ひよこのるるの自由研究

日本語で読める世界の文学作品と、外国語に翻訳されている日本語の文学作品を、対訳で引用しています。日本語訳が複数あるものは、読みやすさ重視で比較しておすすめを紹介しています。世界中の言語で書かれたもの・訳されたもののコレクションを目指しています。

世界文学全集のためのメモ 19 『雷雨』 曹禺

中国語編 5

曹禺(Cáo Yǔ)
曹禺(そう・ぐう、ツァオ・ユー)
1910-1996

《雷雨》
『雷雨』
1934

日本語訳
飯塚容訳『雷雨』2009年(晩成書房『中国現代戯曲集 第8集 曹禺特集 上』 pp. 5-188)*1

第三幕

   【外面敲門聲。

貴 快十一點,這會有誰?

四 爸爸,您讓我去看。

貴 別,讓我出去。 

   【魯貴開左門一半。

貴 誰?

外面的聲音 這兒姓魯麼?

貴 是啊,幹什麼?

外面的聲音 找人。

貴 你是誰?

外面的聲音 我姓周。

貴 (喜形於色)你看,來的不是?周家的人來了。

四 (驚駭著,忙說)不,爸爸,您說我們都出去了。

貴 咦,(乖巧地看她一眼)這叫什麼話? 

   【魯貴下。

四 (把屋子略微整理一下,不用的東西放在左邊帳後的小屋裏,立在右邊角上,等候著客進來。)

   【這時,聽見周冲同魯貴說話的聲音,一時魯貴同周冲上。

冲 (見著四鳳高興地)四鳳!

四 (奇怪地望著)二少爺!

貴 (諂笑)您別見笑我,我們這兒窮地方。

冲 (笑)這地方真不好找。外邊有一片水,很好的。

貴 二少爺。您先坐下。四鳳,(指圓桌)你把那張好椅子拿過來。

冲 (見四鳳不說話)四鳳,怎麼,你不舒服麼?

四 沒有。――(規規矩矩地)二少爺,你到這裏來幹什麼?要是太太知道了,你――

冲 這是太太叫我來的。

貴 (明白了一半)太太要您來的?

冲 嗯,我自己也想來看看你們。(問四鳳)你哥哥同母親呢?

貴 他們出去了。

四 你怎麼知道這個地方?

冲 (天真地)母親告訴我的。沒想到這地方還有一大片水,一下雨真滑,黑天要是不小心,真容易摔下去。

貴 二少爺,您沒摔著麼?

冲 (稀罕地)沒有。我坐家裏的車,很有趣的。(四面望望這屋子的擺設,很高興地笑著,看四鳳)哦,你原來在這兒!

四 我看你趕快囘家吧。

貴 什麼?

冲 (忽然)對了,我忘了我為什麼來的了。媽跟我說,你們離開我們家,她很不放心;她怕你們找不著事情,叫我送給你母親一百塊錢。(拿出錢)

四 什麼?

貴 (以為周家的人怕得罪他,得意地笑著,對四鳳)你看人家多厚道,倒底是人家有錢的人。

四 不,二少爺,你替我謝謝太太,我們還好過日子。拿囘去吧。

貴 (向四鳳)你看你,哪有你這麼說話的?太太叫二少爺親自送來,這點意思我們好意思不領下麼?(收下鈔票)你囘頭跟太太囘一聲,我們都挺好的。請太太放心,謝謝太太。

四 (固執地)爸爸,這不成。

貴 你小孩子知道什麼?

四 您要收下,媽跟哥哥一定不答應。

貴 (不理她,向冲)謝謝您老遠跑一趟。我先跟您買點鮮貨吃,您同四鳳在屋子裏坐一坐,我失陪了。

四 爸,您別走!不成。

貴 別儘說話,你先跟二少爺倒一碗茶。我就囘來。 

   【魯貴忙下

冲 (不由衷地)讓他走了也好。

四 (厭惡地)唉,真是下作!(不願意地)誰叫你送錢來了?

冲 你,你,你像是不願意見我似的。為什麼呢?我以後不再亂說話了。

四 (找話說)老爺吃過飯了麼?

冲 剛剛吃過。老爺在發脾氣,母親沒吃完飯就跑到樓上生氣。我勸了她半天,要不我還不會這樣晚來。

四 (故意不在心地)大少爺呢?

冲 我沒有見著他,我知道他很難過,他又在自己房裏喝酒,大概是喝醉了。

四 哦!(嘆一口氣)――你為什麼不叫底下人替你來?你何必自己跑到這窮人住的地方來?

冲 (誠懇地)你現在怨了我們吧!――(羞愧地)今天的事,我真覺得對不起你們,你千萬不要以為哥哥是個壞人。他現在很後悔,你不知道他,他還很喜歡你。

四 二少爺,我現在已經不是周家的用人了。

冲 然而我們永遠不可以算是頂好的朋友麼?

四 我預備跟我媽囘濟南去。

冲 不,你先不要走,早晚你同你父親還可以囘去的。我們搬了新房子,我的父親也許囘到鑛上去,那時你就囘來,那時候我該多麼高興!

四 你的心真好。

冲 四鳳,你不要為這一點小事來煩憂。世界大的很,你應當讀書,你就知道世界上有過許多人跟我們一樣地忍受著痛苦,慢慢地苦幹,以後又得到快樂。

四 唉,女人究竟是女人!(忽然)你聽,(蛙鳴)蛤蟆怎麼不睡覺,半夜三更的還叫呢?

冲 不,你不是個平常的女人,你有力量,你能吃苦,我們都還年青,我們將來一定在這世界為著人類謀幸福。我恨這不平等的社會,我恨只講強權的人,我討厭我的父親,我們都是被壓迫的人,我們是一樣。――

四 二少爺,您渴了吧,我跟您倒一杯茶。(站起倒茶)

冲 不,不要。

四 不,讓我再伺候伺候您。

冲 你不要這樣說話,現在的世界是不該存在的。我從來沒有把你當做我的底下人,你是我的鳳姐姐,你是我引路的人,我們的真世界不在這兒。

四 哦,你真會說話。

冲 有時我就忘了現在,(夢幻地)忘了家,忘了你,忘了母親,並且忘了我自己。我想,我像是在一個冬天的早晨,非常明亮的天空,……在無邊的海上……哦,有一條輕得想海燕似的小帆船,在海風吹得緊,海上的空氣聞得出有點腥,有點鹹的時候,白色的帆張得滿滿地,像一隻鷹的翅膀斜貼在海面上飛,飛,向著天邊飛。那時天邊上只淡淡地浮著兩三片白雲,我們坐在船頭,望著前面,前面就是我們的世界。

四 我們?

冲 對了,我同你,我們可以飛,飛到一個真真乾淨,快樂的地方,那裏沒有爭執,沒有虛偽,沒有不平等,沒有……(頭微仰,好像眼前就是那麼一個所在,忽然)你說好麼?

四 你想得真好。

冲 (親切地)你願意同我一塊兒去麼?就是帶著他也可以的。

四 誰?

冲 你昨天告訴我的,你說你的心已經許給了他,那個人他一定也像你,他一定是個可愛的人。 

   【魯大海進。

四 哥哥。

大 (冷冷地)這是怎麼囘事?

冲 魯先生!

四 周家二少爺來看我們來了!

大 哦――我沒想到你們現在在這兒?父親呢?

四 出去買東西去啦。

大 (向冲)奇怪得很!這麼晚!周少爺會到我們這個窮地方來――看我們。

冲 我正想見你呢。你,你願意――跟我拉拉手麼?(把右手伸出去)。

大 (乖戾地)我不懂得外國規矩。

冲 (把手縮囘來)那麼,讓我說,我覺得我心裏對你很抱歉的。

大 什麼事?

冲 (紅臉)今天下午,你在我們家裏――

大 (勃然)請你少提那椿事。

四 哥哥,你不要這樣,人家是好心好意來安慰我們。

大 少爺,我們用不著你的安慰,我們生成一付窮骨頭,用不著你半夜的時候到這裏來安慰我們。

冲 你大概是誤會了我的意思。

大 (清楚地)我沒有誤會。我家裏沒有第三個人,我妹妹在這兒,你在這兒,這是什麼意思?

冲 我沒想到你這麽想。

大 可是誰都這麼想。(囘頭向四鳳)出去。

四 哥哥!

大 你先出去,我有幾句話要同二少爺說。(見四鳳不走)出去!

   【四鳳慢慢地由左門出去。

大 二少爺,我們談過話,我知道你在你們家裏還算是明白點的;不過你記著,以後你要再到這兒來,來――安慰我們,(突然兇暴地)我就打斷你的腿。

冲 打斷我的腿?

大 (肯定地神態)嗯!

冲 (笑)我想一個人無論怎樣總不會拒絕別人的同情吧。

大 同情不是你同我的事,也要看看地位才成。

冲 大海,我覺得你有時候有些偏見太重,有錢的人並不是罪人,難道說就不能同你們接近麼?

大 你太年輕,多說你也不明白。痛痛快快地告訴你吧,你就不應當到這兒來,這兒不是你來的地方。

冲 為什麼?――你今早還說過,你願意做的我朋友,我想四鳳也願意做我的朋友,那麼我就不可以來幫點忙麼?

大 少爺,你不要以為這樣就是仁慈。我聽說,你想叫四鳳唸書,是麼?四鳳是我的妹妹,我知道她!她不過是一個沒有定性平平常常的女孩子,也是想穿絲襪子,想坐汽車的。

冲 那你看錯了她。

大 我沒有看錯。你們有錢人的世界,她多看一眼,她就得多一番煩惱。你們的汽車,你們的跳舞,你們閒在的日子,這兩年已經把她的眼睛看迷了,她忘了她是從哪裏來的,她現在囘到她自己的家裏什麼都不順眼啦。可是她是個窮人的孩子,她的將來是給一個工人當老婆,洗衣服,做飯,檢煤渣。哼,上學,唸書,嫁給一個濶人當太太,那是一個小姐的夢!這些在我們窮人連想都想不起的。

冲 你的話當然有點道理,可是――

大 所以如果鑛主的少爺真替四鳳著想,那我就請少爺從今以後不要同她往來。

冲 我認為你的偏見太多,你不能說我的父親是個鑛主,你就要――

大 現在我警告你(瞪起眼睛來)……

冲 警告?

大 如果什麼時候我再看見你跑到我家裏,再同我的妹妹在一起,我一定――(笑,忽然態度和善些下去)好,我盻望沒有這事情發生。少爺,時候不早了,我們要睡覺了。

冲 你,你那樣說話,――是我想不到的,我沒想到我的父親的話是對的。

大 (陰沉地)哼,(爆發)你的父親是個老混蛋。

冲 什麼?

大 你的父親是――

   【四鳳由左門跑進。

四 你,你別說了!(指大海)我看你,你簡直變成個怪物!

大 你,你簡直是個糊塗虫!

四 我不跟你說話了!(向冲)你走吧,你走吧,不要同他說啦。

冲 (無奈地,看看大海)好,我走。(向四鳳)我覺得很對不起你,來到這兒,更呌你不快活。

四 不要提了,二少爺,你走吧,這不是你呆的地方。

冲 好,我走!(向大海)再見,我原諒你,(溫和地)我還是願意做你的朋友。(伸出手來)你願意同我拉一拉手麽?

   【大海沒有理他,把身子轉過去。

四 哼! 

   【周冲也不再說什麼,即將走下。 

   【魯貴由左門上,捧著水果、酒瓶、同酒菜,臉更紅,步伐有點錯亂。

貴 (見衝要走)怎麼?

大 讓開點,他要走了。

貴 別,別,二少爺為什麼剛來就走?

四 (憤憤)你問哥哥去!

貴 (明白了一半,忽然笑向著冲)別理他,您坐一囘。

冲 不,我是要走了。

貴 那二少爺吃點什麼再走,我老遠地跟您買的鮮貨,吃點,喝兩盅再走。

冲 不,不早了,我要囘家了。

大 (向四鳳,指魯貴的食物)他從哪兒弄來的錢買這些東西?

貴 (轉過頭向大海)我自己的,你爸爸賺的錢。

四 不,爸爸,這是周家的錢,你又胡花了!(囘頭向大海)剛纔周太太送給媽一百塊錢,媽不在,爸爸不聽我的話收下了。

貴 (狠狠地看四鳳一眼,解釋地,向大海說)人家二少爺親自送來的。我不收還像話麼?

大 (走到冲面前)什麼,你剛才是給我們送錢來的。

四 (向大海)你現在才明白!

貴 (向大海――臉上露了卑下的顏色)你看,人家周家都是好人。

大 (掉過臉來向貴)把錢給我!

貴 (疑懼地)幹什麼?

大 你給不給?(聲色俱厲)不給,你可記得住放在箱子裏的是什麼東西麼?

貴 (恐懼地)我給,我給!(把鈔票掏出來交給大海)錢在這兒,一百塊。

大 (數一遍)什麼,少十塊。

貴 (強笑著)我,我,我花了。

冲 (不願再看他們)再見吧,我走了。

大 (拉住他)你別走,你以為我們能上你這樣的當麼?

冲 這句話怎麼講?

大 我有錢,我有錢,我口袋裏剛剛剩下十塊錢。(拿出零票同現洋,放在一塊)剛剛十塊。你拿走吧,我們不需要你們可憐我們。

貴 這不像話!

冲 你這人真有點不懂人情。

大 對了,我不懂人情,我不懂你們這種虛偽,這種假悲慈,我不懂……

四 哥哥!

大 走吧。我要你跟我滾,跟我滾蛋。

冲 (他的整個的幻想被打散了一半,失望地立了一囘,忽然拿起錢)好,我走;我走,我錯了。

大 我告訴你,以後你們周家無論哪一個再來,我就打死他,不管是誰!

冲 謝謝你。我想周家除了我不會再有人這麼糊塗的,再見吧!(向右門下)

貴 大海。

大 (大聲)叫他滾!

貴 好好好,我跟您點燈,外屋黑!

冲 謝謝你。 

   【二人由右門下。

四 二少爺!(跑下)

大 四鳳,四鳳,你別去!(見四鳳已下)這個糊塗孩子!(第151~163頁)*2

 

    外で戸を叩く音。

 

魯貴 もう十一時だというのに、誰だろう?

魯四鳳 お父さん、私が見てくるわ。

魯貴 いや、おれが行く。

 

    魯貴は扉を半分開ける。

 

魯貴 誰だい?

外の声 魯さんのお宅ですか?

魯貴 そうだが、何か用かね?

外の声 お会いしたいんです。

魯貴 あんたは?

外の声 周です。

魯貴 (喜びに顔を輝かせて)ほら見ろ、やってきた。周家の人だ。

魯四鳳 (驚き、慌てて)だめよ、お父さん。みんな出かけてるって言って。

魯貴 えっ、(如才なく、四鳳を見て)何を言ってるんだ?

 

    魯貴、退場。

 

魯四鳳 (部屋の中を少し片付け、不用なものを左手のカーテンの奥にある小部屋に置く。右手の隅に立ち、客が入ってくるのを待つ)

 

    このとき、周冲と魯貴の話し声が聞こえてくる。間もなく、魯貴と周冲が登場。

 

周冲 (四鳳を見つけて、うれしそうに)四鳳!

魯四鳳 (不思議そうに見つめ)冲様!

魯貴 (へつらうように笑って)お笑いにならないでください。こんな貧乏臭いところでして。

周冲 (笑う)ここはわかりにくかった。でも、外に池があって、いいところじゃないか。

魯貴 坊ちゃま。おすわりください。四鳳、(テーブルのほうを指して)いちばんいい椅子をお持ちするんだ。

周冲 (四鳳が口をきかないのを見て)四鳳、どうしたの? 気分が悪いの?

魯四鳳 いいえ。――(まじめくさって)冲様、何のご用事ですか? 奥様に知られたら――

周冲 その奥様の使いで来たんだ。

魯貴 (半ば悟って)奥様のお使いで?

周冲 うん。ぼく自身も、会いにきたかったんだけど。(四鳳に)きみの兄さんとお母さんは?

魯貴 二人とも出かけています。

魯四鳳 どうして、ここがわかったのですか?

周冲 (無邪気に)お母さんに教えてもらった。池があるとは思わなかったよ。雨が降ると、道が滑るね。夜は気をつけないと、すぐに転んでしまう。

魯貴坊ちゃまは無事でしたか?

周冲 (珍しがって)うん。うちの車で来たんだけど、おもしろかった。(部屋の様子を見回して、うれしそうに笑う。四鳳を見て)へえ、きみはここに住んでいたんだ!

魯四鳳 早くお帰りになったほうがいいわ。

魯貴 どうしてだ?

周冲 (突然)そうだ。ここに来た理由を忘れていたよ。お母さんはね、きみたちが屋敷を出たあとのことを心配しているんだ。すぐに仕事は見つからないだろうからって、きみのお母さんあてに百元、預かってきた。(金を取り出す)

魯四鳳 何ですって?

魯貴 (周家の人が自分を恐れているのだと思い、得意そうに笑う。四鳳に)親切にしてくれるじゃないか。さすがに金持ちは違うな。

魯四鳳 いいえ、冲様。奥様には感謝します。でも、私たちは何とかやっていけますから、お金は持ち帰ってください。

魯貴 (四鳳に)おいおい、そんな言い方があるか? 奥様がわざわざ、坊ちゃんに持たせてよこしたんだぞ。そのお気持ちを受けないでどうする?(金を受け取る)奥様にお伝えください。私どもはみな元気にしております。どうぞ、ご安心ください。奥様に感謝します。

魯四鳳 (こだわって)お父さん、だめよ。

魯貴 子供に何がわかる?

魯四鳳 受け取ったら、お母さんと兄さんが許さないわよ。

魯貴 (かまわず、冲に向かって)遠くまでお運びいただいて、ありがとうございました。果物でも買ってきますから、四鳳とお待ちください。失礼します。

魯四鳳 お父さん、行かないで! だめよ。

魯貴 ぐだぐだ言ってないで、坊ちゃんにお茶を差し上げろ。すぐに戻ってくるから。

 

    魯貴、急いで退場。

 

周冲 (本心ではなく)いなくなってくれてよかった。

魯四鳳 (嫌そうに)ああ、本当に下品ね!――(不本意そうに)どうして、お金なんか届けて来たんです?

周冲 き、きみはぼくに会いたくなかったようだね。どうして? もう二度とバカなことは言わないよ。

魯四鳳 (話題を探して)旦那様のお食事は終ったかしら?

周冲 ほんのいましがたね。旦那様は癇癪を起こして、お母さんも食事の途中で怒って二階に上がっちゃった。ぼくがしばらく慰めていたんだ。そうでなきゃ、こんなに遅くならなかった。

魯四鳳 (わざとさりげなく)若旦那様は?

周冲 ぼくは会ってないけど、つらいと思うよ。また自分の部屋でお酒を飲んで、酔っ払っているんだろう。

魯四鳳 ああ!(嘆息する)――どうして、下男をよこさなかったんですか? わざわざ自分でこんな貧乏人の住むところまで来なくてもいいのに。

周冲 (誠実に)きみはいま、ぼくたちを恨んでいるんだろうな。――(恥じ入って)今日のことは、本当にすまないと思ってる。でもどうか、兄さんを悪く思わないでほしい。兄さんはいま、後悔しているんだ。知らないだろうけど、兄さんはきみのことが好きなんだよ。

魯四鳳 冲様、私はもう周家の召使いではありません。

周冲 でも、永遠に友だちでいることはできるだろう?

魯四鳳 私はお母さんと一緒に済南へ行くんです。

周冲 だめだ、ちょっと待って。そのうち、きみもきみのお父さんも屋敷に帰れるよ。ぼくたちは新しい家に引っ越すし、ぼくの父親も炭鉱に戻るかもしれない。そのときには帰っておいで。そうなれば、どんなにうれしいことだろう!

魯四鳳 あなたは優しい方ね。

周冲 四鳳、こんなことで思い悩む必要はない。世界は広いんだ。きみは勉強しなくちや。世界にはぼくたちと同じく、苦しみに耐えている人が大勢いることがわかるよ。努力を続ければ、いつか幸福になれるさ。

魯四鳳 ああ、でも女はやっぱり女よ。(突然)あら、(カエルの鳴き声)どうしてカエルが、夜中になっても鳴いてるのかしら?

周冲 いや、きみは普通の女の人と違う。きみには能力がある。きみは苦しみに耐えられる。ぼくらはまだ若いんだ。将来は、きっとこの世の人々の幸福のために尽くそう。ぼくはこの不平等な社会を憎んでいる。権力ばかり重んじる人間を憎んでいる。ぼくは自分の父親が嫌いだ。ぼくらは抑圧されている。ぼくらは同じなんだよ。

魯四鳳 冲様、喉が渇いたでしょう? お茶をいれます。(立ち上がり、お茶をいれようとする)

周冲 いや、いらない。

魯四鳳 いいえ、もう一度、お世話をさせてください。

周冲 そんな言い方はやめてくれ。この世界はあり得べきものじゃない。ぼくはこれまで、きみを使用人として見たことはないよ。きみはぼくの姉さんだ。ぼくを導いてくれる。ぼくたちの本当の世界はここにはないのさ。

魯四鳳 まあ、話がお上手ね。

周冲 ときどき、ぼくは現在を忘れてしまうんだ。(夢を見るように)家のことも、きみのことも、母親のことも、自分のことさえ忘れてしまう。ぼくは想像する。冬の日の朝、空はとても明るくて、……果てしない海原に……そうだ、海ツバメのように小さな帆船が浮かんでいる。強い潮風が吹いて、空気は少し生臭くて塩辛い。白い帆はいっぱいに風をはらみ、一羽のタカが翼を広げて海面すれすれを飛んでいるかのようだ。空の果てへと飛んで行く。白い雲が二つか三つ、空に浮かんでいる。ぼくたちは船のへさきに立ち、行く手を見つめる。行く手にあるのは、ぼくたちの世界だ。

魯四鳳 ぼくたち?

周冲 そう、ぼくときみ。ぼくたちは飛べる。本当に清らかで楽しい場所へ飛んで行ける。そこには争いも、偽りも、不平等もない……。(頭を少し上に向け、目の前にその場所が見えているかのよう。突然)どう思う?

魯四鳳 すてきな考えね。

周冲 (親しみを込めて)ぼくと一緒に行くかい? その人を連れて行ってもいいんだよ。

魯四鳳 誰?

周冲 昨日きみが言ってた、心に決めている人さ。その人もきみと同じで、きっと愛すべき人なんだろうな。

 

    魯大海が入ってくる。

 

魯四凰 兄さん。

魯大海 (冷ややかに)これはどういうことだ?

周冲 魯さん!

魯四鳳 周家の坊ちゃんが訪ねてくださったのよ。

魯大海 ほう――おまえたちがここにいるとはな。おやじは?

魯四鳳 買い物に出かけたわ。

魯大海 (冲に)おかしいぞ! こんなに夜遅く! 周家の坊ちゃんが、こんな貧乏人の家を――訪ねてくるなんて。

周冲 ぜひ、お会いしたかったんです。ぼくと――握手してもらえますか?(右手を差し出す)

魯大海 (ひねくれて)外国のしきたりなんか知らねえ。

周冲 (手を引っ込めて)それじゃ、聞いてください。ぼくは、大変すまないと思っているんです。

魯大海 何のことだ?

周冲 (顔を赤らめて)今日の午後、うちの屋敷で――

魯大海 (顔色を変え)その話はやめろ。

魯四鳳 兄さん、そんな言い方はないでしょう。せっかく好意で慰めに来てくれたんだから。

魯大海 坊ちゃん、おれたちに慰めは必要ない。生まれつきの貧乏人なんでね。夜中にここまで慰めに来てもらう必要はない。

周冲 たぶん、ぼくの気持ちを誤解してるんだ。

魯大海 (はっきりと)誤解じゃない。この家に二人っきり。一人は妹、一人はあんただった。これはどういうことだ?

周冲 そんなことを考えてるとは思わなかった。

魯大海 誰だって、そう考えるさ。(振り向いて、四鳳に)出て行け。

魯四鳳 兄さん!

魯大海 ひとまず出て行くんだ。おれはこの坊ちゃんに話がある。(四鳳が出て行かないのを見て)出て行け!

 

    四鳳、ゆっくりと出て行く。

 

魯大海 坊ちゃん、前にも話をしたことがあるからわかってる。あんたは、あの屋敷ではまともなほうだ。だが。覚えておけ。今後またここヘ――おれたちを慰めに来たら、(突然、凶暴に)その足をへし折ってやる。

周冲 足をへし折る?

魯大海 (毅然として)そうだ!

周冲 (笑う)人間はどうであれ、他人の同情を拒否できないと思うよ。

魯大海 同情はあんたとおれだけの問題じゃない。地位が関係してくるんだ。

周冲 大海、きみは偏見が強すぎるときがある。お金持ちが罪人とは限らないよ。きみたちとは付き合えないって言うのかい?

魯大海 あんたは若すぎる。説明してもわからないだろう。はっきり言っておく。あんたはここへ来るべきじゃない。ここはあんたの来る場所じゃないんだ。

周冲 どうして?――今朝、言ってたじゃないか。ぼくと友だちになりたいって。四鳳もぼくと友だちになりたいと思うよ。だったら、ときどき手伝いに来てもいいはずだ。

魯大海 坊ちゃんよ、それで情けをかけているつもりかい? あんたは四鳳を学校に行かせようとしているそうだな。本気か? 四鳳はおれの妹だ。おれはあいつのことを知っている。あいつは移り気で、ごくありふれた娘さ。絹の靴下をはきたいし、自動車にも乗りたいんだ。

周冲 それは見損ないだよ。

魯大海 見損なっちゃいない。あんたたち金持ちの世界をあいつが見れば、それだけ悩みが増えるのさ。おまえたちの自動車、舞踏会、のんきな暮らしが、この二年のうちにあいつの目を狂わせた。自分がどこから来たかも忘れている。自分の家に帰ってみれば、何もかもが気に入らない。でも、あいつは貧乏人の子供なんだ。将来は労働者の女房になる。洗濯し、飯を作り、石炭ガラを拾うのさ。ふん、学校へ行く? 勉強する? 金持ちの奥様におさまる? そいつはお嬢様の夢だ! おれたち貧乏人には想像もつかない。

周冲 確かに、その通りだけど――

魯大海 だから、炭鉱主の坊ちゃんが四鳳のためを思ってくれるなら、今後あいつとは縁を切ってほしい。

周冲 ひどい偏見だと思うよ。ぼくの父親が炭鉱主だからと言って――

魯大海 いまここで警告する(目をむいて)――

周冲 警告?

魯大海 いつかまた、あんたがこの家にいるのを見たら、おれの妹と一緒のところを見たら、おれはきっと――(笑う。急に態度を和らげて)もういい、そんなことが起こらないように祈るよ。坊ちゃん、もう遅い。おれたちも寝る時間だ。

周冲 そんなことを言われるとは――思ってもみなかった。意外だけど、お父さんの言う通りだった。

魯大海 (陰気に)ふん、(爆発して)おまえのおやじは大バカ野郎だ!

周冲 何だって?

魯大海 おまえの兄貴は――

 

    四鳳が駆け込んでくる。

魯四鳳 やめて、言わないで!(大海を指して)それじゃまるで、人でなしよ!

魯大海 おまえはまったく、わからずやだな!

魯四鳳 もう兄さんとは話さないわ!(冲に)帰ってください。この人と話してもむだですから。

周冲 (仕方なく、大海を見て)わかった。帰るよ。(四鳳に)きみには本当にすまない。ここへ来たことで、ますます嫌な思いをさせてしまった。

魯四鳳 言わないで。冲様、帰ってください。ここはあなたのいる場所じゃありません。

周冲 わかった。帰るよ!(大海に)さようなら。ぼくを許してくれ。(温和に)いまでもぼくは、きみと友だちになりたいと思っている。(手を伸ばして)握手してくれるかい?

 

    大海は相手にせず、そっぽを向く。

 

魯四鳳 ふん!

 

    周冲もそれ以上何も言わず、出て行こうとする。魯貴が登場。果物、酒瓶、酒の肴を抱えている。顔はさらに赤く、足もともふらついている。

 

魯貴 (冲が帰ろうとしているのを見て)どうしました?

魯大海 そこをどけ! この人は帰るところだ。

魯貴 だめですよ。坊ちゃん、おいでになったばかりでなぜ?

魯四鳳 (憤慨して)理由は兄さんに聞いて!

魯貴 (少し察しがつく。突然、冲に笑いかけて)こいつにはかまわず、おすわりください。

周冲 いや、ぼくは帰る。

魯貴 では、何か召し上がってからお帰りください。坊ちゃんのために、わざわざ買ってきたんですから。どうぞ一杯やって。

周冲 いや、もう遅いから、帰らないと。

魯大海 (四鳳に、魯貴の買ってきた食べ物を指して)どこから買い物の金を手に入れたんだ?

魯貴 (振り向いて大海に)自分の金だ。父さんが稼いだのさ。

魯四鳳 違うでしょう、お父さん。これは周さんのお金よ! また勝手に使い込んで!(振り向いて大海に)さっき、周の奥様からお母さんにって、百元いただいたの。お母さんはいなかったから、お父さんが私の言うことを聞かずに受け取ってしまったのよ。

魯貴 (憎々しげに四鳳を見てから、大海に説明する)坊ちゃんが直接、届けてくださったんだ。受け取らなかったら失礼だろう?

魯大海 (冲の前に詰め寄って)何だって? あんたは金を届けにきたのか?

魯四鳳 (大海に)ようやくわかったのね!

魯貴 (大海に――顔に卑屈な表情を浮かべて)どうだ、周家の方々はいい人ばかりじゃないか。

魯大海 (顔を魯貴のほうに向けて)金をよこせ!

魯貴 (びくびくして)何だって?

魯大海 さあ、どうする?(声も顔もきびしく)よこさないのか? あの箱に何が入っているか、覚えているんだろうな?

魯貴 (恐怖に駆られ)渡す、渡す!(紙幣を取り出して、大海に渡す)金はここにある。百元だ。

魯大海 (数える)おや、十元足りないぞ。

魯貴 (無理に笑って)つ、つ、使っちまった。

周冲 (見ていられなくなって)さようなら。ぼくは帰るよ。

魯大海 (引きとめて)待て。おれたちが、その手に乗ると思うのか?

周冲 どういう意味だい?

魯大海 おれだって、金は持っている。ポケットに、ちょうど十元残っていた。(小銭を取り出し、ひとまとめにして置く)きっかり十元だ。持って行け。あんたたちの憐れみはいらない。

魯貴 まったく、話にならん!

周冲 きみには人情ってものがわからないんだ。

魯大海 そうさ。人情なんてわからない。おまえたちのこういう偽善、見せかけの慈悲も理解できない……。

魯四鳳 兄さん!

魯大海 持って行け。いますぐ、出て行くんだ。さあ、早く。

周冲 (自分の幻想が打ち砕かれ、しばらく失望して立ち尽くしたあと、さっと金をつかみ)わかった。出て行く、出て行くよ。ぼくが間違ってた。

魯大海 よく聞け。今後、おまえたち周家の人間がまた現れたら、ぶっ殺してやる! 誰であろうと、容赦しないぞ!

周冲 ありがとう。でも周家には、ぼくのほかに、こんなバカなまねをする人間はいないと思うよ。さようなら!(右の扉へ向かう)

魯貴 大海。

魯大海 (大声で)お帰りだとよ!

魯貴 はい、はい。明かりをつけて差し上げましょう。外は真っ暗ですから。

周冲 ありがとう。

 

    二人は右の扉から退場。

 

魯四鳳 冲様!(駆け出して行く)

魯大海 四鳳、四鳳、行くな!(四鳳が出て行ったのを見て)バカなやつだ!(pp. 111-117)

*1:他に影山三郎訳(1936/1953年)、内山鶉訳(1994年)がある(未見)。

*2:引用は曹禺《雷雨》(上海:文化生活出版社,1936)による。