ひよこのるるの自由研究

日本語で読める世界の文学作品と、外国語に翻訳されている日本語の文学作品を、対訳で引用しています。日本語訳が複数あるものは、読みやすさ重視で比較しておすすめを紹介しています。世界中の言語で書かれたもの・訳されたもののコレクションを目指しています。

世界文学全集のためのメモ 14 『1Q84』 村上春樹

日本語編 5

村上春樹
1949-

『1Q84』
2009-2010

原文
『1Q84 BOOK 1〈4月-6月〉』前編・後編 『1Q84 BOOK 2〈7月-9月〉』前編・後編 『1Q84 BOOK 3〈10月-12月〉』前編・後編(新潮文庫、2012年)

①繁体字中国語訳
村上春樹《1Q84 BOOK 1 4月-6月》《1Q84 BOOK 2 7月-9月》《1Q84 BOOK 3 10月-12月》(賴明珠譯,台北:時報出版,2009-2010)

②簡体字中国語訳
村上春树《1Q84 BOOK 1 4月~6月》《1Q84 BOOK 2 7月~9月》《1Q84 BOOK 3 10月~12月》(施小炜译,海口:南海出版公司,2010-2011)

BOOK 1 第4章

 ふかえりは六時二十二分に姿を見せた。彼女はウェイターに案内されてテーブルにやってきて、向かいの席に座った。小振りな両手をテーブルの上に置き、コートも脱がず、じっと天吾の顔を見た。「遅れてすみません」もなければ、「お待ちになりましたか」もなかった。「初めまして」「こんにちは」さえない。唇をまっすぐに結び、天吾の顔を正面から見ているだけだ。見たことのない風景を遠くから眺めるみたいに。たいしたものだ、と天吾は思った。

 ふかえりは小柄で全体的に造りが小さく、写真で見るより更に美しい顔立ちをしていた。彼女の顔の中で何より人目をくのは、その目だった。印象的な、奥行きのある目だ。そのうるおいのある漆黒の一対のひとみで見つめられると、天吾は落ち着かない気持ちになった。彼女はほとんどまばたきもしなかった。呼吸さえしていないみたいに見えた。髪は誰かが定規で一本一本線を引いたようにまっすぐで、眉毛まゆげのかたちが髪型とよくあっていた。そして美しい十代の少女の多くがそうであるように、表情には生活のにおいが欠けていた。またそこには何かしらバランスの悪さも感じられた。瞳の奥行きが、左右でいくぶん違っているからかもしれない。それが見るものに居心地の悪さを感じさせることになる。何を考えているのか、測り知れないところがある。そういう意味では彼女は雑誌のモデルになったり、アイドル歌手になったりする種類の美しい少女ではなかった。しかしそのぶん、彼女には人を挑発し、引き寄せるものがあった。

 天吾は本を閉じてテーブルのわきに置き、背筋を伸ばして姿勢を正し、水を飲んだ。たしかに小松の言うとおりだ。こんな少女が文学賞をとったら、マスコミが放っておかないだろう。ちょっとした騒ぎになるに違いない。そんなことをして、ただで済むものだろうか。

 ウェイターがやってきて、彼女の前に水のグラスとメニューを置いた。それでもふかえりはまだ動かなかった。メニューに手を触れようともせず、ただ天吾の顔を見ていた。天吾は仕方なく「こんにちは」と言った。彼女を前にしていると、自分の図体がますます大きく感じられた。

 ふかえりは挨拶を返すでもなく、そのまま天吾の顔を見つめていた。「あなたのこと知っている」、やがてふかえりは小さな声でそう言った。

「僕を知ってる?」と天吾は言った。

「スウガクをおしえている」

 天吾はうなずいた。「たしかに」

「二カイきいたことがある」

「僕の講義を?」

「そう」

 彼女の話し方にはいくつかの特徴があった。修飾をそぎ落としたセンテンス、アクセントの慢性的な不足、限定された(少なくとも限定されているような印象を相手に与える)ボキャブラリー。小松が言うように、たしかに一風変わっている。

「つまり、うちの予備校の生徒だということ?」と天吾は質問した。

 ふかえりは首を振った。「ききにいっただけ」

「学生証がないと教室に入れないはずだけど」

 ふかえりはただ小さく肩をすぼめた。大人のくせに、何を馬鹿ばかなことを言いだすのかしら、という風に。

「講義はどうだった?」と天吾は尋ねた。再び意味のない質問だ。

 ふかえりは視線をそらさずに水を一口飲んだ。返事はなかった。まあ二回来たのだから、最初のときの印象はそれほど悪くなかったのだろうと天吾は推測した。興味を惹かれなければ一度でやめているはずだ。

「高校三年生なんだね?」と天吾は尋ねた。

「いちおう」

「大学受験は?」

 彼女は首を振った。

 それが「受験の話なんかしたくない」ということなのか、「受験なんかしない」ということなのか、天吾には判断できなかった。おそろしく無口な子だよと小松が電話で言っていたのを思い出した。

 ウェイターがやってきて、注文をとった。ふかえりはまだコートを着たままだった。彼女はサラダとパンをとった。「それだけでいい」と彼女は言って、メニューをウェイターに返した。それからふと思いついたように「白ワインを」と付け加えた。

 若いウェイターは彼女の年齢について何かを言いかけたようだったが、ふかえりにじっと見つめられて顔を赤らめ、そのまま言葉をみ込んだ。たいしたものだ、と天吾はあらためて思った。天吾はシーフードのリングイーネを注文した。それから相手にあわせて、白ワインのグラスをとった。

「センセイでショウセツを書いている」とふかえりは言った。どうやら天吾に向かって質問しているようだった。疑問符をつけずに質問をするのが、彼女の語法の特徴のひとつであるらしい。

「今のところは」と天吾は言った。

「どちらにもみえない」

「そうかもしれない」と天吾は言った。微笑ほほえもうと思ったがうまくできなかった。「教師の資格は持っているし、予備校の講師もやってるけど、正式には先生とは言えないし、小説は書いているけど、活字になったわけじゃないから、まだ小説家でもない」

「なんでもない」

 天吾は肯いた。「そのとおり。今のところ、僕は何ものでもない」

「スウガクがすき」

 天吾は彼女の発言の末尾に疑問符をつけ加えてから、あらためてその質問に返事をした。「好きだよ。昔から好きだったし、今でも好きだ」

「どんなところ」

「数学のどんなところが好きなのか?」と天吾は言葉を補った。「そうだな、数字を前にしていると、とても落ち着いた気持ちになれるんだよ。ものごとが収まるべきところに収まっていくような」

「セキブンのはなしはおもしろかった」

「予備校の僕の講義のこと?」

 ふかえりは肯いた。

「君は数学は好き?」

 ふかえりは短く首を振った。数学は好きではない。

「でも積分の話は面白かったんだ?」と天吾は尋ねた。

 ふかえりはまた小さく肩をすぼめた。「だいじそうにセキブンのことをはなしていた」

「そうかな」と天吾は言った。そんなことを誰かに言われたのは初めてだ。

「だいじなひとのはなしをするみたいだった」と少女は言った。

「数列の講義をするときには、もっと情熱的になれるかもしれない」と天吾は言った。「高校の数学教科の中では、数列が個人的に好きだ」

「スウレツがすき」とふかえりはまた疑問符抜きで尋ねた。

「僕にとってのバッハの平均律みたいなものなんだ。飽きるということがない。常に新しい発見がある」

「ヘイキンリツはしっている」

「バッハは好き?」

 ふかえりは肯いた。「センセイがいつもきいている」

「先生?」と天吾は言った。「それは君の学校の先生?」

 ふかえりは答えなかった。それについて話をするのはまだ早すぎる、という表情を顔に浮かべて天吾を見ていた。

 それから彼女は思い出したようにコートを脱いだ。虫が脱皮するときのようにもぞもぞと体を動かしてそこから抜け出し、畳みもせず隣の椅子いすの上に置いた。コートの下は淡いグリーンの薄手の丸首セーターに、白いジーンズというかっこうだった。装身具はつけていない。化粧もしていない。それでも彼女は目立った。ほっそりとした体つきだったが、そのバランスからすれば胸の大きさはいやでも人目を惹いた。かたちもとても美しい。天吾はそちらに目を向けないように注意しなくてはならなかった。しかしそう思いながら、つい胸に視線がいってしまう。大きな渦巻きの中心につい目がいってしまうのと同じように。

 白ワインのグラスが運ばれてきた。ふかえりはそれを一口飲んだ。そして考え込むようにグラスを眺めてから、テーブルに置いた。天吾はしるしだけ口をつけた。これから大事な話をしなくてはならない。

 ふかえりはまっすぐな黒い髪に手をやり、少しのあいだ指ではさんで いていた。素敵な仕草だった。素敵な指だった。細い指の一本一本がそれぞれの意思と方針を持っているみたいに見えた。そこには何かしら呪術的なものさえ感じられた。

「数学のどんなところが好きか?」、天吾は彼女の指と胸から注意をそらせるために、もう一度声に出して自分に問いかけた。

「数学というのは水の流れのようなものなんだ」と天吾は言った。「こむずかしい理論はもちろんいっぱいあるけど、基本の理屈はとてもシンプルなものだ。水が高いところから低いところに向かって最短距離で流れるのと同じで、数字の流れもひとつしかない。じっと見ていると、その道筋はおのずから見えてくる。君はただじっと見ているだけでいいんだ。何もしなくていい。意識を集中して目をこらしていれば、向こうから全部明らかにしてくれる。そんなに親切に僕を扱ってくれるのは、この広い世の中に数学のほかにはない」

 ふかえりはそれについて、しばらく考えていた。

「どうしてショウセツをかく」と彼女はアクセントを欠いた声で尋ねた。

 天吾は彼女のその質問をより長いセンテンスに転換した。「数学がそんなに楽しければ、なにも苦労して小説を書く必要なんてないじゃないか。ずっと数学だけやっていればいいじゃないか。言いたいのはそういうこと?」

 ふかえりは肯いた。

「そうだな。実際の人生は数学とは違う。そこではものごとは最短距離をとって流れるとは限らない。数学は僕にとって、なんて言えばいいのかな、あまりにも自然すぎるんだ。それは僕にとっては美しい風景みたいなものだ。ただそこにあるものなんだ。何かに置き換える必要すらない。だから数学の中にいると、自分がどんどん透明になっていくような気がすることがある。ときどきそれが怖くなる」

 ふかえりは視線をそらすことなく、天吾の目をまっすぐに見ていた。窓ガラスに顔をつけて空き家の中をのぞくみたいに。

 天吾は言った。「小説を書くとき、僕は言葉を使って僕のまわりにある風景を、僕にとってより自然なものに置き換えていく。つまり再構成する。そうすることで、僕という人間がこの世界に間違いなく存在していることを確かめる。それは数学の世界にいるときとはずいぶん違う作業だ」

「ソンザイしていることをたしかめる」とふかえりは言った。

「まだそれがうまくできているとは言えないけど」と天吾は言った。

 ふかえりは天吾の説明に納得したようには見えなかったが、それ以上何も言わなかった。ワイングラスを口元に運んだだけだ。そしてまるでストローで吸うようにワインを小さく音もなくすすった。

「僕に言わせれば、君だって結果的にはそれと同じことをしている。君が目にした風景を、君の言葉に置き換えて再構成している。そして自分という人間の存在位置をたしかめている」と天吾は言った。

 ふかえりはワイングラスを持った手を止めて、それについてしばらく考えた。しかしやはり意見は言わなかった。

「そしてそのプロセスをかたちにして残した。作品として」と天吾は言った。「もしその作品が多くの人々の同意と共感を喚起すれば、それは客観的価値を持つ文学作品になる」

 ふかえりはきっぱりと首を振った。「かたちにはキョウミはない」

「かたちには興味がない」と天吾は反復した。

「かたちにイミはない」(BOOK 1 前編 pp. 105-114)

①賴明珠譯

  深繪里六點二十二分出現了。她由服務生領著走到桌前,在對面的位子坐下。把小巧的雙手放在桌上,外套也沒脫,就一直看著天吾的臉。既沒說「對不起我來晚了」,也沒說「讓你久等了」,連「很高興認識你」甚至「你好」都沒有。嘴唇緊緊閉成一直線,只從正面看著天吾的臉而已。好像從遠處眺望沒見過的風景那樣。真不簡單,天吾想。

  深繪里個子小,整體感覺都小,容貌比照片看到的更美。她臉上最吸引人的,還是那對眼睛。令人印象深刻,有深度的眼睛。被她那一對潤澤漆黑的眼珠注視之下,天吾心情開始不太鎮定。她幾乎眨都不眨一下眼。看起來連呼吸都沒有似的。頭髮好像有人用尺一根一根畫線那樣筆直,眉毛的形狀和髮型相當搭配。而且像許多美麗的十幾歲少女那樣,表情中缺乏生活氣味。此外她身上還有某種不平衡的感覺。或許因為眼珠深度左右有點不同的關係。讓看的人感覺有點不舒服。她在想什麼,有令人難以推測的地方。在這層意義上她並不屬於適合當雜誌模特兒,或偶像歌手的那種美少女。但也因此,她具有挑起對方注意,吸引人想接近的東西。

  天吾把書闔上放到桌子旁邊,伸直背坐正姿勢,喝了水。確實正如小松說的。這種少女如果獲得文學獎,媒體大概不會放過。一定會引起不小的騷動。這麼做,真的不會出事嗎?

  服務生走過來,在她面前放下水杯和菜單。這樣,深繪里還是沒動。手沒碰菜單,只是看著天吾的臉。天吾沒辦法只好說:「妳好。」坐在她前面,感覺自己的體格更高大了。

  深繪里也沒回答招呼,繼續凝視著天吾的臉。「我知道你。」

  深繪里終於小聲這樣說。

  「知道我?」天吾說。

  「你在教ㄕㄨˋ ㄒㄩㄝˊ。」

  天吾點點頭。「沒錯。」

  「我聽過兩次。」

  「我的課?」

  「對。」

  她說話的方式有幾個特徵。去除修飾的句子,慢性的缺乏輕重音,詞彙有限(至少給對方有限的印象)。就像小松說的那樣,確實有點怪。

  「也就是說,妳是我們補習班的學生?」天吾問。

  深繪里搖搖頭。「只是去旁聽。」

  「沒有學生證應該不能進教室。」

  深繪里只輕微聳一下肩。好像在說,大人了還說這種傻話似的。

  「上課怎麼樣?」天吾問。又再問了沒意義的問題。

  深繪里視線沒有轉開地喝一口水。沒有回答。既然來兩次,第一次的印象大概沒那麼差吧,天吾推測。如果沒有引起興趣,應該一次就不再來了。

  「妳是高中三年級吧?」天吾問。

  「算是。」

  「準備考大學?」

  她搖搖頭。

  那是表示「不想談考試的話題」呢,還是表示「不想考」呢?天吾無法判斷。他想起小松在電話上說過的,可能是個話非常少的孩子。

  服務生走過來,聽他們點餐。深緻里巡守孝外套。她點了沙拉和麵包。這樣就好。」她說,眾還給服務生。然後忽然想到似地補充道:「白葡萄酒。」

  年輕的服務生好像要問她年齡似的,被深繪里凝視之下臉漸漸紅了起來,就那樣把話吞回去。不簡單,天吾重新感覺到。天吾點了義大利海鮮寬扁麵。然後配合對方,也點了一杯白葡萄酒。

  「當ㄌㄠˇ ㄕ又在寫ㄒㄧㄠˇ ㄕㄨㄛ。」深繪里說。好像是在對天吾發問的樣子。不帶問號的問法,好像是她語法的特徵之一。

  「現在是。」天吾說。

  「兩種都看不出。」

  「也許是。」天吾說。想微笑但不太順利。「我有教師資格,也在補習班教書,但算不上正式的老師,雖然在寫小說,但也沒有印出來,所以也還算不上小說家。」

  「什麼都不是。」

  天吾點點頭。「沒錯。現在,我什麼都不是。」

  「喜歡ㄕㄨˋ ㄒㄩㄝˊ。」

  天吾在她的發言末尾加上問號後,才重新回答她的問題。

  「喜歡。從以前就喜歡,現在也還喜歡。」

  「什麼地方。」

  「你是說喜歡數學的什麼地方嗎?」天吾補充她的話。「這個嘛,面對數字的時候,心情會非常安定喚。好像東西都各自歸位到該在的位置。」

  「ㄐㄧ ㄈㄣ的課很有趣。」

  「妳是說我在補習班講的課?」

  深繪里點頭。

  「妳也喜歡數學?」

  深繪里短短地搖頭。不喜歡數學。

  「可是覺得積分的課很有趣?」天吾問。

  深繪里又再微微聳肩。「好像很重要似地講著山一二与的事。」

  「是嗎?」天吾說。這種事情第一次有人提起。

  「好像在說重要的人的事情。」少女說。

  「在講數列的課時,可能可以更熱情。」天吾說。「在高中的數學課裡,我個人還滿喜歡數列的。」

  「喜歡ㄕㄨˋ ㄌㄧㄝˋ。」深繪里又沒帶問號地問。

  「那對我來說就像巴哈的平均律一樣的東西。不會膩。經常有新發現。」

  「我知道ㄆㄧㄥˊ ㄐㄩㄣ ㄌㄩˋ。」

  「妳喜歡巴哈?」

  深繪里點頭。「ㄌㄠˇ ㄕ經常在聽。」

  「老師?」天吾說。「是妳學校的老師?」

  深繪里沒回答。臉上露出要談這個還太早的表情看著天吾。

  然後她好像想起來似地脫下外套。像昆蟲蛻皮時那樣扭動身體把那褪下,也不折疊就放在鄰座的椅子上。外套下穿的是淺綠色圓領薄毛衣,白色牛仔褲。沒有佩戴飾品。也沒有化妝。雖然如此她還是很亮眼。身材雖然苗條,但胸部以比例來說卻大得有點引人注目。形狀也非常美。天吾不得不小心眼光別轉向那邊。雖然一面這樣想,但視線還是難免投向胸部。就像眼光不由自主地轉向大漩渦的中心一樣。

  白葡萄酒杯送來了。深繪里喝了一口。像落入沉思般望著玻璃杯,然後把杯子放在桌上。天吾只意思一下喝一口。接下來必須談重要事情了。

  深繪里伸手摸一下筆直的黑頭髮,用手指梳過幾縷髮絲之間。姿勢優美。手指漂亮。看起來纖細的手指好像一根一根都擁有各自的意志和方針似的。甚至令人感覺到其中含有某種符咒性的東西。

  「喜歡數學的什麼地方嗎?」天吾為了把注意力從她的手指和胸部移開,再一次出聲問自己。

  「所謂數學這東西就像流水一樣。」天吾說。「雖然也有很多有點難的理論,不過基本道理卻非常簡單。就像水從高處往低處以最短距離流下一樣,數字的流向也只有一個。凝神注視的話,自然可以看出那水道來。妳只要一直注意看就行了。什麼都不必做。只要集中注意力盯著看,對方就會明明白白地全部顯示出來。在這廣大的世界,只有數學對我這樣親切。」

  深繪里對這個想了一想。

  「為什麼寫ㄒㄧㄠˇ ㄕㄨㄛ。」她以缺乏重音的聲音問。

  天吾把她的這個問題轉換成比較長的句子。「如果數學這麼輕鬆的話,就沒有必要辛苦地去寫小說吧。一直只教數學不好嗎?妳想說的是這個意思嗎?」

  深繪里點頭。

  「這個嘛。實際的人生和數學不同。在那裡事情不一定會以最短距離流動。數學對我來說,該怎麼說才好呢?未免太過於自然了。那對我來說,就像美麗的風景一樣。只是存在那裡的東西。甚至不必跟什麼調換。所以在數學裡面時,有時覺得自己好像逐漸變透明了似的。有時會覺得很可怕。」

  深繪里目不轉睛地,筆直看著天吾的眼睛。就像把臉貼在玻璃窗上探視著空屋裡面那樣。

  天吾說:「寫小說時,我用語言把我周圍的風景,轉換成對我比較自然的樣子。也就是重新改造。藉由這樣做,來確認我這個人確實是存在這個世界的。這是和在數學的世界時相當不同的工作。」

  「確認ㄘㄨㄣˊ ㄗㄞˋ這件事。」深繪里說。

  「不過我還沒做得很好。」天吾說。

  看起來深繪里雖然並沒有認同天吾的說明,但已經不再多說。只把葡萄酒送到嘴邊。然後就像用吸管吸似的不出聲地小口吸著。

  「我覺得,結果妳也在做一樣的事。妳把眼睛見到的風景,轉換成妳的語言重新改造。然後確認著自己這個人的存在位置。」天吾說。

  深繪里停下拿著葡萄酒杯的手,想了一下。但還是沒有說出意見。

  「而且把那過程以形式留下來。以作品的形式。」天吾說。「如果那作品喚起許多人的同意和共鳴的話,那就成為擁有客觀價值的文學作品。」

  深繪里斷然搖頭。「我對形式沒有ㄒㄧㄥ ㄑㄩˋ。」

  「對形式沒有興趣。」天吾重複道。

  「形式沒有ㄧˋ ㄧˋ。」(BOOK 1 第58~64頁)

②施小炜译

  深绘里在六点二十二分露面了。她由服务生领着来到桌边,在对面的座位上坐下,把小巧的双手放在桌面上,大衣也不脱,直勾勾地注视着天吾的脸。既不说“来晚了,对不起”,也不问“您等了很久吗”,甚至连一句“幸会”或“你好”都没有。只是把嘴唇抿成一条线,从正面直视着天吾。就像远远地望着从未见过的风景。这人真了不起呀。天吾暗想。

  深绘里身材娇小玲珑,容貌比照片中更漂亮些。在她的脸庞上,最引人注目的是那双眼睛。令人印象深刻的、深邃的眼睛。在那对水灵漆黑的眼珠的凝视下,天吾有点坐立不安。她的眼睛几乎一眨不眨。望上去,她甚至似乎不呼吸。头发笔直,仿佛是拿着直尺一根根画出来的。眉毛的形状和发型十分相配。和许多十几岁的美少女一样,表情中缺乏生活的气息,从中还能感觉到某种失衡。或许是左右两眼深邃的程度有所差异的缘故。这让看到她的人心情不快。她身上有种深不可测的东西,揣度不出她在思考什么。在这层意义上,她不是那种可以成为杂志模特或偶像歌手的美少女。但正因如此,她身上存在着挑逗与吸引别人的东西。

  天吾合上书,放在桌子的一边,挺直胸膛端正姿势,喝了一口水。确如小松所言,这样一位少女一旦获了文学奖,传媒绝不会轻易放过,肯定会引发一场不小的骚动。闹出这样的局面,怎么可能安然脱身?

  服务生走来,在她面前放下一杯冰水和菜单。但深绘里依旧一动不动,碰也不碰菜单,只是盯着天吾看。天吾无奈,只得说:“你好。”面对着她,更觉得自己人高马大。

  深绘里并不答话,只是凝视着天吾。“我知道你。”过了一会儿,她小声说。

  “你知道我?”天吾说。

  “你教数学。”

  天吾点点头。“没错。”

  “我听过两次。”

  “是听我的课吗?”

  “对。”

  她的说话方式有几个特征:去掉了修饰的句子。微微的缺乏语调。有限(至少是让对方觉得有限)的词汇。确如小松所言,有点古怪。

  “这么说,你是我们补习学校的学生?”天吾问。

  深绘里摇摇头。“只是去听听。”

  “没有学生证应该进不了教室呀。”

  深绘里微微耸了耸肩。好像在说:一个大人,怎么会说出这种蠢话来!

  “我的课怎样?”天吾问。又是个毫无意义的问题。

  深绘里并未将视线移开,喝了一口水,没有回答。但既然来过两次,恐怕一开始的印象还不算糟糕,天吾推测。如果没有勾起兴趣,肯定听过一次就不会再来了。

  “你是高三的?”天吾问。

  “算是吧。”

  “考大学吗?”

  她摇摇头。

  那意思究竟是“不想谈论考大学的事”呢,还是“我可不考大学”,天吾不清楚。他想起了小松在电话里说的:这孩子非常少言寡语。

  服务生过来询问点什么东西。深绘里依然穿着大衣。她点了沙拉和面包。“只要这些就行。”她说,把菜单还给了服务生。然后像忽然想起来了,加了一句:“一杯白葡萄酒。”

  年轻的服务生似乎想打听深绘里的年龄,却在她的凝视下涨红了脸,话未出口又吞了回去。这人真了不起呀。天吾再次暗暗感叹。他点了海鲜通心粉。也点了一杯白葡萄酒,表示奉陪。

  “做老师,写小说。”深绘里说。像在向天吾提问。提问时不加问号,好像也是她说话的特征。

  “目前是这样。”天吾说。

  “两个都不像。”

  “大概是吧。”天吾答道。想微笑,但没笑好。“有教师资格证书,也在补习学校当老师,但不算正式教师。小说是在写,但没有发表过,所以也不是小说家。”

  “什么都不是。”

  天吾点点头。“你说得对。目前我什么都不是。”

  “喜欢数学。”

  天吾在她的话尾加上一个问号,再回答这个问题。“喜欢。从前就喜欢,现在仍然喜欢。”

  “什么地方。”

  “是喜欢数学的什么地方吗?”天吾替她添上词语,“这个嘛,面对数字的时候,我就能心平气和。就像一切事物都变得井然有序。”

  “积分课很有意思。”

  “是说我在补习学校讲的课吗?”

  深绘里点点头。

  “你喜欢数学?”

  深绘里简短地摇摇头:不喜欢。

  “但积分课很有意思,是吗?”天吾问。

  深绘里再次微微耸肩。“你很珍惜地讲积分课。”

  “哦。”天吾说。头一次有人这样对他说。

  “像在讲自己很珍惜的人。”少女说。

  “如果是数列课的话,没准我会讲得更投入。”天吾说,“在高中的数学课程中,我最喜欢数列。”

  “喜欢数列。”深绘里照例抽去了问号,问。

  “对我来说,这就像巴赫的平均律:永远不会令人厌倦,时常会有新发现。”

  “平均律我知道。”

  “你喜欢巴赫?”

  深绘里点头。“老师总是在听。”

  “老师?”天吾问,“你学校的老师?”

  深绘里没有回答。谈论这个话题,现在为时尚早。她脸上浮现出这样的表情,看着天吾。

  然后,她像忽然想起来似的,脱去了大衣。像昆虫蜕皮一般,蠕动着身体从中剥离出来,叠也不叠就放在邻座的椅子上。大衣底下是浅绿色圆领薄毛衣,下穿白色牛仔裤。没有佩戴首饰,也没有化妆。但她还是十分引人注目。身材苗条纤细,但照这个比例,胸脯则大得让人不禁想偷看,形状也很漂亮。天吾不得不留神别把目光投向那里。尽管这样想,视线却不知不觉溜了过去。就像目光被巨大的旋涡中心吸引过去一样。

  白葡萄酒送了上来。深绘里喝了一口,然后陷入沉思似的凝视着酒杯,把它放到桌子上。天吾只抿了一小口,意思一下。接下去还得讨论重大的事情呢。

  深绘里把手伸向笔直的黑发,用手指梳理了一会儿头发。优美的动作,优美的手指。似乎每一根纤细的手指都拥有自身的意志与方针。甚至能从中感受到某种咒术般的东西。

  “喜欢数学的什么地方?”天吾为了把注意力从她的手指和胸脯移开,再次出声询问自己。

  “数学这东西就像流水一样。”天吾接着说,“当然有许多艰深的理论,但基本原理极其简单。水会以最短距离从高处流向低处,同样,数字的流向也只有一个。只要注意观察,那条线路就会自己浮现出来。你只要注意观察就行,别的什么都不必做。只要聚精会神地凝视,它就会主动揭开谜底。对我如此亲切友善的,在这广漠的世界上只有数学。”

  深绘里就此思索了片刻。

  “为什么写小说。”她用缺乏语调的声音问。

  天吾把她的疑问转换成较长的句子:“既然数学那么有趣,根本不必劳神费力地写小说,一直研究数学不就得了?你想说的是这个吗?”

  深绘里点点头。

  “那倒是。现实的人生不同于数学。在人生中,事物未必采取最短距离向下流动。数学对我来说,该怎么说呢,实在太自然了。就像美丽的风景。它就在那里,甚至用不着把它转换成别的什么。所以当我置身于数学中,有时就会觉得自己渐渐变得透明起来。这常常让人恐惧。”

  深绘里目不转睛,笔直地凝视着天吾的眼睛。就像把脸紧贴在窗玻璃上,窥视无人的房间。

  天吾说:“写小说时,我使用语言,把周围的风景转换成对我来说更为自然的东西。就是重新架构。通过这样做,来确认我这个人确实存在于这个世界上。这种做法,和置身于数学世界时大不相同。”

  “确认自己的存在。”深绘里说。

  “还不能说我做到了。”天吾说。

  深绘里似乎没有领会天吾的说明,但没多言,只是把葡萄酒杯送到唇边,啜了一口,像用吸管喝一样,不发出一丝声音。

  “如果让我说,从结果上看,其实你也在做同样的事情。你把用眼睛看到的事物,转换成自己的语言,重新架构。并借此确认自己的存在位置。”天吾说。

  深绘里端着酒杯的手静止不动,思索片刻,仍然没发表见解。

  “并赋予这个过程具体的形式,把它作为作品留存下来。”天吾说,“假如这部作品唤起了众多读者的同意与共鸣,就将成为具有客观价值的文学作品。”

  深绘里决然地摇头。“对形式不感兴趣。”

  “对形式不感兴趣。”天吾重复道。

  “形式没有意义。”(BOOK 1 第52~58页)

BOOK 1 第17章

 翌日の昼過ぎに広尾のスポーツ・クラブに行って、マーシャル・アーツのクラスをふたつ担当し、個人レッスンをひとつ行った。クラブのフロントに立ち寄ると、珍しく麻布の老婦人からのメッセージが届いていた。手のいたときに連絡をいただきたい、と書かれていた。

 いつものように電話にはタマルが出た。

 よかったら明日、こちらにお越し願えまいか。いつものプログラムをお願いしたい。そのあと軽い夕食を御一緒できればということだ、とタマルは言った。

 四時過ぎにはそちらにうかがえる、夕食は喜んで御一緒する、と青豆は言った。

「けっこう」と相手は言った。「それでは明日の四時過ぎに」

「ねえ、タマルさん、最近月を見たことはある?」と青豆は尋ねた。

「月?」とタマルは言った。「空に浮かんでいる月のことかな」

「そう」

「とくに意識して見たという記憶はここのところない。月がどうかしたのか?」

「どうもしないけど」と青豆は言った。「じゃあ、明日の四時過ぎに」

 タマルは少し間を置いて電話を切った。

 

 その夜も月は二つだった。どちらも満月から二日ぶん欠けている。青豆はブランデーのグラスを手に、どうしても解けないパズルを眺めるみたいに、その大小一対の月を長いあいだ眺めていた。見れば見るほど、その取り合わせはますますなぞに満ちたものに思えた。もしできることなら、彼女は月に向かって問いただしてみたかった。どういう経緯があって、突然あなたにその緑色の小さなお供がつくことになったのかと。でももちろん月は返事をしてはくれない。

 月は誰よりも長く、地球の姿を間近に眺めてきた。おそらくはこの地上で起こった現象や、おこなわれた行為のすべてを目にしてきたはずだ。しかし月は黙して語らない。あくまで冷ややかに、的確に、重い過去を抱え込んでいるだけだ。そこには空気もなく、風もない。真空は記憶を無傷で保存するのに適している。誰にもそんな月の心をほぐすことはできない。青豆は月に向かってグラスをかかげた。

「最近誰かと抱き合って寝たことはある?」と青豆は月に向かって尋ねた。

 月は返事をしなかった。

「友だちはいる?」と青豆は尋ねた。

 月は返事をしなかった。

「そうやってクールに生きていくことにときどき疲れない?」

 月は返事をしなかった。

 

 いつものようにタマルが玄関で青豆を迎えた。

「月を見たよ、ゆうべ」とタマルは最初に言った。

「そう?」と青豆は言った。

「あんたに言われたから気になってね。しかし久しぶりに見ると、月はいいものだ。穏やかな気持ちになれる」

「恋人と一緒に見たの?」

「そういうことだ」とタマルは言った。そして鼻のわきに指をやった。「それで月がどうかしたのか?」

「どうもしない」と青豆は言った。そして言葉を選んだ。「ただ最近、どうしてか月のことが気にかかるの」

「理由もなく?」

「とくに理由もなく」と青豆は答えた。

 タマルは黙ってうなずいた。彼は何かを推し測っているようだった。この男は理由を欠いたものごとを信用しないのだ。しかしそれ以上は追及せず、いつものように前に立って青豆をサンルームに案内した。老婦人はトレーニング用のジャージの上下に身を包み、読書用の椅子に座り、ジョン・ダウランドの器楽合奏曲『ラクリメ』を聴きながら本を読んでいた。彼女の愛好する曲だった。青豆も何度も聴かされて、そのメロディーを覚えていた。

「昨日の今日でごめんなさいね」と老婦人は言った。「もっと早くアポイントメントを入れられるとよかったんだけど、ちょうどこの時間がぽっかり空いたものだから」

「私のことなら気になさらないでください」と青豆は言った。

 タマルがハーブティーを入れたポットを、トレイに載せて持ってきた。そして二つの優雅なカップにお茶を注いだ。タマルは部屋を出て、ドアを閉め、老婦人と青豆はダウランドの音楽を聴き、燃え立つように咲いた庭のツツジの花を眺めながら、静かにそのお茶を飲んだ。いつ来ても、ここは別の世界のようだと青豆は思った。空気に重みがある。そして時間が特別な流れ方をしている。

「この音楽を聴いているとときどき、時間というものについて、不思議な感慨に打たれることがあります」と老婦人は青豆の心理を読んだように言った。「四百年前の人々が、今私たちが聴いているのと同じ音楽を聴いていたということにです。そういう風に考えると、なんだか妙な気がしませんか?」

「そうですね」と青豆は言った。「でもそれを言えば、四百年前の人たちも、私たちと同じ月を見ていました」

 老婦人は少し驚いたように青豆を見た。それから肯いた。「たしかにそうね。あなたの言うとおりだわ。そう考えれば、四世紀という時を隔てて同じ音楽を聴いていることに、とくに不思議はないのかもしれない」

ほとんど同じ月と言うべきかもしれませんが」

 青豆はそう言って老婦人の顔を見た。しかし彼女の発言は老婦人に何の感興ももたらさなかったようだった。

「このコンパクト・ディスクの演奏も古楽器演奏です」と老婦人は言った。「当時と同じ楽器を使って、当時の楽譜通りに演奏されています。つまり音楽の響きは当時のものとおおむね同じだということです。月と同じように」

 青豆は言った。「ただものが同じでも、人々の受け取り方は今とはずいぶん違っていたかもしれません。当時の夜のやみはもっと深く、暗かったでしょうし、月はそのぶんもっと明るく大きく輝いていたことでしょう。そして人々は言うまでもなく、レコードやテープやコンパクト・ディスクをもっていませんでした。日常的にいつでも好きなときに、音楽がこのようなまともなかたちで聴けるという状況にはありませんでした。それはあくまでとくべつなものでした」

「そのとおりね」と老婦人は認めた。「私たちはこのように便利な世の中に住んでいるから、そのぶん感受性は鈍くなっているでしょうね。空に浮かんだ月は同じでも、私たちはあるいは別のものを見ているのかもしれない。四世紀前には、私たちはもっと自然に近い豊かな魂を持っていたのかもしれない」

「しかしそこは残酷な世界でした。子供たちの半分以上は、慢性的な疫病えきびようや栄養不足で成長する前に命を落としました。ポリオや結核や天然痘や麻疹はしかで人はあっけなく死んでいきました。一般庶民のあいだでは、四十歳を超えた人はそんなに多くはいなかったはずです。女はたくさんの子供を産み、三十代になれば歯も抜け落ちて、おばあさんのようになっていました。人々は生き延びるために、しばしば暴力に頼らなくてはならなかった。子供たちは小さいときから、骨が変形してしまうくらいの重い労働をさせられ、少女売春は日常的なことでした。あるいは少年売春も。多くの人々は感受性や魂の豊かさとは無縁の世界で最低限の暮らしを送っていました。都市の通りは身体からだの不自由な人々と乞食こじきと犯罪者とで満ちていました。感慨をもって月を眺めたり、シェイクスピアの芝居に感心したり、ダウランドの美しい音楽に耳を澄ますことのできるのは、おそらくほんの一部の人だけだったでしょう」

 老婦人は微笑ほほえんだ。「あなたはずいぶん興味深い人ね」

 青豆は言った。「私はごく普通の人間です。ただ本を読むのが好きなだけです。主に歴史についての本ですが」

「私も歴史の本を読むのが好きです。歴史の本が教えてくれるのは、私たちは昔も今も基本的に同じだという事実です。服装や生活様式にいくらかの違いはあっても、私たちが考えることややっていることにそれほどの変わりはありません。人間というものは結局のところ、遺伝子にとってのただの乗り物キヤリアであり、通り道に過ぎないのです。彼らは馬を乗りつぶしていくように、世代から世代へと私たちを乗り継いでいきます。そして遺伝子は何が善で何が悪かなんてことは考えません。私たちが幸福になろうが不幸になろうが、彼らの知ったことではありません。私たちはただの手段に過ぎないわけですから。彼らが考慮するのは、何が自分たちにとっていちばん効率的かということだけです」

「それにもかかわらず、私たちは何が善であり何が悪であるかということについて考えないわけにはいかない。そういうことですか?」

 老婦人は肯いた。「そのとおりです。人間はそれについて考えないわけにはいかない。しかし私たちの生き方の根本を支配しているのは遺伝子です。当然のことながら、そこに矛盾が生じることになります」、彼女はそう言って微笑んだ。

 歴史についての会話はそこで終わった。二人は残っていたハーブティーを飲み、マーシャル・アーツの実習に移った。(BOOK 1 後編 pp. 139-146)

①賴明珠譯

  翌日中午過後到廣尾的健身俱樂部去,上了兩堂武術課,一堂個別指導。走近俱樂部櫃台時,很稀奇地有老婦人託的留言。寫著,有空時請聯絡。

  像平常那樣,電話是Tamaru接的。

  如果方便的話,明天可以請妳過來嗎?想請妳做每次的流程。然後如果可能就一起用個簡單的晚餐。Tamaru說。

  四點多可以到那邊,晚餐樂意奉陪,青豆說。

  「好的。」對方說。「那麼明天四點多見。」

  「嘿,Tamanu最近有沒有看月亮?」青豆問。

  「月亮?」Tamaru說。「天上的月亮嗎?」

  「對。」

  「最近並沒有刻意看過的記憶。月亮怎麼了嗎?」

  「沒怎麼樣。」青豆說。「那麼,明天四點多。」

  Tamaru稍微隔一下後掛上電話。

 

  那天晚上月亮也有兩個。兩個形狀都是滿月後兩天的缺法。青豆手上拿著白蘭地的玻璃杯,像眺望怎麼也拼不對的拼圖般,久久眺望著那大小一對的月亮。越看越覺得,那組合更充滿了謎。如果可能,她真想朝月亮發問。到底因為什麼,妳突然有了那個綠色小跟班?不過月亮當然不會回答。

  月亮比誰都長久地,就近眺望著地球的姿態。想必這個地球上所發生的任何現象,所進行的任何行為都看在眼裡。然而月亮卻沉默不語。始終冷冷地、確實地抱著沉重的過去而已。那裡既沒有空氣,也沒有風。真空適合保存記憶,不會造成損傷。誰也無法解開那樣的月亮的心。青豆朝月亮舉起玻璃杯。

  「最近有沒有和誰擁抱著睡覺?」青豆向月亮發問。

  月亮沒回答。

  「有朋友嗎?」青豆問。

  月亮沒回答。

  「這樣冷靜地活著有時候不覺得累嗎?」

  月亮沒回答。

 

  Tamaru像平常那樣在玄關迎接青豆。

  「我看了月亮喚,昨天晚上。」Tamaru一開始就說。

  「是嗎?」青豆說。

  「被妳一說掛心起來呀。不過好久沒看了,月亮看起來真好。看了令人心情安穩。」

  「跟情人一起看嗎?」

  「是啊。」Tamaru說。然後手指摸一下鼻子旁邊。「那麼月亮怎麼樣了嗎?」

  「沒怎麼樣。」青豆說。然後選擇用語。「只是最近,不知道為什麼很關心月亮。」

  「沒有理由?」

  「沒什麼理由。」青豆回答。

  Tamaru默默點頭。他好像在推測著什麼。這個男人不相信沒有理由的事情。不過沒有再深入追究,就像平常那樣在前面領著青豆到陽光房去。老婦人身上穿著上下一套的節織運動服,坐在讀書用的椅子上,一面聽著英國作曲家兼魯特琴演奏家約翰.道蘭(John Dowland)的器樂合奏曲“Lachrimae”一面讀書。這是她喜愛的曲子。青豆也聽了幾次,記得那旋律了。

  「昨天才約今天,對不起喔。」老婦人說。「應該更早預約的,但因為這個時間剛好空下來。」

  「請不用跟我客氣。」青豆說。

  Tamaru把泡了花草茶的茶壺,放在托盤上送來。然後往兩個優雅的茶杯注入茶。Tamaru走出房間,關上門,老婦人和青豆聽著道蘭的音樂,一面眺望著燃燒般怒放的庭園裡的杜鵑花,一面安静地喝著茶。青豆每次來,都覺得這裡像另一個世界。空氣中有重量。而且時間有特別的流法。

  「聽著這音樂時,常常會對所謂時間這東西,有不可思議的感慨。」老婦人好像讀出青豆的心理般說。「四百年前的人,竟然也聽著和我們現在聽的同樣音樂。這樣想時,妳不覺得很奇妙嗎?」

  「是啊。」青豆說。「不過說到這個,四百年前的人,也和我們看著同樣的月亮。」

  老婦人好像有點驚訝地看青豆。然後點頭。「確實是這樣。正如妳說的那樣。這樣想起來,隔著四世紀的時間聽同樣音樂這回事,或許也沒什麼特別不可思議了。」

  「也許應該說幾乎同一個月亮。」

  青豆這樣說著,看看老婦人的臉。但她的話似乎沒有給老婦人帶來任何感覺。

  「這片光碟的演奏也是古樂器演奏的。」老婦人說。「用和當時同樣的樂器,照當時的樂譜演奏的。也就是音樂的響法大致和當時相同。就像月亮一樣。」

  青豆說:「只是東西雖然一樣,人們的感受可能和現在相當不同也不一定。當時的夜晚黑暗可能更深、更暗,因此月亮的光輝可能顯得更亮、更大。而人們不用說,沒有唱片、錄音帶和光碟。日常生活中並不能經常擁有像這樣,隨時喜歡聽,就能以完整形式聽到音樂的狀況。那畢竟還是很特別的東西。」

  「沒錯。」老婦人承認。「因為我們是住在這樣方便的世界,因此感受性也相對鈍化了。天空浮著的月亮就算相同,我們或許看到的是不同的東西。四世紀前,我們可能擁有更接近自然的蝴豆富靈魂。」

  「不過當時卻是個殘酷的世界。一半以上的小孩,因為慢性疾病和營養不良,還來不及長大就天折了。人們因為小兒麻痺、結核病、天花、麻疹,轉眼就喪失性命。一般庶民間,超過四十歲的人應該不太多。女人生很多小孩,三十幾歲就開始掉牙齒,老得像老太婆。人們為了生存,往往不得不依靠暴力。小孩從小開始,就必須從事骨頭都會變形的重勞動,少女賣春是家常便飯。或也有少年賣春。很多人在和感性和靈性的富足無緣的世界過著最低限度的生活。城市的道路上充滿了身體殘障的人、乞丐和罪犯。能懷著感慨眺望月亮,能被莎士比亞的戲劇感動,能聆聽道蘭的美麗音樂的,恐怕只有極少數人而已。」

  老婦人微笑。「妳是個很有趣的人。」青豆說:「我是個極普通的人。只是喜歡讀書而已。主要是關於歷史方面的書。」

  「我也喜歡讀歷史書。歷史書教給我們的,是以前和現在基本上是一樣的這個事實。就算服裝和生活樣式多少不同,我們所想的事情和所做的事情並沒有什麼改變。人類這東西,終究對遺傳因子來說只是承載物,是通道而已。它們就像一直換馬騎一樣,把我們一代又一代地騎下去。而且遺傳因子並不考慮什麼是善什麼是惡。不管我們將幸福或不幸,他們都不管。因為我們只是手段而已。他們所考慮的,只有什麼是對他們自己最有效率的而已。」

  「雖然如此,我們還是不可能不思考什麼是善什麼是惡。對嗎?」

  老婦人點頭。「沒錯。人不可能不思考這個問題。不過支配我們的生活方式的根本,是遺傳因子。當然,其中就產生矛盾了。」她這樣說著微笑起來。

  關於歷史的談話就到此結束。兩個人喝了剩下的香草茶,開始轉而練習武術。(BOOK 1 第288~292頁)

②施小炜译

  第二天正午过后,她去了广尾的体育俱乐部,上了两节武术课、一节个人训练课。顺便去前台转了转,看见麻布的老夫人少见地留了口信。内容是:有空时请与我联系。

  像平时一样,接电话的是Tamaru。

  如果方便,夫人想请你明天光临,教授例行课程,晚上与你共用便餐。Tamaru说。

  四点后拜访尊府,很荣幸能与夫人共进晚餐。青豆答道。

  “很好。”对方说,“那么明天四点后见。”

  “哎,Tamaru先生。你最近有没有看过月亮?”青豆问。

  “月亮?”Tamaru反问道,“你是说浮在天上的月亮?”

  “对。”

  “刻意看月亮,最近一段时间倒没有过。月亮怎么啦?”

  “也没怎么。”青豆说,“那么,明天四点后见。”

  Tamaru稍过了一会儿,才把电话放下。

 

  这天晚上月亮依旧是两个。每一个都仿佛离满月还差两天。青豆端着白兰地酒杯,就像端详着怎么也解不开的字谜,久久地望着那一对一大一小的月亮。越看越觉得这对组合充满了谜。如果可能,她真想向月亮问个明白。究竟发生了什么?突然,你身边就跟上了那个绿色的小伙伴。可惜,月亮自然不理会。

  月亮比谁都更为久远地,始终遥遥地凝望着地球。恐怕它曾把地球上发生过的一切现象、一切行为都看在眼中。但月亮沉默不语,始终冷冷地、牢牢地把沉重的过去深埋心底。那里没有空气,也没有风。真空最适合完好无损地保存记忆。谁都不可能去宽慰月亮的心。青豆对着月亮举起了酒杯。

  “最近你有没有和谁相拥而眠?”青豆问月亮。

  月亮没有回答。

  “你有朋友吗?”

  月亮没有回答。

  “你活得这么酷,会不会偶尔感到疲倦呢?”

  月亮没有回答。

 

  和往常一样,Tamaru在玄关迎接她。

  “我看过月亮了。昨晚。”Tamaru张口就说。

  “是吗?”青豆回应道。

  “让你一说,未免有些放心不下。不过好久没看了,昨天一看,月亮还真是个好东西。让人心平气和。”

  “是和恋人一起看的吗?”

  “对呀。”Tamaru回答,随后把手指放在鼻翼旁,“嗯,月亮怎么了?”

  “也没怎么。”青豆说,她斟词酌句,“只是最近不知怎么回事,心里总惦记着月亮。”

  “没有理由?”

  “没有特别的理由。”青豆答道。

  Tamaru默默地点头。他似乎在揣度着什么。这人不相信缺乏理由的事,却没有深究,而是照老规矩在前头带路,把青豆领进日光房。老夫人身穿一套训练用的运动服,正坐在读书椅上,一边听着约翰·道兰的弦乐合奏曲《七滴泪》,这是她喜欢的乐曲,青豆也听过许多次,熟悉那旋律。

  “今天请你来,却到昨天才联系,对不起。”老夫人说,“要是能早一点约你就好了,没想到这段时间刚好空了出来。”

  “我这边您不必介意。”青豆说。

  Tamaru端着托盘走进来,托盘上放着茶壶,沏着香草茶。他把茶倒进两只雅致的茶杯里,走出房间,关上门。老夫人和青豆一面听着道兰的音乐,一面眺望着庭院里鲜红欲燃的杜鹃花,静静地饮茶。无论什么时候来,这里都像是世外桃源。青豆想。空气白有分量,时间自有独特的流逝方式。

  “听着这支乐曲,我常常会对时间这东西产生许多奇怪的感慨。”老夫人仿佛猜透了青豆的心思,说,“四百年前的人听到的音乐,竟然和我们此刻听的是完全相同的东西。想到这些,你不觉得很奇妙吗?”

  “是啊。”青豆答道,“要是这么说,那四百年前的人们看到的月亮,也和我们今天看到的是相同的东西。”

  老夫人诧异地望着青豆,随后点头说:“的确是这样啊,你说得非常有道理。这么一想,隔着四个世纪听着同样的音乐,也许没有什么不可思议之处。”

  “也许该说是几乎相同的月亮。”

  青豆说道,注视着老夫人,但她的话没有引发这位老夫人的兴趣。

  “这盘激光唱片录的是古乐器的演奏。”老夫人说,“使用和当时一样的乐器,按照和当时一样的乐谱演奏。于是,音乐效果和当时大体上一样。就像月亮那样。”

  青豆说:“但是,即使东西一样,人们的理解方式也许和今天大不相同。当时的夜晚大概要更黑更暗,月亮恐怕也相应地更大更亮。人们不用说,也不可能拥有唱片、磁带和激光唱盘,不会像现在习惯的,不管什么时候,想听什么音乐就听什么音乐。那在当时,实在是非常特别的。”

  “完全正确。”老夫人同意,“我们居住在这样一个便利的社会里,感受性恐怕相应变得迟钝了。浮现在天空中的月亮尽管一样,但我们看到的也许是另外一个东西。也许在四个世纪前,我们曾经拥有更为贴近自然、更为丰富的灵魂。”

  “但那是一个残酷的世界。半数以上的儿童由于慢性病和营养不良在长大成人前就夭折了。因为小儿麻痹、结核、天花和麻疹,人轻易就会丧生。在普通百姓中,能活过四十岁的人应该不多。女人要生好多孩子,一到三十多岁就牙齿脱落,变得像老太婆一样。人们为了生存下去,不得不屡屡依仗暴力。孩子们从小就被迫从事会导致骨骼变形的重体力劳动,少女卖淫是常见的事,甚至还有少男卖淫。众多的人在与感性和灵魂的丰足无缘的世界里过着最低限度的生活。都市的大街上满是残疾人、乞丐和罪犯。能够感慨无限地赏月、感叹莎士比亚的戏剧、欣赏道兰的美丽音乐的,恐怕只是极少的人吧。”

  老夫人微笑着说:“你真是个十分有趣的人啊。”

  青豆说:“我是个极其普通的人,只不过喜爱读书罢了。主要是关于历史的书。”

  “我也喜欢读历史书。历史书告诉我们,我们从前和今天基本相同这个事实。在服装和生活方式上虽然有所不同,我们的思想和行为却没有太大变化。人这个东西说到底,不过是遗传因子的载体,是它们的通道。它们就像把累倒的马一匹又一匹地丢弃一样,把我们一代又一代地换着骑下来。而且遗传因子从不思考什么是善什么是恶。无论我们幸福还是不幸,它们都毫不关心。因为我们不过是一种手段。它们只思考一点:对它们来说,什么东西效率最高。”

  “尽管如此,我们却不得不思考什么是善什么是恶,是吗?”

  老夫人点点头。“是啊。人却不得不思考这些。但支配着我们生活方式之根本的,却是遗传因子。当然,这样必定产生矛盾。”说完,她微微一笑。

  关于历史的讨论到此结束。两人喝完剩下的香草茶,转而进行武术练习。(BOOK 1 第267~271页)

BOOK 2 第17章

「俺が北海道の山奥の孤児院で育てられたっていう話は、このあいだしたよな」

「両親と離ればなれになり、樺太サハリンから引き上げてきて、そこに入れられた」

「その施設に俺より二つ年下の子供がいたんだ。黒人との混血だった。三沢あたりの基地にいた兵隊とのあいだにできた子供なんだと思う。母親はわからんが、売春婦かバーの女給か、だいたいそんなところだ。生まれてまもなく母親に捨てられて、そこに連れてこられた。図体ずうたいは俺よりでかいんだが、頭の働きがかなりとろいやつだった。もちろんまわりの連中によくいじめられてた。肌の色も違ってたしな。そういうのってわかるだろう」

「まあね」

「俺も日本人じゃないから、なんとなく成り行きで、そいつを保護する役を引き受けるようになった。俺たちはまあ、似たような境遇だったわけさ。樺太引き上げ朝鮮人と、クロとパンパンとの混血。カーストのいちばん底辺だ。でもおかげで鍛えられた。タフになった。でもそいつはタフにはなりようがなかった。ほうっておけば間違いなく死んでいただろう。頭が細かく素早く働くか、喧嘩けんかがめっぽう強いか、どっちかじゃないと生き延びてはいけない環境だったからな」

 青豆は黙って話を聞いていた。

「そいつは何をやらせてもとにかく駄目なんだ。何ひとつまともなことがやれない。服のボタンも満足にとめられないし、自分のケツだってうまくけない。ところが彫刻だけはやたらうまかった。何本かの彫刻刀と材木があれば、あっという間に見事な木彫りを作ってしまう。下描きも何もなく、頭の中にイメージがぱっと浮かんで、そのままものを正確に立体的に作ってしまうんだ。とても細かく、リアルに。一種の天才だよ。たいしたものだった」

「サヴァン」と青豆は言った。

「ああ、そうだ。俺もあとでそれを知った。いわゆるサヴァン症候群だ。そういう普通ではない能力を与えられた人間がいる。しかしそんなものがあるなんて当時は誰も知らなかった。知恵遅れのようなもんだと思われていた。頭の働きは鈍いけど、手先が器用で、木彫りがうまい子供だと。もっともなぜかネズミの彫刻しか作らないんだ。ネズミなら見事に作れる。どこから見てもまるで生きているみたいにさ。しかしネズミ以外のものは何ひとつ作らない。みんなは何かほかの動物の木彫りを作らせようとした。馬とか、くまとかな。そのためにわざわざ動物園にまで連れて行ったんだ。しかしそいつはほかの生き物にはこれっぽっちも興味を示さなかった。だからみんなはあきらめて、そいつにネズミばかり作らせておいた。好きにさせておいたわけだ。いろんなかたちの、いろんな大きさの、いろんなかっこうのネズミをそいつは作ったよ。不思議といえば不思議な話だ。というのは、孤児院にはネズミなんていなかったからさ。寒すぎたし、えさなんてどこにもない。その孤児院はネズミにさえ貧しすぎたわけさ。どうしてそいつがネズミにそんなにこだわるのか、誰にも理解できなかった。……いずれにせよ、そいつの作るネズミのことがちょっと話題になって、地方新聞にも載って、そのネズミを買いたいという人も何人か出てきた。それで孤児院の院長は、カトリックの神父なんだが、その木彫りのネズミをどこかの民芸店に置かせてもらい観光客に売った。そこそこの金になったはずだが、もちろんそんな金が一円だってこっちに回ってくるわけじゃない。どうなったかは知らないが、たぶん孤児院の上の方が適当に何かに使ったんだろう。そいつはただ彫刻刀と材木を与えられて、工作室で延々とネズミを作っていただけだ。まあ、畑でのきつい労働が免除されて、そのあいだ一人でネズミを作っていれば良かったから、それだけでも幸運というべきなんだが」

「それでその人はどうなったの?」

「さあね、どうなったかは知らん。俺は十四のときに孤児院を逃げ出して、それからずっと一人で生きてきた。すぐに連絡船に乗って本土に渡り、以来、北海道に足を踏み入れたこともない。俺が最後に見たときも、そいつは作業台にかがみ込んでせっせとネズミを彫っていた。そういうときには何を言っても耳に入らないんだ。だからさよならも言わなかった。もし無事に生き延びていれば、今でもたぶんどこかでネズミを彫り続けていることだろう。それ以外にはほとんど何ひとつできないやつだからな」

 青豆は黙って話の続きを待った。

「今でもそいつのことをよく考える。孤児院の暮らしはひどいもんだった。食事は乏しくて常にひもじかったし、冬はなにしろ寒かった。労働は過酷で上級生からのいじめはそりゃすさまじいもんだった。でもそいつはそこでの暮らしをとくにつらいとも思っていなかったみたいだった。彫刻刀を持って、一人でネズミを彫っていれば幸福そうだった。彫刻刀を取り上げると、半狂乱みたいになることもあったが、それをべつにすれば実におとなしいやつだった。誰にも迷惑をかけなかった。ただ黙々とネズミを作っていただけだ。木の塊を手にとってじつと長いあいだ見ていると、そこにどんなネズミが、どんなかっこうで潜んでいるのか、そいつには見えてくるんだよ。それが見えてくるまでにはけっこう時間がかかった。しかしいったんそれが見えたら、あとは彫刻刀をふるってそのネズミを木の塊の中から取り出すだけだ。そいつはよく言っていたよ。『ネズミを取り出す』ってな。そして取り出されたそのネズミは、本当に今にも動き出しそうに見えるんだ。そいつはつまり、木の塊の中に閉じこめられていた架空のネズミを解放しつづけていたんだ」

「そしてあなたはその少年をまもった」

「ああ、望んでそうなったわけじゃないが、結果的にそういう立場に立たされることになった。それが俺のポジションだった。いったんポジションが与えられたら、何があろうとそれを守るしかない。それが場のルールだった。だから俺はそのルールに従った。たとえばそいつの彫刻刀をいたずらで取り上げたりするやつがいたら、出て行ってぶちのめした。俺より年上でも、図体がでかくても、相手が一人じゃなくても、そんなこと関係なくとにかくぶちのめした。もちろん逆にぶちのめされることもあった。何度もあった。しかし勝ち負けは問題じゃない。ぶちのめしても、ぶちのめされても、俺は必ず彫刻刀を取り戻してやった。そのことが大事なんだ。わかるか?」

「わかると思う」と青豆は言った。「でも結局、その子を見捨てることになった」

「俺は一人で生きて行かなくちゃならなかったし、いつまでもそいつのそばにいて面倒を見てるわけにはいかなかった。そんな余裕は俺にはなかった。当然のことだ」

 青豆はもう一度右手を開き、それを見つめた。

「あなたが小さな木彫りのネズミを手にしているのを、何度か目にしたことがあったけど、それはその子の作ったものだったのね?」

「ああ、そうだ。小さなものを俺にひとつくれた。施設を逃げ出すときにそれを持ってきた。今でも持っている」

「ねえタマルさん、どうして今そういう話を私にしてくれたわけ? あなたはとくに意味もなく自分について語るタイプじゃないと思うんだけど」

「俺が言いたいことのひとつは、今でもよくそいつのことを思い出すってことだよ」とタマルは言った。「もう一度会いたいとかそういうんじゃない。べつに会いたくなんかないさ。今さら会っても話すことなんてないしな。ただね、そいつが脇目わきめもふらずネズミを木の塊の中から『取り出している』光景は、俺の頭の中にまだとても鮮やかに残っていて、それは俺にとっての大事な風景のひとつになっている。それは俺に何かを教えてくれる。あるいは何かを教えようとしてくれる。人が生きていくためにはそういうものが必要なんだ。言葉ではうまく説明はつかないが意味を持つ風景。俺たちはその何かにうまく説明をつけるために生きているという節がある。俺はそう考える」

「それが私たちの生きるための根拠みたいになっているということ?」

「あるいは」

「私にもそういう風景はある」

「そいつを大事にした方がいい」

「大事にする」と青豆は言った。(BOOK 2 後編 pp. 131-137)

①賴明珠譯

  停頓一會兒,然後Tamaru說:

  「上次跟妳說過,我是在北海道深山裡的孤兒院長大的吧。」

  「跟雙親分散了,從樺太撤退到北海道來,然後進了那裡。」

  「那個孤兒院裡有一個比我小兩歲的孩子。是和黑人的混血兒。和青森縣三澤一帶的空軍基地的軍人所生的孩子。母親不知道是誰,大概是妓女或酒吧女之類的。出生不久就被母親拋棄,被送到那裡去。體格比我高大,不過頭腦相當遲鈍。當然經常被旁邊的人欺負。何況膚色也不同啊。這種情況妳知道嗎?」

  「嗯。」

  「我因為也不是日本人,所以很自然的,就接下了保護他的任務。我們說起來,處境很類似。從樺太撤退的朝鮮人,和黑人跟妓女的混血兒。是出身階級最低的。不過也因此經過鍛鍊,變得強悍起來。然而那傢伙卻沒辦法變強。如果沒去理他的話一定已經死掉了。在那裡要不是頭腦靈活轉得快,就是要打架很強悍,這兩者之一,否則在那種環境是沒辦法生存下去的。」

  青豆默默聽著他說。

  「那傢伙讓他做什麼都不行。沒有一件事情做得好的。衣服鉤子都扣不好,自己的屁股都擦不乾淨。不過只有雕刻卻非常厲害。只要有幾把雕刻刀和木頭,轉眼之間就刻出不得了的木雕。也不需要畫任何草圖,腦子裡啪一下就浮現影象,就那樣正確地雕出立體作品來。雕得非常精細,栩栩如生。算是某方面的天才响。真了不得。」

  「學者症候群。」

  「啊,對。我也是後來才知道的。就是所謂的學者症候群。有人會得到這種不尋常的能力。不過當時誰也不知道有這種事情。還被認為是智能障礙。他頭腦反應雖然遲鈍,手卻很巧,是個擅長木雕的孩子。尤其不知道為什麼只雕刻老鼠。只要是老鼠就離得很出色。從任何角度看都簡直像活的一樣喔。不過除了老鼠以外他什麼都不離。大家想讓他雕其他什麼動物。像馬,或熊之類的。為了這個還特地帶他到動物園去。可是這傢伙對其他動物卻一點也不感興趣。所以大家才放棄,讓他光雕老鼠。隨便他高興怎麼樣。這傢伙雕了大大小小、各式各樣、各種姿態的老鼠喔。要說不可思議也真不可思議。因為,孤兒院裡根本就沒有老鼠啊。太冷了,也沒有任何東西可吃。那家孤兒院連對老鼠來說都太窮了。為什麼這樣執著呢?誰也無法理解。......不管怎麼說,他所雕的老鼠,開始成為小小的話題,上了地方報紙,也出現幾個想買那老鼠的人。於是孤兒院的院長,一個天主教的神父,把那木雕老鼠放在某個民俗藝品店賣給觀光客。應該賣得一點小錢,當然那錢一毛也不會回到他手上。怎麼用的不清楚,可能是孤兒院上面的人隨便用在什麼上了吧。那傢伙只要給他雕刻刀和木頭,就可以在工作室一直雕老鼠。不過可以免除辛苦的農事勞動,在那之間只要獨自雕老鼠就好了,光這一點也該算是幸運了吧。」

  「後來那個人怎麼樣了?」

  「誰曉得,不知道怎麼樣了。我十四歲時逃出孤兒院,然後就一直一個人活到現在。那時我立刻搭接駁船到本州來,從此以後,沒有踏上過北海道。我最後看到他時,那傢伙也正彎身在工作台上勤快地雕著老鼠。那樣的時候你說什麼他都聽不進耳裡去。所以我連再見都沒說。如果平安活著的話,現在可能還在什麼地方繼續雕著老鼠吧。因為除此之外他是什麼都不會的傢伙啊。」

  青豆默默等他繼續說。

  「我現在也常常想起他。孤兒院的生活很慘。糧食不足,經常餓肚子,冬天冷得要命。勞動過度苛刻,高年級欺負低年級得可凶了。不過他對那裡的生活好像並不覺得難過似的。只要拿起雕刻刀,一個人離著老鼠就好像很幸福的樣子。如果把他的雕刻刀拿走,他也曾經陷入半瘋狂狀態,除此之外,他其實是個很乖的傢伙。不會給任何人添麻煩。只會默默雕老鼠。木頭拿在手上盯著瞧半天,看是什麼樣的老鼠,以什麼樣的姿態躲在裡面,那傢伙看得出來响。要看出這個之前相當花時間。不過一旦看出來之後,剩下的就是揮動雕刻刀把老鼠從木頭裡取出來而已。那傢伙常常這樣說喔。『把老鼠取出來。』而且那被取出來的老鼠,看起來真的像馬上就要動起來似的。換句話說,那傢伙是把被關在木頭裡的想像的老鼠一直不斷地解放出來。」

  「而你則保護那個少年。」

  「是啊,並不是希望那樣做,而是結果變成那樣的立場。那是我的任務。一旦被賦予某種任務之後,不管發生什麼事情,都只能盡忠職守。這是場所的規則。因此我就遵守那規則。例如有哪個傢伙惡作劇把他的雕刻刀拿走的話,我就會出來把那個人打倒。就算比我高年級,比我個子高大,對方不只一個人,都沒關係,總之把他們打倒。當然有時相反也會被打倒。好幾次這樣。不過勝負不是問題。不管打倒,或被打倒,我都一定會幫他把雕刻刀搶回來。這點最重要。妳懂嗎?」

  「我想我懂。」青豆說。「不過結果,你還是拋棄了那孩子。」

  「我不得不一個人活下去,也不能永遠在他身邊照顧他。我沒有這個餘裕。當然。」

  青豆再一次張開右手,凝視著那手。

  「我看過幾次,你手上拿著小木雕老鼠,就是那個孩子雕的嗎?」

  「噢,是啊。他給了我一隻小的。我從孤兒院逃出來時把它帶出來。現在還帶著。」

  「嘿,Tamanu先生,為什麼今天告訴我這件事呢?我覺得你不是那種沒什麼用意就隨便談自己事的人。」

  「我想說的事情之一是,我現在還常常想起他。」Taman說。「並不是想再見他一次之類的。並沒有想見他。現在見了面也沒話說吧。只是啊,他目不斜視地從木頭裡『取出』老鼠的光景,在我腦子裡還非常鮮明地留著,那對我來說已經成為重要的情景之一。那教給我某種事情。或正要告訴我什麼。人要活下去必須擁有這種東西。語言無法適當說明卻擁有意義的情景。有些時候我們是為了要好好說明那什麼而活著的。我這樣想。」

  「你是說那會成為我們活下去的根據似的東西嗎?」

  「或許。」

  「我也有這樣的情景。」

  「那妳一定要好好珍惜。」

  「我會珍惜。」青豆說。(BOOK 2 第276~279頁)

②施小炜译

  稍微停顿了片刻,Tamaru又说:

  “上次告诉过你,我是在北海道深山里的孤儿院长大的,对不对?”

  “跟父母离散,从桦太撤退回国,被送进了那里。”

  “那座孤儿院里有一个比我小两岁的孩子,是和黑人的混血儿。

  我猜是和三泽一带基地里的大兵生的。不知道母亲是谁。不是妓女就是吧女,总之差不多吧。一生下来就被母亲抛弃,送到那里去了。块头比我大,脑子却不太机灵。当然经常受到周围那帮家伙的欺负。肤色也不一样嘛。这种事你能理解吗?”

  “嗯。”

  “我也不是日本人,一来二去就变成了他的保护人般的角色。说来我们境遇差不多。一个是从桦太撤回来的朝鲜人,一个是黑人和妓女生的混血儿。社会等级的最底层。不过我反倒因此变得顽强了。但那小子却顽强不起来。我要是不管他的话,他必死无疑。那种环境下,你要么是脑筋好用反应快,要么是身体粗壮能打架,不然就活不下去。”

  青豆默默昕着他说下去。

  “你不管让那小子干什么,他都干不好。没有一件事能做得像样。

  连衣服纽扣也不会扣,自己的屁股都擦不干净。但是,只有雕刻雕得好极了。只要有几把雕刻刀和木头,一眨眼他就能雕出漂亮的木雕。

  还不需要草稿。脑子里浮出一个形象,就这样准确而立体地雕出来。

  非常纤细、逼真。那是一种天才。了不起。”

  “学者症候群。”青豆说。

  “是啊,没错。我也是后来才知道这个的。所谓的学者症候群。有这类天赋不寻常的人。可是,当时谁都不知道还有这种说法。人们认为他是弱智,是个尽管脑子反应迟钝,手却很巧的会雕刻的孩子。但不知为何他只雕老鼠。他可以把老鼠雕得惟妙惟肖,怎么看都跟活的一样。可是除了老鼠,他什么都不雕。大家都让他雕别的动物,马和熊之类的,为此还特意带他到动物园里去看。可是他对别的动物没表现出丝毫兴趣。于是大家心灰意冷,由着他雕老鼠去了。就是说随他去了。那小子雕了各种形状、大小和姿态的老鼠。要说奇怪,可真有些奇怪。因为孤儿院里根本没有什么老鼠。冷,而且在哪里都找不到食物。那座孤儿院,就连老鼠都觉得太穷了。为什么那小子对老鼠如此执著,没人能理解……总而言之,他雕的老鼠成为小小的话题,还上了地方报纸,甚至有几个人表示愿意出钱买。于是孤儿院的院长,一个天主教的神甫,把那些木雕老鼠放到了民间工艺品店里,卖给游客,赚了一小笔钱。当然那些钱一个子儿也不会用到我们身上。不知道怎么用的,大概是孤儿院的上层随便花在什么上面了吧。就给了那小子几把雕刻刀和木头,让他在工艺室里没完没了地雕刻老鼠。不过,免除了累人的田间劳动,只要一个人雕刻老鼠就行了,单看这一点,也该说是万幸啦。”

  “那个人后来怎么样了?”

  “这个嘛,我也不知道后来怎样了。我十四岁时逃离了孤儿院,此后一直是孤身一人活了下来。我马上坐上渡船来到了本土,之后再也没有踏上北海道半步。我最后一次看到那小子时,他还弯着腰坐在工作台前,孜孜不倦地雕老鼠呢。这种时候,你说什么话他都听不见。所以我连一声再见也没说。如果他还没死,只怕还在某个地方继续雕刻老鼠吧。因为除此之外他什么都不会干。”

  青豆沉默不言,等着他说下去。

  “我到现在还常常想起他。孤儿院的生活很悲惨。食物不足,经常饿肚子。冬天冻得要死,劳动异常严酷。大孩子欺负小孩子,厉害得要命。可是,他似乎不觉得那里的生活艰苦。只要手拿雕刻刀,独自雕刻着老鼠,好像就心满意足了。如果拿走他的雕刻刀,他就会发疯。除了这一点,他非常听话,不给任何人添麻烦。只管默默地雕老鼠。手上拿着一块木头看半天,里面藏着一只怎样的老鼠、做出怎样的姿态,那小子都能看出来。要看出眉目来,得花不少时间,可一旦看出来了,接下去就只剩挥舞着雕刻刀把那只老鼠从木头里掏出来了。那小子经常这么说:‘把老鼠掏出来。’而被掏出来的老鼠,真的就像会动一样。就是说,那小子一直在不断地解放被囚禁在木头里的虚构的老鼠。”

  “而你保护了这位少年。”

  “是啊。并不是我主动要那样做,而是被放在了那样的角色上。那就是我的位置。一旦接受了某个位置,不管发生了什么,都得守住它。这是球场上的规则,所以我遵守了规则。比如说,假如有人把那小子的雕刻刀抢走,我就上前把他打倒。对方是个大孩子也好,比我有力气也好,不只一个人也好,这种事我都不管,反正就是把他打倒。当然有时会反被人家打倒,有过好多次。可是,这不是输赢的问题。不管是把人家打倒,还是被人家打倒,我肯定把雕刻刀夺回来。这件事更重要。你明白吗?”

  “我想我明白。”青豆说,“不过说到底,你还是抛弃了那孩子。”

  “因为我必须一个人活下去,不能永远守在身边看着他。我没有那个余裕。这是理所当然的。”

  青豆再次摊开右手,凝视着它。

  “我好几次看见你手里拿着个木雕小老鼠。是那孩子雕的吧?”

  “是啊。没错。他给了我一个小的。我逃出孤儿院时,把它带出来了。现在还在我身边。”

  “我说Tamaru先生,你干吗现在和我说这些?我觉得,你可是那种绝不会毫无意义地谈论自己的类型。”

  “我想说的事情之一,就是我至今还常常想起他。”Tamaru答道,“倒不是说盼望再次见到他。我并不想和他再见。时至今日,见了面也无话可说。只是,呃,他全神贯注地把老鼠从木头里‘掏出来’的情景,还异常鲜明地留在我的脑海里。这对我来说,成了非常重要的风景之一。它教给了我什么东西。或者说,它试图教给我什么东西。人要活下去,就需要这种东西。很难用语言解释清楚,但这是具有意义的风景。在某种程度上,我们可以说就是为了巧妙地说明那个东西而活着。我这么想。”

  “你是说,那就像我们活着的根据?”

  “也许。”

  “我也有这样的风景。”

  “应该好好珍视它。”

  “我会珍视的。”青豆答道。(BOOK 2 第257~260页)