく笑うのだ?

 そのとき八枚の帆と

 五十門の大砲の

 船が町を撃つ。

 

    3

みなさん、もう私を笑ってはおれなくなるわ

だって城はくずれおち

町じゅうの建物が平たい地面になるわ

だがぼろホテルだけが無事に残る

みんな聞くわ、だれにあそこに住んでるのは?

しかしその晩、叫び声がホテルを包み

みんな聞くわ、なぜだここだけ無事なのは?

そして私が明け方ドアから出ると

みんな言うわ、やつがあそこに住んでたのか?

 そのとき八枚の帆と

 五十門の大砲の

 船が旗を上げる。

 

    4

そして昼ごろ、百人の海賊が陸に上がり

すみからすみまで歩きまわり

方々のドアからみんなを引っぱりだすわ

鎖につないで私の前につれて来て

こう聞くわ、だれを殺せばいいんだ?

その昼ごろ、静けさが港を包み

みんな聞くわ、だれだ殺されるやつは?

すると私が言う番だわ、みんな!

そして首が落ちるたびに、ほらさ!

 そのとき八枚の帆と

 五十門の大砲の

 船が私と消える。

 

マサイアス いかすね、傑作だ、えっ? あの歌いっぷり、奥さんのね!

メック どういうことだ、いかすってのは? いかすなんてものじゃないんだ、この脳たりんめ! これは芸術ってもので、いかすんじゃないぞ。上手じょうずだったな、ポリイ。しかし、こんな糞野郎どもには――いや失礼、牧師さん――まるっきり猫に小判だよ。(小声でポリイに)それからな、おれはおまえがあんなことまでするのはいやだね、あの物真似の仕ぐさ、頼むから今後はやめてくれよ。(pp. 421-423)

④岩淵達治訳

 

ポリー 皆さん、もう誰も余興をなさらないんなら、わたしがソーホーの安酒場で会ったことのある女の子のまねをしてみたいわ。そのは皿洗いでした。いい? 誰も彼もその娘を笑い者にしていました。笑われると、その娘はお客に向かって言ったのよ。これからすぐ皆さんに何て言ったか、うたって聞かせるわ。いい? これが小さなスタンドだとするわね。その娘はひどく汚らしい娘だと思ってちょうだい。そのスタンドの後ろに朝から晩まで立ちずくめなのよ。これが洗い桶でこれが布巾ふきん、この布巾でその娘はコップをくのよ。皆さんが坐っているあたりに、その娘を笑い者にする男の客が座ってるの。あなた方もその通りに笑っていいわ。でも、笑えなかったら笑わなくてもいいのよ。(ポリーはコップを拭いている振りをし始める、そして拭きながらひとりで歌を口ずさみ始める)そしたら、例えば誰かが、(ウォルターを指して)そう、あなたでもいいわ。こう言ってちょうだい。「おい、一体いつになったらお前の海賊船ってやつが来るんだよ、ジェニー?」

ウォルター おい、一体いつになったらお前の海賊船ってやつが来るんだよ、ジェニー?

ポリー そしたら別の人が、そうね、あなたがいいわ。お前はまだ相変わらずコップを洗ってるのかい、ジェニーよ、海賊の花嫁さんよ、って言うの。

マサイアス お前はまだ相変わらずコップを洗ってるのかい、ジェニーよ、海賊の花嫁さんよ。

ポリー そう、じゃあわたし、始めるわよ。

(ソング用の照明、金色のライト。パイプオルガンに電飾イルミネーシヨンがともる。バトンに吊るしたスポットが三台下りて来る。幻灯パネルには次のタイトルが映し出される)

 

海賊ジェニー

 

 1

皆さん、あたしはぼろホテルの女中よ

皿洗いやベッドの支度。

チップをもらえばヘイコラするわ

でも、お客は汚いこのあたしが

どこの誰だか知らない。

でもある晩、波止場で叫び声

みんな聞くわ「何の叫びだ?」と。

でも、あたしだけは笑っているわ

みんななぜ?って聞くでしょう。

  港の波止場に

  海賊船が

  着いたのさ。

 

 2

みんな、あたしに、コップをゆすがせて

チップをよこすわ

チップはもらって

ベッドの支度

今夜寝られる人はいないけど

誰も知らない、あたしの正体を。

ある晩、波止場にとどろく響き

みんな何事か?と驚くわ。

窓辺であたしは冷たく笑ってる

気味悪く見えるでしょう? 

  港の波止場の

  海賊船が

  砲撃開始。

 

 3

みんなはもう笑えないわ

町中の壁が崩れ落ち

砲撃で町はぺしゃんこ

でも、ぼろホテルが一軒残る

なぜ焼け残り、誰が住んでたのか?

翌朝みんなは聞くでしょう

なぜ焼け残ったかって?って。

戸口から出て来るのはあたし

あの女が住んでたのか? 

  港の船の

  マストに旗が

  揚がるのよ。

 

 4

それから百人の海賊が

上陸して町を回り

どの家からも一人ずつ縛り上げ

前に連れ出し

あたしに聞くわ、どいつを殺しましょうか?って。

波止場は静かで死んだよう

どいつをりますかと

聞かれたあたしは叫ぶの、「みんなよ!」

そして首が転がるたびに言ってやるわ、「ストン!」

  港の船は

  あたしを乗せて

  消えていくわ。

 

〔1 紳士の皆さん、今日はあたしがコップを洗っているところをご覧だわね/あたしはどなたのベッドの支度もするわ。/すると皆さんは一ペニーのチップをくれ、あたしはすぐお礼を言うわ、相手のあたしが何者かは知らないで。/でも、ある晩港で一声悲鳴があがる/すると皆あの悲鳴は何だ?って尋ねるわ。そしてコップをゆすぎながら微笑ほほえんでるあたしを見て/何で仕事しながらひとり笑いをしてるんだ?って言うわ。/そして八枚の帆と/五十門の大砲を備えた船が/波止場に横づけになるわ。/2 皆さんは、さあコップをゆすげ、お前さん、と言って/あたしに一ペニーよこすわ/一ペニーは受け取るし/ベッドの支度もするわ、でもその夜、そのベッドで寝られる人は一人もいないのよ/それでもまだあたしの正体を誰も知らないのよ。/でもある晩、港ですごい轟きが響き/みんな、何だ、あの(大砲みたいな)音は?って聞くでしょう。/そしてあたしが窓辺に立っているのを見て/何であのはあんな気味の悪い笑みを浮かべているんだ?って言うでしょう。/そして八枚の帆と/五十門の大砲を備えた船が/町を砲撃するでしょう。/3 皆さんは、きっともう笑いが止まってしまうでしょう/だって(砲撃で)町の壁が崩れ落ちるのよ/そして町はぺしゃんこで、まっ平らになってしまうもの/でもみすぼらしい一軒のホテルだけはどの砲撃の餌食えじきにもならない/それであのホテルには特別な奴が住んでいるんだろうか?って皆言い合うでしょう。/夜が白む頃、そのホテルの戸口からあたしが出て来るのを見て皆は/あの女が住んでたのか?って言うわ。/そして八枚の帆と/五十門の大砲を備えた船の/マストに旗が揚がるでしょう。/4 そして昼ごろ百人が上陸するわ、そして物陰に入って/そしてどの家からも一人残らず捕まえて/そしてくさりつないであたしの前に連れ出すわ/そして尋ねるわ、どいつを殺しましょうか?って。/そしてこの昼は港は死んだように静か/あたしがどいつを殺すか聞かれるときは。/そしてあたしがこう言うのが聞こえるでしょう、「みんなよ!」って。/そして首が落ちるたびにあたしは言うわ、「ストン!」って。/そして八枚の帆と/五十門の大砲を備えた船は/あたしを乗せて消えていくわ。〕

 

マサイアス とってもイカスぜ。面白いよな、このうたいっぷりときたらよ。

メック イカスとはどういうことだ。イカスなんてもんじゃねえんだぞ、この馬鹿野郎。こいつは芸術ってもんで、イカスなんて代物しろものとはわけが違う。まったく素晴らしかったよ、ポリー。しかし、こんなクソ野郎どもにや、おっと失礼〔下品な言葉を〕、牧師さん、こんな野郎にゃまるで聞かせたって無駄だ。(ポリーに小声で)ところで、俺は君がこういう芝居のまねごとみたいなことをやるのは気に食わん。これからはやめてもらいたいね。(pp. 50-57)

⑤酒寄進一訳

 

ポリー 他に余興がないなら、あたしがちょっと披露しよ~かな~。これから、ソーホーの安酒場で出会った子の真似をするね、見てて。その子ね、皿洗いで、みんなにバカにされてたの。でもその子が客にいったことがすごいのよ。それをこれから歌ってあげる。それじゃ、これが小さなカウンターだと思って。その子はひどい格好で、朝から晩までカウンターの裏に立ちづくめ。これが洗い桶で、これがコップをふく布巾ね。みんながすわってるところに、その子をバカにする客たちがいるの。客のつもりで笑って。でも、むりはしないでね。(ポリー、コップをふきながら、歌を口ずさむふりをする)そうしたら、だれかがいうの。(ウォルターをさす)あなた、いって「おい、いつになったら迎えの船は来るんだ、ジェニー?」

ウォルター おい、いつになったら迎えの船は来るんだ、ジェニー?

ポリー そしたらね、今度は別の人が、たとえばあなたね。「おまえ、まだコップを洗ってんのか、ジェニー、海賊の花嫁さん」っていって。

マサイアス おまえ、まだコップを洗ってんのか、ジェニー、海賊の花嫁さん。

ポリー それじゃ、はじめるわよ~。

 

ソング用の照明。金色の光。一本の棒にライト三灯、上からおりてきて、パネルにスポットライトを当てる。パネルには「海賊ジェニー」と書いてある。

 

No.6 海賊ジェニー

 

いいかい 今のあたしは しがない小間使い

いわれりゃ ベッドの用意もしてやるさ

小銭 もらって しっぽをふるふる

ボロ着たあたし 場末のホテル

あたしがだれか 知らぬが仏

 

だけどある晩 港で悲鳴 さあ 大変

みんな びっくり ありゃなんだ?

だけどあたしは コップをふきふき 笑うのさ

なんで笑う ときかれりゃ 答えようじゃないの

八つの帆かけた 海賊船

ずらっと 大砲 五十門

波止場についたのさ

 

おい そこの コップをせっせとあらえ

そしてくれるわ 一ペニーぽっち

小銭をもらって あたし

ベッドをこしらえるのね

だけど 眠れるもんか 今夜はね

あたしがだれか 知らぬが仏

 

だけどある晩 港でズドン さあ 大変

みんな びっくり ありゃなんだ?

だけどあたしは 窓辺にたたずみ ほくそえむ

なんであざ笑う ときかれりゃ 答えようじゃないの

八つの帆かけた 海賊船

ずらっと 大砲 五十門

街を砲撃 ぼこぼこさ

 

お昼に 上陸 海賊百人

ドアを こじあけ 押し入った

縄で みんなを しばりあげて

あたしの前に 連れてきた ぞろぞろと

そして聞くのね だれから殺す?

 

昼の波止場は しずまりかえる さあ どうしよう

だれから死ぬのか あ みんなも ビックビク

きかれりゃ いおうじゃないの 全員 殺っちゃって!

そして首が飛ぶたび あたしはいうわ ポトン!

八つの帆かけた 海賊船

ずらっと 大砲 五十門

あたしを乗せて 船出したよ

 

ソングの照明消える。

しばし沈黙、それから拍手と笑い声。

 

マサイアス いいねえ、おもろいよ、その歌! 歌い方もイカスし!

メッキ おもろい? イカス? このトンマ、これは芸術っていうんだ。すばらしかったよ、ポリー。しっかし、こんなろくでもない連中が相手じゃなあ……おっと、失礼、牧師さん……とにかくこの連中が相手じゃ、もったいない。(ポリーに小声で)ところで、こんなおふざけは、あんまりしないでくれ。これからはやめてくれよな。(pp. 42-46)

⑥谷川道子訳

ポリー皆さん、もうどなたも唄われないのなら、私にちょっとした余興をさせてくださいな、ソーホーの安酒場で会ったことのある女の子の真似なんだけど。その女の子は皿洗いだった。いいかしら? 皆がその娘を笑い者にしていたの。笑われると、その娘はお客に向かって言ったのよ。その娘がなんて言ったかを、これから皆さんに唄ってお聞かせしたいわ。いーい? これが小さなカウンターだとするわね。その娘はひどく汚らしい娘だったと想像してちょうだい。カウンターの後ろで、朝から晩まで立ちっぱなしだったの。これが洗い桶でこれが布巾ふきん、この布巾でその娘はコップをくの。皆さんが座っているあたりに、その娘を笑い物にする男の客が座っている。あなた方もそのお客通りに笑ってもいいわ。笑えなかったら笑わなくてもいいのよ。(彼女はコップを拭いているふりをし始める、そして一人で歌を口ずさみ始める)そうしたら誰かが、例えば(ウォルターを指して)、うん、そうあなたでいいわ。こう言ってちょうだい。「おい、一体いつになったら、お前の海賊船ってやつが来るんだい、ジェニー?」

ウォルター 「おい、一体いつになったら、お前の海賊船ってやつが来るんだい、ジェニー?」

ポリー そしたら別の男が、そうね、あなたでいいわ、「お前、まだ相変わらずコップを洗っているのかい? ジェニー、海賊の花嫁さんよ」。

マサイアス 「お前、まだ相変わらずコップを洗っているのかい? ジェニー、海賊の花嫁さんよ」

ポリー そうよ、じゃあ、始めるわよ。

 

(ソングの照明に変わる。金色の光。一本のバトンに吊るしたライトが三つ下りてくる。吊られたパネルには、次の文字が書いてある。「海賊ジェニーの歌」。ポリーが唄う)

 

  「海賊ジェニーの歌」

1

ご覧の通り あたしは しがないホテル酒場の皿洗い

一ペンスのチップをくれるなら

どなたのベッドもつくるわよ

安いほろホテルで ぼろ服を着てる

みんな知らないのよ この汚いあたしが誰かって

ある晩 波止場で叫ぶ声

みんなあわてて騒ぎ出す

でも 皿洗いのあたしだけは笑ってるの

みんなが聞くわ 何故なぜかって

  港の波止場に 八枚の帆と

  五十の大砲を積んだ

  海賊船が着いたのよ

 

2

みなが言うの あっちで皿でも洗えって

お金をもらってベッドの支度

でも今夜はここで寝られる客はいないのよ

誰も知らない あたしの正体を

ある晩 波止場にとどろく砲声

いったいあれは何だ そう 皆 驚くわ

でもあたしだけは笑ってるの

みんなが聞くわ 何故かって

  港の波止場で 八枚の帆と

  五十の大砲を積んだ

  海賊船が砲撃開始

 

3

みんな もう だあれも笑っていられないわ

町中の壁が崩れおち

何もかもがぺしゃんこの焼け野原

でもぼろホテルだけが一軒残って大騒ぎ

みんなが聞くの なぜ残ったか どんな偉い人が住んでたんだ?

朝が来て ホテルの戸口から

現われるのが このあたし

あの娘かい ここに住んでたのは?

  港の波止場で 八枚の帆と

  五十の大砲を積んだ

  海賊船のマストに 旗が揚がるの

 

4

そして昼ごろ 百人の海賊が上陸して町を占領

どの家からも一人ずつ縛り上げ

あたしの前に引き出して

どいつを殺すのかと聞くわ どいつから殺すかって

この日 港はヒッソリ静まり返る

誰を殺すかって そこであたしが言うの「かたぱしからみんなよ!」

そして首が転がるたびに言ってやるのさ

「オットット ストーン!」

  港の波止場の 八枚の帆と

  五十の大砲を積んだ海賊船が

  あたしを乗せて消えていくの

 

マサイアス すげえ、お嬢、こいつはイケルぜ。

メッキース イケルとはどういうことだ。イケルなんてもんじゃねえぞ、この馬鹿め。こいつこそ芸術ってもんで、イケルなんて代物しろものとはわけが違うんだ。まったく素晴らしかったよ、ポリー。しかしこんなクソ野郎どもにや、あっ、失礼、牧師さん。やあ、こんな野郎どもにや、聞かせたってまるで無駄だ。(ポリーに小声で)だが俺は、お前がこんな芝居の真似ごとみたいなことをやるのは気に食わねえ。これからはやめてもらおう。(pp. 55-61)

⑦大岡淳訳

ポリー みなさん、出し物がおしまいだったら、今度は、あたしがちょっとした出し物を披露します。内容は、ある女の子を演じるんですけど、ソーホーのちっぽけな居酒屋で、一度だけ会ったことがある子です。あらかじめ言っておくと、その子はそこで皿洗いをやってて、みんな彼女のことを笑ってて、お客さんにからかわれる度に、彼女は言い返すんですけど、その彼女のセリフを、あたしがそのまんま歌にしてうたいます。なんで、ここに小さいカウンターがあって、凄い汚い感じの女の子がいるって思ってください。その子は、朝から晩まで、カウンターの奥に立ちっぱなし。これが桶で、これが布巾で、こうやって食器を拭いてて。みなさんのところにお客さんたちが座ってて、この子を見て笑ってます。みなさん、できそうだったら、そんな感じで笑ってください。できなかったら無理しなくていいです。(彼女は食器を洗うマネをし、ぱんやりとひとりごとを言い始める)そんで例えば、誰かが言います。(ウォルターを指して)「なあ、おまえの船っていつ来んだよ、ジェニー?」

ウォルター なあ、おまえの船っていつ来んだよ、ジェニー?

ポリー したら別の誰かが、例えば、「おまえまだそれ洗ってんのかよ、ジェニーちゃーん、海賊の花嫁さーん?」

マサイアス おまえまだそれ洗ってんのかよ、ジェニーちゃーん、海賊の花嫁さーん?

ポリー そうそう、じゃあ始めます。

 

歌の照明、金色の光。パイプオルガンがイルミネーションで飾られる。バトンに吊るされた三つの灯体とパネルが降りてくる。パネルにはタイトルが書かれている。

 

海賊ジェニー

 

   1

あのね、あたしは今日もお皿を洗って

ベッドメーキング終わらせて

そんでチップをくれたらありがとさん

なんせオンボロホテルのメイドさん

んでもあたしが誰かわかって?

ある晩、港で叫び声

お客が「いったい何事だ?」

ニヤリと笑ったあたしへ

お客が「おまえ、バカ?」

 波をかきわけ

 海賊船

 あらわれる

 

   2

「あのな、皿でも洗えよさっさとあっちで

チップなら持っていけ」

はい、ベッドメーキングはこれでおしまい

でも誰も今夜は寝られない

だってあたし、ホントは誰?

ある晩、港でドンッと鳴って

お客が「いったい何の音だ?」

窓辺にたたずむあたしへ

お客が「なに笑ってんだ?」

 大砲うならせ

 海賊船

 攻めて来る

 

   3

さて、笑ってられるのもオシマイね

なんせ城壁崩れ去って

街中ペチャンコ焼け野原

でもオンボロホテルはそのまんま

みんなが「あそこにいるのは誰?」

みんながホテルを取り巻いて

「どうしてここだけ助かった?」

朝、ドアをあけあたしは外へ

みんなが「あの子は何者だ?」

 旗を掲げて

 海賊船

 勝ち誇る

 

   4

さて、海賊百人おかに上がって

お昼に暗い影

町の奴等をひとり残らず

鎖につないで連れて行く

そんで「誰を殺しましょうね?」

お昼の港は静まり返って

あなたは「誰が殺される?」

そんであたしは答える みんな!

首が飛んだら ざまぁ!

 あたしをのせて

 海賊船

 去って行く

 

マサイアス マジやべえ、超うけたんだけど? すげーじゃん、おねーちゃん! 

マック だから「やべぇ」って何なんだよ、「やべぇ」ってレベルじゃねーんだよ、バカ! そういうんじゃなくて、もはや芸術だろ。素晴らしかったよ、ポリー。ただ、こんなウンコ野郎どもは――おっとすみません牧師様――この人たちは、意味がわからなかったんじゃないかな。(ポリーだけに小声で)とにかく、今みたいのは勘弁してくれよ、あんな演劇みたいのは、もう二度とごめんだぜ。(pp. 45-50)